はじめに

キヤノンが宇宙ロケット開発に参入するという。またHISとANAは共同して宇宙船ベンチャー企業に資本提携を発表した。宇宙というとまだまだ遠い存在に思えるのだが、ビジネスの世界では徐々にこれまで以上に身近な存在になりはじめているようだ。各社の宇宙事業参入の狙いをまとめてみよう。


ミニロケットという新しいイノベーション

キヤノンが宇宙ロケットの開発に参入するという話は、かなり意外なニュースに聞こえるかもしれない。実は段階をふんで説明するとそうではないことがわかる。実際にそのように説明してみよう。

巨大な宇宙ロケットだが、その重量の大半は燃料だ。地球の巨大な重力に逆らって衛星軌道まで物体を持ち上げるにはとてつもない量の燃料が必要なのだ。

いっぽうで小型衛星の開発技術が進んできて大学の研究室レベルでも研究用の小型衛星が開発できるようになってきた。これらの小型衛星は大型衛星を打ち上げるロケットに相乗りさせてもらって、衛星軌道まで持ち上げるというのがこれまでのやりかただった。

そうなると打ち上げのタイミングも、軌道の高さも大型ロケットの事情に合わせる必要がでてくる。

そこでミニロケットが脚光を浴びることになる。質量が小さいので打ち上げにかかるコストも小さい。だから小型衛星を今すぐ打ち上げたいというような研究者の需要にはぴったりの乗り物になる。実際どのようなものかを比べてみよう。

ロケットの姿勢制御技術で世界の先端を行く日本

JAXA(宇宙航空研究開発機構)が運用する主力ロケットH2Aの場合、高さは53m、質量は289tと巨大なロケットである。一方で今回キヤノンが協力するミニロケットは高さは10m弱と電信柱程度の長さ。質量は2600kgとH2Aロケットの100分の1以下の重さだ。

これまでこのサイズのロケットは二段式だったところを改良して、三段式にすることでミニロケットながら衛星軌道まで物を運べるようにしたところが新しい。

さてこのミニロケットの成功には日本の製造業の得意技術が関係してくる。それが姿勢制御技術だ。日本企業はジャイロの技術が進んでいて、ロケットの微妙な姿勢をコントロールする技術では抜きんでている。

実はロケットと戦争で使われるミサイルは基本的に同じ製品だ。アメリカ政府の強い要望もあって日本の法律はそれまで禁止していた武器輸出を最近になって解禁した。米国製のミサイルにつぎつぎと日本製のジャイロが搭載されるようになって日本の技術はさらに進んだのである。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介