はじめに

株を売買する、投資信託を買う、不動産投資をはじめる――このような時、投資経験者は過去の実体験をもとに投資対象やタイミングを計ることが多いものです。

株式投資を行う人であれば、「円安になると、以前、円安の時に買われた株がまた買われるだろう」「米国が利上げをしたら、米国の金利が上昇し円安となって、円安メリット株が買われるだろう」こういったことを考えることもあるでしょう。

今回はこうした考え方に対して私が抱く“違和感”についてお話したいと思います。


相場が変わると考え方も変わる

自身の経験に加え、マーケットにはアノマリーといって「毎年この時期はコレが買われる」というように、はっきりと理論的な説明はできないが、経験則として利用されている知識もあります。

これまで投資に携わっていた人たちが残した書物などを読み解き、現在の状況に置き換えて実践していくということもあるでしょう。

例えば、江戸時代の米相場で考案されたと伝えられている「ローソク足チャート」は現在の株式市場で当たり前のように使われていますし、江戸時代に書かれた「米相場」についての書物を参考にした解説本も発売されています。

ただ、そうした過去の経験や書物に書かれていることは、必ずしも今の相場に置き換えて、そのまま使えるというものではありません。

相場そのものが変わると、こうした経験に基づいた投資の方法が通用しなくなることも多いのです。

過去にも一変した例がたくさん

市場で大きな変化が起こると、それまでの相場とがらりと様相が変わってしまうことが多いもの。

過去の具体的な例を挙げると、例えば1988年9月「日経平均先物」の取引が始まると、日経平均採用銘柄が大きく買われることになり、大きく相場が変化しました。

また、1999年10月から株式委託売買手数料の自由化が行われ、インターネット証券の参入が始まった時も、株式相場自体が大きく動きました。

株式相場を「日経平均」という指数で考えると、その構成銘柄が大きく変わると相場が一変してしまうということもあります。

加えて、市場に参加している投資家や投機家の顔ぶれが変わる、ということでも状況は変わるでしょう。

近年はインターネット証券が株価情報などをリアルタイムで配信するようになり、従来は証券会社や機関投資家といわれる、いわば「プロ」しか見ることができなかった情報を個人投資家も得ることができるようになりました。

手数料が非常に安くなり、個人投資家も「デイトレード」と言われる超短期の売買が行えるようになったことも大きく変わったことです。

このように相場そのものが変化し続けていると考えた場合、過去の経験はさほど通用しないものと思われますが、私たちは過去の経験を活かしながら変化に合わせていく必要があるということなのでしょう。

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