はじめに

6月16日、インターネット通販世界最大手アマゾン・ドット・コムが、米高級食品スーパーのホールフーズ買収を発表しました。買収額は約1兆5,000億円とアマゾンとしては過去最大です。

発表直後、アマゾンの株価は3%の上昇をみせました。これは今回の買収劇が株主からプラスの評価をされたということになります。なぜ株主は買収をプラスと捉えたのか? 想定される今後の戦略展開から考えてみましょう。


高級スーパー「ホールフーズ」買収の衝撃

アマゾンがホールフーズの買収を発表しました。ホールフーズは日本でいう六本木の明治屋や青山の紀ノ国屋のような、いわゆる高級スーパー分野の全米最大手です。

取り扱うのは有機野菜や高級食肉など。仕入れの品質に徹底的にこだわることで、主にアメリカの富裕層から支持を集めて成長してきました。

その戦略から、「アマゾンはいずれリアルな食品スーパーの買収に動くだろう」と予測されていましたが、その相手がホールフーズだったことは株式市場から“ポジティブサプライズ”として受け止められました。

考え得る買収候補のなかでベストの相手だと捉えられたのです。

なぜホールフーズは買収相手としてベストなのか?

最大の理由は、ホールフーズが富裕層など高所得の顧客から圧倒的に支持を得ていることです。実はこれはインターネット通販でアマゾンを繰り返し利用するリピーター層と一致しています。

そのため同じ顧客層に対しての相乗効果が効きやすい。これが「よい買収相手である」と評価された最大の理由です。

全米に生鮮食品の物流拠点を手に入れたアマゾン

そのうえでアマゾンの今後の戦略を考えると、「ホールフーズはなくてはならない買い物だった」という意見がアナリストから出ました。

アマゾンは本社があるシアトルやイギリス、日本の一部の地域限定で「アマゾンフレッシュ」という生鮮食料品のインターネット通販事業を始めています。

ホールフーズが扱うような高級食材を中心に、忙しいビジネスパーソンがその日に使いたい食品をインターネットで購入できるサービスです。

これまでの実験の結果、アマゾンはこのサービスを有望だと考えて、近い将来、全米展開に踏み切るのではないかとアナリストたちは観測していました。

しかし、その場合に必要となるのが全米各地への物流拠点です。生鮮食品のような商材を宅配することを考えると、これまでアマゾンが建設してきた広域倉庫ではなく、もっと消費者の自宅に近い場所に宅配用の倉庫を設置していく必要があります。

これをどうするのかが戦略上のボトルネックだったのですが、そこに登場したのがホールフーズです。

ホールフーズの買収によって、アマゾンは全米の店舗を倉庫兼物流拠点として利用することができるようになるのです。

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