はじめに

週休3日制を導入する企業が増えているそうです。全体で5.8%、実に10年前の倍になっているのだとか。

しかし、その一方、従業員にとっては「雇用形態や収入などの待遇が下がるのでは?」「業務量が変わらなかったときのしわ寄せはどうなる?」など週休3日制への不安がつきまとい、“休みが増えた”と手放しでは喜べない事情も……。

こうした従業員の不安を解消するために、各社さまざまな方法で週休3日制を導入しています。生命保険会社で初めて週休3日制を導入した企業では、どのような工夫をしたのか話を聞いてみました。


「週休3日制」のさまざまなかたち

“ブラック企業”という言葉が一般化し、長時間労働の是正をはじめとした“働き方改革”が叫ばれるようになりました。その流れの一環として、「週休3日制」を取り入れる企業が増えています。

今年6月、佐川急便は宅配ドライバーの人手不足解消をねらい、一部地域の正社員を対象に週休3日制を導入すると発表。また、ユニクロを展開するファーストリテイリングでも地域正社員を対象に週休3日制を取り入れています。

両社とも、週休2日制の場合は1日8時間勤務なのに対し、週休3日制になってからは10時間勤務となったそう。1日あたりの勤務時間を長くし、週当たりの労働時間はそのままに週休3日制を採用しています。

他方、勤務時間は変えず、休みが増えた分の収入を減らすという方式を採用する企業もあります。Yahoo!は育児・介護を両立している社員を対象に、土日の休日に加え、1週あたり休暇を1日追加取得でき、その制度によって取得した休暇分は無給とする「えらべる勤務制度」を導入しています。

1日の勤務時間を長くするのか、収入を減らすのか。対象を育児・介護を両立する社員にするのか、希望する全社員にするのか――。週休3日制といっても、さまざまな働き方があるようです。

生保業界初導入、賃金1/5カットも「取得したい!」

“勤務時間は変わらず、休みが増えた分収入を減らす”という方法で、保険業界ではじめて週休3日制を採用するのが、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険です。導入は9月から。

気になるのはその収入です。どれくらい減ってしまうのでしょうか。

同社広報の後藤さんによれば「週5日の通常勤務者との公平性を保つために、週4日勤務(週休3日)者は、出社日数から5分の1カットとしています」とのこと。

対象者となるのは、男女問わず、育児または介護によって週4勤務制度を希望する社員。具体的には、本人または配偶者が妊娠中、または小学3年生までを養育する育児対象者と、要介護状態にある家族がいる介護対象者です。

すでに同社内では、この制度に“歓迎の声”が届いていると後藤さんは話します。

「対象となる社員からはさっそく取得したいとの声が上がっています。また、現在は対象外の社員からも、制度が整備されると、親の介護に直面したときの安心感につながるという意見が届いています」

休んだ分の業務はどうする?

休みが増えた分、収入が減るのは仕方ないとしても、その人の業務量はどうなるのでしょうか。業務量が変わらなければ安心して休めず、制度を利用することに躊躇してしまいそうです。

「勤務日数が週4日になることから、業務量は減少します。当社は多様な働き方を推進しているため、取得者の業務については職場ごとで調整して対応します。取得者は『時間』から『質・工夫』をベースにした働き方への改革によって、生産性向上を目指さなければなりません」(後藤さん)

「時間」から「質・工夫」にシフトするための働き方として、同社がすででに取り入れているのが、毎週金曜日に社員が自身や業務の都合に合わせ、月に一度15時に交代で退社する「プレミアムフライデー“ズ”」や、今年6月から全社員に呼びかけているテレワークだそう。

「管理職は月1回以上のテレワークの実施を必須として、職場への浸透を図っています。テレワークによって自身や職場の業務を今一度見つめ直し、効率のよい働き方を社員一人ひとりが選択して行う必要があると考えています」

今回、週休3日制を導入した経緯について後藤さんは次のように話します。

「今後、育児・介護に向き合う社員が増加すると想定されるなか、社員の離職を防ぎ、かつ時間制約のある社員も生き生きと働けるようにとの思いで制度を整えています」

生産性をどのように向上させていくのかといった課題はありますが、企業が週休3日制を導入し、家庭と仕事の両立をサポートしてくれる姿勢は心強く、働き続けたいと願う人たちの背中を押してくれそうです。

(文:編集部 土屋舞)

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