はじめに

政府主導の「働き方改革」が加速しています。同一賃金・同一労働、長時間労働の是正、プレミアムフライデーなど、多様な働き方の実現に向けて、独自の取り組みを始める企業も多く登場しています。

そんななか、「有給を取得した社員に奨励金を支給する」という、とてもうれしい制度を取り入れる企業が現れました。


やっぱり有給は取りにくい?

年次有給休暇の取得は働く私たちの権利として認められています。休みを使って旅行を楽しむことも、自宅でゆっくりと過ごすことも自由ですが、その取得の実態としては体調不良や家庭の事情など、やむをえない事情で休まなければならない場合のみに利用されていることが多いのではないでしょうか。

「今は忙しい時期だから」「周りの目があって休みづらい」など、有給取得にためらいを感じる声もよく聞きます。

厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、平成27年の年次有給休暇取得日数は8.8 日、取得率は47.6%にとどまりました。

世界と比較しても日本の有給所得率は低く、世界主要26カ国で行った調査では、日本の有給消化率は最下位という結果になりました(2016年、エクスペディア・ジャパン調べ)。

政府が閣僚や有識者による「働き方改革実現会議」を発足し、本格的に改革を推進していくなかで、「ソフトバンクのフレックス勤務のコアタイム廃止」や「パナソニックの午後8時退社」など、各企業では働き方を見直す動きが活況です。

そんななか有給取得率80%以上を目指し、「有給取得に奨励金」という画期的な改革を進めているのが、オリックス株式会社です。

最大5万円の奨励金 対象は社員9,400人

2月8日、オリックスは、社員のリフレッシュとチームワーク向上や業務の属人化防止、生産性の向上をはかるため、2017年4月から5営業日以上の連続休暇取得者に対して、奨励金を支給する制度を導入すると発表しました。

奨励金の支給対象となるのは、リフレッシュを目的としたレジャー関連費用(交通費・宿泊費・飲食費など)で、同行した家族や友人の分を含んでもよいとのこと。5日以上続けて有給を取ると、課長層以上は「5万円」、課長層未満は「3万円」が支給されます。

対象は、国内グループ14社の契約社員を含む、およそ9,400人。ひとり3万円と考えた上でも、すべての人が制度を使って有給を取るとすると、その総支給額は2億8,200万円。働き方改革に対する同社の強い意気込みが伝わります。

同社グループ広報部の金岡さんは、「実は、2016年7~10月にトライアルを行いました。3営業日以上の連続休暇所得で2~3万円の奨励金の支給を行ったところ、社員の90%以上がこの制度を利用しました」と今回の思い切った制度導入の経緯について話します。

「『有給取得で奨励金が支給されるなんて!』と社員は皆、衝撃を受けていました」(金岡さん)

そして、同年10月からCEO直轄の「職場改革プロジェクト」を立ち上げ、より働きがいのある職場づくりに向けて取り組みを行ってきたそうです。

奨励金の対象はレジャー費用とのことですが、領収書などは必要になるのでしょうか。

「領収書などの申告は必要ありません。9,400名分の領収書をつき合わせることになると、人事の仕事を大量に増やすことになってしまい、本末転倒になってしまいますからね」と金岡さんは語ります。

また同社は、現在の所定労働時間が「7時間20分」のところを、20分短縮して「7時間」とすることで、時間当たり4.8%、月1万1,000円以上のベースアップを行います。

2月24日から始まるプレミアムフライデーについても聞いてみると、「現在、特別な施策は考えていませんが、当社は11~15時がコアタイムのフレックスタイム制ですので、月末金曜日に15時に退社することもできます」と、既存制度により対応済みのようです。

勤務初日から有給取得も可能に?

1月、政府の規制改革推進会議は「勤務開始日から年次有給休暇を与えるしくみに改めるべき」と訴えました。提案した内容は、勤務開始日に1日与え、その後、1ヵ月ごとに1日付与するというものです。

現行の制度では、勤務開始から半年間は有給が与えられません。継続勤務6ヶ月後から10日間の有給休暇付与とするよりも、転職者にとって働きやすい環境となるでしょう。

「ワーク・ライフ・バランス」や「ノー残業デー」という言葉が使われるようになって久しいですが、大手企業の思い切った取り組みが、真の「働き方改革」につながることに期待が膨らみます。

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