はじめに

大塚家具が黒字予想から一転、今期も45億円の営業赤字となる見通しだ。17年12月期の売上見込みは530億円の計画から大幅に減り、400億円程度にとどまりそうだ。

高級家具の販売で順調に経営を続けてきた大塚家具だが、創業家の父と娘による「お家騒動」の終結以降、業績がさえない。つまり、業績低迷の理由はお家騒動ではなさそうだ。

なぜ大塚家具の業績がここまで悪くなったのか、仮説を立てて分析してみよう。


大塚家具のビジネスモデルは時代遅れなのか?

お家騒動が終息し、経営権が大塚久美子社長に確立してから大塚家具の業績がさえない。創業者の娘である久美子社長は、同社の従来のビジネスモデルを否定し、もっと気楽に利用してもらえるお店へと販売方法を変えようとした。

報道によると、この考えは、安価ですばらしいデザインの家具やインテリア用品を提供するニトリとの競争を強く意識したものだという。ニトリの好業績は、同社が消費者から強く支持されていることが大きな要因だ。

それと比べて、「大塚家具は消費者から支持されているのだろうか?」というのが父親から経営を引き継いだ久美子社長の問題意識だったという。

大塚家具のビジネスモデルはコンシェルジェ的な役割を担う案内係を活用する点にある。顧客はぶらりと気軽にお店に来店し、家具を見てまわるということが原則できない(というかやりにくい)ように仕組みが作られているのだ。

顧客は必ず受付をするように促され、来訪の目的、たとえば「家を新築したのでリビングテーブルを探している」とか、「新婚なのでとにかく全部家具を入れ替えようと思っている」といったことを伝える必要があった。

すると、その目的に合った案内係が手配され、その方に案内されてはじめて大塚家具の店内を見て回れるようになるというのが、それまでの仕組みだった。

この仕組みを壊そうとしたのが久美子社長である。

しかし、売り方を変えてみたら……

従来の売り方は目的があって来店する顧客には親切だが、ふらっと来訪して家具を見てみたいというような気楽な来訪者にとっては敷居が高い。

「この方法は、もう今の時代に合わないのではないか?」そのような仮説からコンシェルジェ方式だけではなく、自由に来訪して店内を見てもらうような売り方を始めようと久美子社長は考えた。

そして、そこでお家騒動が起きることになる。父であり創業者である前社長が、「そのようなやり方はダメだ」と言って社長を先代に戻すように主張し、プロキシーファイト、つまり株主の議決権の奪い合いに発展した。結果としては久美子社長の方がより多くの株主の支持を得て、大塚家具は新しい販売方法に踏み切ることになった。

だが、その後2期連続の営業赤字という、株主の期待を裏切る結果が出ている。これは、久美子社長、そして株主が期待した「先代からのやり方がユーザーの志向に合わなくなってきたのではないか」という仮説が、結果的に間違いだと判明したということだ。

久美子社長の肩を持つわけではないが、戦略の世界では「この仮説が正しいのではないか」と思ってやってみてもうまくいかないケースはよくあることだ。問題はうまくいかなかったときに、その理由をきちんと分析し、方針をどう転換すべきかだ。

では、この戦略はなぜうまくいかなかったのか? その理由について仮説を挙げてみよう。

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