「つみたてNISA」の活用で見落としがちな重要視点

考えるべきは“制度の優劣”ではない

「つみたてNISA」の活用で見落としがちな重要視点

2014年のNISA(少額投資非課税制度)を皮切りに、2017年のiDeCo(個人型確定拠出年金)、そして2018年1月からスタートする「つみたてNISA」――。近年、国内では資産運用において優遇税制が適用される制度が相次いで新設されています。新制度の導入をきっかけに、投資を始められた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、われわれのところに投資の相談にいらした方の中には、「どの制度を選べばいいのか、困っている」「どの金融商品を選べばいいか、わからない」という方が多いのが実情です。あれこれ悩んでいるうちに、結局何も購入しないまま放置してある、というケースも少なくありません。

そこで今回は、3つの制度のメリットとデメリットを整理したうえで、どのように活用するのがベストなのかを考えたいと思います。


NISAとiDeCoは一長一短

まず、3つの制度の中で最初に始まったNISAについて整理します。この制度のメリットは、5年にわたって年間120万円まで、累計600万円を非課税で運用できる点です。通常であれば、株式や投資信託を運用して得た利益には20.315%の税金がかかりますが、それが非課税になるのです。

一方で、デメリットもあります。現行の制度では、非課税の期間が5年と決められています。期間終了後には、NISA口座にある資産を売却したり、特定口座もしくは一般口座に移管するなどの手続きを取らないといけません。また、NISA口座は特定口座や一般口座との損益通算もできません。

続いて、iDeCoについて考えてみましょう。こちらはNISAよりも税制優遇が手厚くなっていて、毎月拠出した額が所得控除の対象となるほか、スイッチング(運用中の商品の切り替え)で発生した利益にも税金がかかりません。また、受け取り時にも税制優遇が適用されます。

ただし、拠出した金額は原則として60歳になるまで引き出しができません。急に資金が必要になっても、引き出して使えないという点には注意が必要です。

つみたてNISAはNISAと併用不可

この2つの中間的な立ち位置になるのが、来年1月からスタートする、つみたてNISAです。メリットは、非課税の期間が20年と長く、非課税枠は累計で800万円と通常のNISA(600万円)よりも増加した点です。

また、購入できる商品は低コストの投資信託が大半となっており、投資家保護につながると考えられています。長期で投資すれば、大きな複利効果(運用益を再投資することで利益が利益を生むこと)も期待できます。

デメリットは、年間の投資上限額が40万円と少ないほか、あくまでも積み立て投資を前提にした制度なので一括で投資ができなかったり、株式やREIT(不動産投資信託)が購入できないという点が挙げられます。

また、iDeCoのようなスイッチングができません。積み立てている商品に切り替えるには、今保有している商品を売却して現金に換えたうえで、非課税枠を消化して、新たな商品を購入する必要があります。

さらに、同じ年に通常のNISAと併用することができず、どちらかを選択しなければなりません。つまり、3つの制度を同時に併用できないため、現行制度を最大限活用しようと思えば、組み合わせとしてはiDeCoとNISA、もしくは、iDeCoとつみたてNISAという、どちらかにならざるをえないわけです。

制度を選ぶ際に欠かせない視点

それでは、3つのうち、どの制度を、あるいは、どの組み合わせを選ぶのがベストなのでしょうか。ここで重要になってくるのは、「最も優れた制度(組み合わせ)を選ぶ」ことではなく、「自分に合った制度(組み合わせ)を選ぶ」という視点です。その際の注意点は、将来的に一体いくら必要なのかということです。

たとえば、40歳の人が自分の老後の資産形成のためにiDeCoを始めたとします。その人の拠出額は毎月2万3,000円だったとすると、60歳まで20年間の合計拠出額は552万円になります。20年で仮に運用がうまくいって1,000万円になったとしましょう。

しかし、1,000万円になったからといってその人の老後の不安はなくなるのでしょうか。おそらく、多くの人が老後の資金として1,000万円という金額では安心感が持てないはずです。であれば、iDeCoに加えて、つみたてNISAでも運用したほうがベターということになります。

逆に、自分の老後資金よりも、住宅資金や子どもの教育資金のほうが期近の問題だという方もいらっしゃるかもしれません。その場合、60歳になるまで現金を引き出せないiDeCoより、いつでも現金化できるNISAやつみたてNISAのほうが望ましいかもしれません。

もちろん、老後の資金には各種年金、退職金、親からの相続、それまでの自分の貯蓄なども考慮する必要があります。そうした資金も含めて、ご自身が安心できそうなファイナンシャルゴールを設定し、その目標を達成するために今何をすべきか(何をすべきではないか)を確認することが重要なのです。

ゴールを見据える重要性

これらの優遇制度は、国民に自助努力で長期に渡る資産形成を促すためのものです。多くの人が短期投資より長期投資のほうが有効であることを知識として知っています。しかし、現実はどうでしょう。日本の個人投資家は米国の個人投資家に比べて投資信託の平均保有期間が短い、というデータが多くあります。

つみたてNISAは税制メリットがありますが、20年も投資を続けることは実は難しいのです。「あなたは何か今日までの10年間ずっと続けていることはありますか」と聞かれれば、続けているものがある人は少数派でしょう。長期投資は「言うは易し、行うは難し」なのです。

「人生100年時代」といわれるように、何十年も資産管理をしなくてはならない時代がすでに到来しています。何十年もあれば、リーマンショックのような暴落相場を何度も経験することになるでしょう。そうした不安定な環境下では「自分の運用は大丈夫だろうか」と疑心暗鬼になり、運用をやめてしまう人が多くなります。

逆に、相場が大きく上昇している場合にも、利益確定を急いでしまい、資産を売却してしまう人が多くなります。人間は相場が上がっても下がっても、ついつい投資している資産を売却したくなるものです。

しかし、そうした相場観に依存した投資は短期投資になりがちですし、だいたい裏目に出るものです。ですから、迷ったらあなたのファイナンシャルゴールと照らし合わせてください。

短期間で100万円儲かっていたら、うれしいことです。でも、その100万円があなたの老後に与える影響はどれほどのものでしょうか。それよりも長期目標の達成のほうが優先されるべきなのです。

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