はじめに

日経新聞の報道によると、イタリアの高級ブランド「プラダ」がネット通販を強化するそうです。欧米や日本で展開している通販サイトを、中国、ロシア、韓国に広げるという計画です。

高級ブランドとして成功してきたプラダも、2014年1月期をピークに業績は頭打ち。この状況を打開する必要があると考えられた打ち手が、このネット通販の強化だといいます。

業績が悪化したのでネット通販を行うということだけであれば、さほど目新しいニュースではありませんが、プラダなど高級ブランドを取り巻く背景はこれまでと少し違っています。時代を知る4つのキーワードから、今回のニュースを解説してみたいと思います。


プラダの業績が頭打ち その理由は?

プラダの業績は、2014年をピークに低迷。直近の2017年1月期では、ついに大きな売上減少に転じました。

この問題が複雑なのは、プラダというブランドの価値自体が下がっているわけではないというところにあります。以前からプラダをお気に入りとして着用してくれている高級な顧客層は、相変わらずプラダを使ってくれています。

一方で、今、急速にしぼみ始めているのは新しい顧客層です。そのひとつが中国人旅行客の“爆買い”。これは東京の銀座や大阪の心斎橋だけに限った話ではありません。韓国でもフランスでも、プラダのお膝元のイタリアでも同様です。

富裕層の中国人による海外旅行が「一生に一度の」というイベントから、リピートへとシフトして、記念イベントに行われていた爆買いが沈静化してきたのです。

その結果、ひとつ数十万円というレベルの高級ブランドを旅先の勢いで買うという購買行動が減り、プラダの需要が冷え込んでしまったわけです。

プラダの成長は「新興国」にかかっている

では、プラダにとっての今後の成長市場はどこにあるのでしょうか? やはり中国、ロシアといった新興国が今後の成長のカギを握ることには間違いありません。ただ、これまではターゲットとする顧客層が間違っていたのです。

日本人でいえば、年収700万円から1,000万円程度の消費者層が背伸びして買うというのは本来のプラダのターゲット顧客ではありません。本当にプラダが捕まえたい重要な顧客は年収3,000万円から1億円ぐらいの富裕層。中国、ロシアなどの新興国で急激に増えてきた富裕層に使ってもらいたいというのが、プラダのような高級ブランドの経営です。

そう考えれば必要な戦略は、「富裕層の囲いこみ戦略」です。中国人経営者がプラダの顧客になるきっかけは、ニューヨークの出張のついでに立ち寄ったマンハッタン中心部のプラダの直営店での、ちょっとした買い物だったかもしれません。

そのプレゼントを奥様やお嬢様が気に入ってくれて、中国国内の直営店でも買い物するようになる。しかし富裕層の場合は、それで囲い込みが十分とはいえません。

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