2017.08.15

5人に1人はがんで退職 「治療しながら働く」は可能か

がんになったら、会社に言えますか?

5人に1人はがんで退職 「治療しながら働く」は可能か

「鶴を折るの、手伝って!」知人に頼まれ、ランチ後に突然始まった折り鶴タイム。

聞けば会社の同僚が「がん」で入院することになり、みんなで千羽鶴を折るのだとか。乳がんを経験した私からすると、「がんを公表できる職場って素敵だな」と思うと同時に、治療を終えても戻って仕事ができる環境にある同僚が羨ましくなりました。

皆さんの職場では「がん」になっても仕事を続けられますか?


がんになったら仕事は続けられないの?

医療の発展は目覚ましく、がんは「死に至る病気」から「長く付き合う病気」へとなりつつあります。

とはいっても、未だに「不治の病」というイメージが強いのか、「がん」で治療すると上司に報告をしに行っただけなのに、いつの間にか退職することが当然のような流れになることも。

身体を気遣ってのことでしょうが、これでは退職を促されているように感じてしまいます。

東京都福祉保健局が行った「がん患者の就労等に関する実態調査(平成26年5月)」によると、法人で就労していた(いる)人のうち、がん罹患後に退職した人は21.3%。約5分の1の人が、がんになったことがきっかけで仕事を辞めています。

このうち「会社から勧められて」の退職は15.4%。多くは自分から退職を申し出ています。その中には、いつの間にかの退職をやむを得ず受け入れた人も含まれると想像できます。

「退職=収入が途絶える」ということ。パートやアルバイトなど非正規雇用ならなおさら、生活費やこれからの治療費を考え会社に言い出せない現実があるのです。

会社に内緒で治療を行える?

それでは、「誰にも言わず内緒で治療を行えばいいの?」と思うかもしれません。乳がんを例にとると、手術後に放射線治療やホルモン治療、抗がん剤など通院メインでの治療が何ヶ月も続いていきます。

病院が開いている時間は平日昼間がほとんど。頻繁に遅刻をしたり、理由を言わず連休を取ったりすることで、周りから冷たい目で見られることもあるでしょう。先ほどの実態調査では、「会社に居づらくなって辞めた」方も17.7%いました。

会社の人に自分は「がん」だと伝えることは勇気がいるしリスクを伴います。ですから、「病気」であることや「治療のために遅刻や早退をすることがある」ことを最低限必要な範囲で伝えるだけでいいのではないでしょうか。

知人は人事部にだけ「がん」であることを伝え、上司や同僚には詳しい病名を伝えなかったそうです。がんは、身体だけでなく経済的にもダメージが大きい病気です。

いつから、どのような形で復帰できそうかなどの見通しを会社に伝えることで、仕事を辞めずに治療ができるようにしたいものです。

「治療しながら働く」という選択

厚生労働省の「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」別紙2「がんに関する留意事項」によると、約32.5万人もの人が治療をしながら仕事を続けています(平成22年国民生活基礎調査に基づく推計)。

がんの治療方法やスケジュールは人それぞれ。治療の副作用で、仕事を続ける気力や体力が続かないこともあります。仕事を辞めないためには、会社で使える制度はないか就業規則や福利厚生制度を確認することが大切です。派遣で働いているのであれば、派遣元の制度を確認しましょう。

例えば有給休暇。勤務期間や勤務日数によって有給休暇を取得できる日数に違いがありますが、1年間では20日を上限にお給料を確保しながら仕事を休むことができます。ただ、有給休暇の時効は2年なので、昨年の有給休暇の残りと今年の有給休暇を合計しても40日が取得日数の上限です。

会社によりますが、病気等で長期療養する場合に使えるよう、未消化の有給休暇を一定の日数積み立てる「積立年休制度」があるところも。お給料をもらいながら治療に専念できることは大きな安心につながります。

また、有給休暇の「半日取得」が可能かどうかも確認しましょう。乳がんの放射線治療の場合、1日1回、月曜日から金曜日まで週5回の治療を数週間かけて行います。

時間は着替えを入れても30分程度。しかし治療のためでも遅刻や早退が続けばボーナス査定に響きます。たまにでも有給休暇の半日取得ができれば、あせって会社に行かなくて済み心に余裕も生まれます。

普段、会社の就業規則や福利厚生制度を気にすることはありませんが、仕事を辞めずに治療を続けるヒントが隠されています。がんに限らず大きな病気をした時に使える制度でもあるので、健康な時から前もって調べておきましょう。

執筆/辻本 ゆか(おふたりさまの暮らしとお金アドバイザー)
企業の会計や大手金融機関での営業など、お金に関する仕事に約30年従事。暮らしにまつわるお金について知識を得ることは、人生を豊かにすると知る。43歳で乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。結婚を機に奈良に転居し、現在は奈良で独立系のFP事務所を開業。セミナーを主としながら、子どものいないご夫婦(DINKS・事実婚)やシングルの方の相談業務、執筆も行っている。

記事提供/Mocha

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