はじめに

クラウドファンディングという言葉を耳にしたことはありますか?

聞いたことがあっても、まだ実際に参加した経験がある人は多くないかもしれません。また、興味はあるけれど支援金が本当に目的通りに使われているのかどうか心配という声もありそうです。

そんな不安を払拭する日本初の「クラウドファンディング保険」が登場しました。


クラウドファンディングとは?

クリエイターや起業家など、個人が自らのアイデアをかたちにするためにプロジェクトを起案して、支援者を募り、広く資金調達する手段として今、「クラウドファンディング」が世界中で注目されています。

そのプロジェクト内容は「地域の小学生たちがおむすびを握ってギネス記録に挑戦!」「演歌で海外公演したい!」「フィギュアを製品化したい!」「世界の孤児を支援したい!」など、さまざま。

支援者は資金を通じて“タニマチ”となることで、自分の手でプロジェクトを育ていく喜びがあります。

支援のかたちも金額に応じてリターン(返礼品)を受け取ることができる購入型のプロジェクトや寄付型、金融型など多様。

過去には20億円超えのプロジェクトが実施された米国「Kickstarter」をはじめとし、日本国内でも社会貢献色が強い「READYFOR」、物づくりに特化した「Makuake」など多くのプレイヤーが参入し、盛り上がりをみせています。

クラウドファンディング詐欺に備える保険登場

しかし、一方で問題も起こっています。

クラウドファンディングを先導するアメリカなど海外では、近年プロジェクト実行者による悪質な「クラウドファンディング詐欺」が横行。

資金調達が成功すると、途端に連絡が取れなくなり、資金を持ち逃げしてしまう、または使い物にならない製品が届くといったケースが多発しているそうです。

そういった事態に備え、国内最大のクラウドファンディング・プラットフォームを運営する株式会社CAMPFIREは2月17日、日本で初めて「クラウドファンディング保険」の導入を発表しました。

支援者としてはとても安心なこの保険。しかし、保険料の財源など気になることもあります。今回の経緯について、同社PR担当の洪さんに聞いてみました。

——背景として、日本でもリターンの不履行が多くあるのでしょうか?

「現状は片手で数えられる程度です。当社がクラウドファンディング・プラットフォームの提供を開始してから間もなく6年になりますが、累計プロジェクト掲載数における不履行の割合は0.1%未満です」(洪さん、以下同)

——では、今回の保険の導入をどうして決めたのでしょう?

「プラットフォームという性質上、基本的には実行者様と支援者様との相対取引となります。もしリターンの不履行が発覚したとしても、当社が双方に介入させていただくことは困難です。クラウドファンディング保険をご提供することで、実行者様と支援者様の不安を少しでも払拭したいと考えています」

同社は東京海上日動火災保険株式会社と連携。プロジェクト実行者による横領や持ち逃げ、または倒産によりリターンが不履行となった場合など、不測の事態が発生したときに、支援者から同社へ「リターンが届かない」と連絡が入ることで実態を調査。

プロジェクト実行者の横領・会社の倒産などの事実が認められた場合は、所定の審査のもと保険が適用され「支援金額の80%」を上限とし、支援者に返金するとしています。

——この保険料はプロジェクト実行者、または支援者が負担するのでしょうか?

「今回の保険は、東京海上日動様と当社間の契約になります。費用負担については、当社でさせていただいております。そのため、プロジェクト実行者様と支援者様は実質的なご負担はなく、この保険をご利用いただけます」

保険導入の動き、他社にも

——このようなクラウドファンディング保険は、今後他社にも広がりをみせるのでしょうか?

「海外では、Indiegogo社様が先んじてクラウドファンディング保険の提供を行っているという事例がございます。国内においても、当社の事例を皮切りに他社様にも導入が広がる可能性はあると考えています。また今回の当社の取り組みに関して、業界内からも大きな反響をいただいております」

同社の高村取締役も「日本初となる『クラウドファンディング保険』を、クラウドファンディング業界の“ふつう”にしていきたい」とコメント。

2月17日の日経新聞によると、東京海上日動火災保険は、「他サイトへの保険販売も検討している」とのことです。

また、矢野経済研究所の調査では「2016年度のクラウドファンディングの国内市場規模は前年度比32%増の477億円となる見通し」と、市場が急拡大していることがわかります。

そのため、「サービスの利用者である実行者様・支援者様の不安を軽減することは業界としても急務」と洪さんは語ります。導入は3月から。保険開始が市場拡大の後押しになることに期待が高まります。

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