はじめに

7月14日・15日にLINEがアメリカと日本の株式市場に上場することになりました。これで投資家のみなさんもLINEに投資ができるようになるわけです。

さて、先ごろ発表された上場の仮条件では、IPOが上限価格で行われた場合にLINEの時価総額(つまり会社の価格)は6720億円になるそうです。この条件の場合、日米の株式市場からは新規に1270億円の資金を調達することになるというのですが、この巨額な資金はどう使われて、LINEの株価にどのような影響を及ぼすのでしょうか?


LINEの今後の株価はビジネスモデルが左右する

LINEはサービスとしては消費者に大人気ですが、株価、つまり会社の価値がこれから増えるのかどうかは、LINEがどれだけ儲けることができるのかで決まります。利用者が増えて、スタンプを買って、それだけで儲かればいいのですが、他の会社と比べるとその点ではまだLINEはがっぽり儲かるわけではない状態です。

同じオンラインのSNS会社でもDeNAのようにゲーム内通貨でガチャを引かせれば引かせるだけで無限に?儲かるような仕組みは、LINEではできていません。ですから、このままの状態ではLINEの株価は長期的にはそれほど上がるかどうかはわからないというのがLINEの経営課題です。

そこで登場するのがこの1270億円です。

ゲーム開発なら250回は挑戦できる

LINEがこれから企業価値(つまり株価)を上げていくためには、新しい収益源が必要です。そのためにはLINE上で展開される「何か新しい収益源」が必要になります。わかりやすく例を挙げれば、それはLINE上のオンラインゲームというのが有力候補の一つです。

ではそのようなゲームを開発するのにいくら資金が必要でしょうか? 利用者を引き込むキャラクターや世界観、ゲームバランスが作り込まれた遊びごたえのあるゲームを開発・宣伝し、世に生み出していくためにかかる投資は一つのゲームで5億円ぐらいです。

ですからLINEが「DeNAやガンホー、mixiのようにヒットゲームを開発するぞ!」といって新しいゲームの開発を始めれば、単純計算で250回は新規ゲーム開発をチャレンジすることができます。これはそれくらいのことができる資金源です。

おそらく本命は大型買収

しかし、LINEはおそらくその方向で1270億円を使いきることはないでしょう。もちろん100億円ぐらいかけて十数本のゲームを開発していくような試みをするかもしれませんが、ヒットが出るかどうかは、特に経験が少ない分野であればあるほど水物です。

それよりもこの規模の資金は、いいゲームを持っている会社をM&Aするのに最適な規模の資金源です。ゲームだけではありません。さまざまなアプリでLINEとプラットフォームを共有することでLINEにとって新たな資金源になるサービスを持っている会社をまるごと購入することができる資金規模なのです。

具体名を出して恐縮ですが、たとえば今、お家騒動で揺れているクックパッドは株価が下がってきて時価総額ではちょうど1400億円近辺。この規模の会社を買収できるだけの資金規模が今回LINEが調達した資金の大きさなのです。

ということで、今後注目すべきは、いつどんな形でLINEの大型買収が発表されるかということではないでしょうか?


※追記:LINEは4日、15日の東証への株式上場を前に、発行価格の仮条件を引き上げたと発表されました。上場時の時価総額は、6月28日の発表から最大で200億円増え、約6900億円になる予定です。

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