はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

1,000万円の資産について10年程度の運用を考えています。今までは株式、国内外の投資信託で運用をしてきました。証券会社からは「ラップ口座」による運用を進められましたが、ラップ口座と個別投資のメリット、デメリットを教えてください。
(60代 既婚・子供2人 男性)


内藤: ラップ口座とは金融機関に資産運用を完全にお任せする運用方法です。

銀行や証券会社と投資一任契約を結ぶことで、運用にかかる投資判断や売買、管理などを、一括して行ってもらえます。運用方針などを確認・指示した上で、それに沿った運用を委託するわけです。富裕層の方から特に人気があるようです。

ラップ口座のサービス例

例えば、ある金融機関のラップ口座は次のようなサービスを提供しています。

まず投資家の考えに基づいた資産配分を提案するために、いくつかの質問に回答し、10パターンの資産配分から最適なアセットアロケーションを選択。そして資産配分の調整や見直しを行い、定期的に報告してもらえるようになっています。

ラップ口座はお任せの資産運用ですから手間がかかりません。また資産運用の専門家がアセットアロケーションや個別銘柄の選択を行うことになりますので、知識のない人が自分勝手に我流でやるのに比べれば、洗練された投資手法で資産運用ができることになります。

しかし、私はラップ口座はおすすめできないと思っています。

ラップ口座をおすすめできない理由

おすすめできない一番の理由はコストです。

国内の金融機関が提供している通常のラップ口座では、運用残高に対してかかる年間コストが高すぎるのです。

ある金融機関のラップ口座のコストを見てみましょう。Webでの説明を見ると、直接負担する費用と間接的に負担する費用に分かれています。

直接負担する費用はラップ口座の管理に対するコストです。この金融機関の場合、2つのコースがあります。

固定報酬型は、運用資産の時価評価額の平均残高に対して、年率1.728%となっています。もう1つの、成功報酬併用型を選択すると年率1.188%の固定報酬に、加え運用成果の額の16.2%の成功報酬がかかります。

コストはこれだけではありません。間接的に負担する費用として投資対象となる投資信託の信託報酬がかかります。商品によって変わってきますが、国内の投資信託でも年間1%以上、外国投資信託になると運用報酬が3%かかるものもあります。

2つを合わせると年間で残高に対し3%以上のコストになるかもしれません。仮に、年間3%としても、1,000万円の運用で30万円がかかることになります。

そもそも分散投資で期待できる運用リターンはせいぜい5%程度です。対してコストが3%かかるということになれば、成果の60%が金融機関に支払うコストとして消えることになります。

便利で洗練されたサービスだとしても、あまりにコストがかかり過ぎです。

高コストのラップ口座で資産運用するくらいであれば、私なら低コストのインデックスファンドを組み合わせて自分で資産運用する方法を選択します。こちらの年間のコストは0.4%~0.6%です。仮にラップ口座とのコストの差が年間2%としても、10年運用すれば20%の差になってきます。

金融商品を選ぶ際は、まずコストをしっかり把握することからです。なぜならコストを下げることがリターンを確実に上げる唯一の方法だからです。ご自身が活用しようと考えている商品のコストをまずはチェックしてみてください。

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