はじめに

「投資家」といえば、いかにも“お金に強い”イメージ。しかし、どの投資家だって最初は手探り状態の中で、お金にまつわる知識や経験を積み上げてきたはず。そのプロセスから、投資初心者が学ぶべきことは多いだろう。

そこで、ここではプロではなく試行錯誤しながら資産形成を行う一般投資家、いわゆる投資ブロガーにインタビュー。投資のきっかけから、現在の投資方法に行き着くまでの経緯などを聞いた。


ライブドアショックで大損も「やめようとは思わなかった」

ブログ「マネーの知恵(仮)」を運営するASK(エースケ)さん(38歳、男性)が投資を始めたのは、社会人になって間もない2002年。もともとゲームやマージャンが好きで、投資もゲームのような感覚で始めたそうだ。最初はTSUTAYAを運営する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC ※現在は非上場)」など、自分の生活に身近な企業の個別株などを購入していたとのことで、当時の実績は「負けてはいないけれど、大勝した印象もないというくらい」。

2005年には会社を辞めて独立し、個人事業主に。その翌年、ライブドアショックがあった。株価が底を打った頃合いで『これはチャンスだ』とばかりに株を買ったが、さらに下がって数十万円の損失が出たという。しかし、それでも投資をやめようとは思わなかったのだとか。いったいなぜなのか?

「もともと投資は余剰資金の範囲内でやっていたので、“大やけど”を負ったわけでもなかった。むしろ、そこで損をしたことで『次はどうやったら勝てるんだ』と考えていました。失敗も経験だと思うし、やってみることで、なぜ負けたのか、なぜ市場が動くのかといったことについて、興味を持ち始められると思います」(ASKさん、以下同)

マーケットを見るのは“スポーツ観戦に近い”

「僕にとってマーケットを見るのは、スポーツ好きな人がスポーツを観戦しているような感覚に近いと思う」とASKさん。ゲーム感覚で始めたというだけあって、趣味に近いものがあるようだ。にもかかわらず、2007年には持ち株を全て現金化し、投資から距離を置いた時期もあったという。2007年といえば、リーマンショックの前年だ。

「リーマンショックの1年ほど前から、どうにも“きな臭い”感じがありまして…。また、当時は独立して始めた仕事も忙しく、『株とか見ている場合じゃない』と思って、いったん株のポジションをゼロにしたんです。その後1年間は1回も売買しなかった」

結果的に、暴落のリスクを回避することができたASKさん。同時に、絶好の“買い時”が訪れたこのタイミングで、再び投資を始めることに。だが、過去に底値を見誤った教訓から、今度は慎重を期したという。

「『チャンスがきた!』と思いましたが、ライブドアショックの時の失敗があったので、今度は一気に買わず、時期を分散して投資しました」

なお、インデックス投資に変えようと思ったのもこの頃だ。

「本を何冊か読んで、ETFが一番お手軽だな、と。インデックス投資なら個別株ほど神経を使わなくていいし、時間もとられない。そのうえ、分散効果もあるということで始めました」

資金もそうだが、ASKさんにとって投資はあくまで「余力」で行うべきもの。その点では、インデックス投資が本業に支障をきたさず長期的に資産形成ができる有効手段の一つと考えているようだ。

「良い投資先を見つけて集中的に投資することにも興味はあるのですが、今は仕事が忙しくて探している暇がない。仕事は働いたら確実に収入になるけど、投資は時間をかけたからといって成果を得られるものでもないし、努力したら必ず勝てるというものでもありません。時間対効果を考えると、まずは仕事に労力を費やして、投資は本業や生活に支障がない程度にやる方がいいのではないかと。仕事は自分の頑張りが反映させられるけど、投資した先を自分で変えることはできませんから」

2014年12月からほとんど変更はなく、大きな金額を投入するとしても「年に1,2度くらい」。あとは微調整をする程度だという。

“遊び感覚”で始めるからこそ、長く続けられる

そんなASKさんの目標は50歳までに“セミリタイア”できる状況を作ること。それも、できればより早い段階で、経済的自由を獲得したいと考えている。

「仕事を辞めたいわけではないけれど、面白い仕事や自分がワクワクする刺激のある仕事だけをできるようになりたい。そのために、インカムゲインだけで生活費を賄える状態にもっていくというのが僕のゴールです。朝から晩まで働いて、というよりは、働きたいときに自由に働きたい」

仕事も投資も「楽しむ」ことがモットー。その表情からは、日々の充実ぶりが伝わってくる。投資と聞くと、「難しそう」となかなか踏み出せない人もいるだろうが、ASKさんのように前向きに楽しむコツはあるのだろうか?

「最初は『怖い』と思うかもしれないけれど、興味のある人は、『なくなってもさほど痛くない』くらいの金額で始めてみればいい。最初から『資産形成しよう』と意気込むのではなく、まずは僕のように遊び感覚でやってみた方が、とっつきやすいと思います」

そうして最初の壁を越えたら、後はとにかく「長く続けること」が大事だという。

「投資の“失敗の仕方”って共通しているんです。だから、無謀な取引をしないとか、リスクを集中させないとか、必ず失敗につながる“やってはいけないこと”だけ学んで、あとは自分に合ったやり方をしたほうが長く続けられると思います。失敗には法則があるけど、成功のパターンは一つではなくいろいろある。それは長く続けて、相場を経験していかないとなかなか分からないことです。だからこそ、長く続ければ続けるだけ、成果は上がると思います」

(周東淑子/やじろべえ)

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