はじめに

任天堂が満を持して投入したスーパーマリオのスマホゲーム。スマホで遊べる新作ゲーム『スーパーマリオラン』が12月15日、まずはAppleの端末で遊べる形で1,200円で販売された。

このスーパーマリオランだが、スマホでは当然とされている追加課金を入れない方法で販売されることが注目されている。なぜ任天堂はスマホゲームに売り切りで参入するのか、その背景を整理してみよう。


ガチャが発展させたスマホゲームの収益性

あれがいつのことだったのか記憶がはっきりしないが、私が最初に携帯でゲームをしたのはまだガラケー時代の釣りゲームだった。無料でゲームがダウンロードできてひまつぶしに遊ぶことができるというのは当時、画期的なサービスだった。

その当時に面白いと思ったのが釣竿の性能なのだが、無料ゲームの釣竿で釣りをしているといいところで魚に逃げられてしまう。そうならないようにするには50円(100円だったかもしれない)の「よりよい釣竿」を買わないといけないのだ。このネットゲーム独自のビジネスモデルを当時「面白い」と感じたものだ。

みなさんもご存じのとおり、その後、無料でゲームを提供してユーザーを熱狂させた後、アイテムを購入させて儲けるというスマホゲームの課金システムが確立した。いわゆるガチャの発明だ。

このガチャの発明でグリーやDeNA、ガンホーなどのオンラインゲーム企業が飛躍的に発展したわけだ。

ガチャは子どもに提示してはならないという考え方

このガチャブームに乗り遅れた企業の筆頭が任天堂だ。新興のゲーム会社が次々とスマホゲームでヒットを飛ばし、上場し、株価を伸ばす中で、任天堂はWiiやDSのようなゲーム機で行うビジネスに固執して、業績を伸ばせずにここまできた。

このことをもって「任天堂は時代に乗り遅れた」と言うのはたやすいが、ことはそれほど簡単ではない。そこには任天堂の経営方針というものがある。

ファミコンの育ての親であり、2015年に残念ながら急逝した故・岩田聡前社長は、このスマホゲームのビジネスモデルについて「これって子供さんに向かって提案していいの?」と、明確に否定してきたのだ。

ガチャであおってフルコンプのために数万円単位で顧客にお金をつぎこませるスマホゲームのビジネスモデルは、お金を儲けるには早道だろう。しかし、それが子どもを相手にビジネスを行う任天堂が採用すべきビジネスモデルとは言えない。そのことを明確に方針に打ち出したというのは、岩田前社長の経営者としての矜持を感じさせるエピソードだった。

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