はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

投資初心者ですが、定期的に積み立てて、大家さん感覚で家賃収入を得られるものはないかと考え、J-REITがよいのではないかと考えています。

今日、本を購入したばかりで、まだわからないことだらけですが、上記のような投資目的だと、J-REITを毎月コツコツ積み立てていくタイプにしようかと思っています。オリンピックを見越して買いたいと思っているのですが、方向性は間違っていないでしょうか? ご教示いただければ幸いです。
(40代前半 独身 男性)


野瀬 :J-REITは簡単にいいますと、通常個人では不可能な大型不動産への投資を細分化した証券にして、個人でも小口で不動産投資ができるようにしたものです。

言い換えるなら「不動産の投資信託」ですね。売却益だけではなく、通常の不動産投資と同様の家賃収入を目指しているので、おっしゃる通り大家さん感覚で定期的な分配金収入が狙えるのがポイントです。

J-REITのメリットとデメリット

メリットとしては、今、お話しした2点を含め、以下の3点になります。

(1)不動産投資なのに少額からの投資が可能

(2)個人では投資できないような大規模な商業ビルや多くの投資先に投資が可能

(3)不動産投資なのに流動性が高い。つまり、売却が簡単で出口戦略がとりやすい

デメリットとしては運用会社や管理会社が利ざやを取るので、自分で直接投資するよりは利回りは下がるという点です。これは投資信託と同じですね。

ただ、通常の投資信託と異なり、分配金が多くなりやすいので、このあたりは質問者の方のご希望を考えるとぴったりかもしれません。

現物不動産にあって、J-REITにはないメリット

私自身も不動産投資をしているのですが、主な投資手法はJ-REITではなく、現物の不動産にあまり借入をせず投資するスタイルです。

そのため比較的規模の小さい物件になりますし、資金を蓄える必要がありますので投資スピードもゆっくりになります。

この私の投資手法に対して、投資仲間からは「せっかく不動産投資しているのにガツンと借入をしないんだったら、同じく借金がないJ-REIT買ったほうがマシじゃないか?」という指摘をよく受けますが、私は現物不動産にはJ-REITにはない「実際住めるというメリット」があると考えています。

つまり、もしも自分が病気などになって働けなくなっても、住む家があるというのは素晴らしい保険になるということです。

J-REITには、この保険としての機能がない点は留意しておいてもいいかもしれませんね。

市場が過熱しているなら投資を見送るのもアリ

質問者の方は毎月の積立投資を考えているようですが、個人的には不動産投資やREITに関しては、もう少し長い感覚で金額を大きくしてから投資した方がよい気がします。

なぜならドルコスト平均法に代表される株式の積立投資と比べ、不動産関連の投資の場合「今は不動産全体の市場が過熱している」や、「冷え切っている」という判断がしやすいからです。

そのため、次の項でもお話しますが「毎月決まった額」というよりは半年や1年に1回、冷えている市場を探して重点的に投資した方が効率がよいと思います。

もし市場が過熱していると思うのであれば、投資を見送ってもよいと思います。

五輪に向けてJ-REITを買ったほうがいい?

東京五輪の影響で関東圏の不動産価格は上昇しています。また、いわゆる原材料価格の高騰や、人件費の高騰もこれに拍車をかけているようです。

震災の影響で持家の価格が下落したと嘆いていた私の友達も、みんな含み損が消えるどころか、含み益が出るようになったと喜んでいます。

さて、このような状態のときに投資はどう考えるべきでしょうか?

私は常日頃、セミナーやコラムなどで「投資先探しは恋人探しと同じ」とお話しています。

女性になって考えてみてください。

小学校のとき、足の速いモテモテの男子がクラスにいたでしょう。あなたも好きになってしまうかもしれません。でも、クラスのみんなから好かれている男子に、多くの女子の1人である、あなたがアプローチしても、よほどの美人でない限りおいしい思いはできません。

これは投資でも同じです。「誰もが認めるいい銘柄を買っても儲からない」のです。

逆にいえば、恋人探しでいうなら受験や就職活動などで「自分がいい!」と思っている人の評価が一時的に下がったときに告白すべきであり、投資であればリーマンショックや震災などで「自分がいい!」と思った投資先の評価がなんらかの事情で一時的に下がったときが買いなのです。

すでに人気が高まり、大きな利回りは期待はできない

私は個人的にJ-REITや東京の不動産市況は、まだもう少し上がると思いますが、近いうちに天井が来ると思っています。

中学校で一番足の速い男子がバレンタインにたくさんチョコをもらっている状態といえますでしょうか。でも高校生になり大学受験が見えてくると、だんだん頭のいい子にも人気がでてきて、相対的に足の速い子の価値が下がってくるものなのです。

結論を言いますと、東京五輪を見込んだJ-REIT投資は悪くはないですが、すでに人気が高まっているので、あまり大きな利回りは期待できないと私は考えています。

長期的な投資を目指すのであれば、どちらかというと海外物件も組み込んだものを狙う方がリターンが狙いやすいと個人的には思っています。

もちろん、投資は自己責任で!ですが(笑)、個人的にはこの「落ち込んでいる出木杉くんを狙え!」作戦は勝率が高いと思いますので、是非参考にしていただければと思います。

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