はじめに

「すき家」を運営するゼンショーが商品の値上げを検討しているようです。

この一報の翌日、ゼンショーの株価は上昇しました。消費者としては少し複雑ですが、株式市場は今回の値上げを経営にプラスだと考えている様子です。

また、ほぼ同じタイミングで「コンビニ各社がおにぎりの値上げを計画している」とのニュースが流れました。身近な食べ物が次々と値上がりしそうな予感ですが、実は牛丼とおにぎりの“値上げの事情”は違っているようです。

今、業界に何が起きているのか? まとめてみました。


「すき家」が値上げを検討

牛丼チェーン最大手の「すき家」は、2018年3月までに牛丼の値上げを実施すると発表しました。ただし、「業界の最安値は維持したい」とのことで、この値上げは微妙なコントロールの下で行われそうです。

具体的には、現在350円の主力商品「牛丼並盛」は値上げしない模様。それは、この並盛の価格が同社の“安さのシンボル”になっているためで、ここを変えると「客足に大きな影響があるからだ」と言います。

そこで大盛以上のメニューとサイドメニューの値上げで調整していくそうなのですが、その際にも興味深い微調整を検討しているようです。それは先に述べたように「値上げしても業界最安値を維持する」といった方針に基づいています。

「すき家」の牛丼大盛は現在470円と、これも業界最安値。「松屋」が520円、「吉野家」が550円なので、今回の値上げ幅は最大でも50円、実際は30~40円を目安に調整されることになりそうです。

値上げの理由は「人件費の高騰」

さて、「すき家」がこのような値上げ計画の理由として挙げているのは人手不足です。これは外食チェーンに限った話ではなく、コンビニでも宅配でも、とにかく人が採れずオペレーションがまわらないということは社会問題になっています。

人が採れないため、バイトの時給を値上げして新規に募集をかける。そうなると人件費が高騰する。この循環の中でコスト増の価格転嫁をしなければ経営が立ち行かなくなるわけです。

この人手不足、中小企業では「人手不足倒産」が増加しているというほどの大問題です。つまり「すき家」も値上げをしなければ“人手不足閉店”が増えてしまう可能性があるわけです。そして店舗閉鎖となると、むしろその結果コストが増えてしまう。

現時点で先回りをして、きちんと値上げ戦略を取ることは経営判断としてとても正しいのです。そして、その仕組みを理解している株式市場は、この動きに敏感に反応し、ゼンショーの株価を釣り上げたというわけです。

さて、よく似た報道に「コンビニのおにぎり」の値上げがありますが、実はここには少し違った事情がありました。

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