2017.11.24

短い時間で賢く稼ぐ「ZIP WORK」という生き方の現実

気になる“収入”と“待遇”は?

短い時間で賢く稼ぐ「ZIP WORK」という生き方の現実

高いスキルや豊富な経験があるのに、時間の制約があるため、思うような仕事に就けない。そんな悩みを抱えている人は少なくないのではないでしょうか。

仕事に対する求職者のニーズが多様化している中、自らのノウハウを生かして短い時間で賢く稼ぐ働き方が広がりつつあります。収入面や職場での待遇はどうなのか。新しい働き方「ZIP WORK(ジップワーク)」の実態をのぞいてみました。


相乗効果で仕事に充実感

東京都内の民間企業で働く伊藤香奈さん。週4日、午前10時から午後6時まで、派遣社員として取引先への実績集計レポートやそれを基にした提案書作成などの業務を担当しています。

職場の同僚にも恵まれ、充実した毎日を送ることができているという伊藤さん。でも、彼女にはもう1つの顔がありました。派遣社員として働く以外に週3日、フリーランスのセミナー講師として、ヨガインストラクターに向けてコミュニケーションスキルや集客方法、SNSの活用法などを教えているのです。

伊藤さんは、前職ではヨガ関連の会社に正社員として勤めていました。商品企画からイベントの運営まで、幅広い業務を手掛けていました。ただ仕事を続ける中で、いつの頃からか、ヨガインストラクターの育成を自分の仕事にしたいと思うようになったといいます。

一念発起、当時勤めていた会社を辞め、セミナー講師として独立。ですが、収入面の不安定さが付きまといました。そして何より、これまでチームとして仕事してきたものを1人でやり繰りすることに心細さを覚えたそうです。

そんなときに出合ったのが、現在、派遣社員として働いている会社でした。「片方の仕事で得た知識や人脈を、もう片方の仕事に生かせる。その相乗効果を職場の同僚も理解してくれているので、限られた時間で私の経験やスキルをどう生かせるのか考え、頼ってくれることに充実感を覚えています」(伊藤さん)。

導入企業は100社まで拡大

人手不足や働き方改革が叫ばれる中、伊藤さんのように、これまでのキャリアで獲得した資格や経験、専門知識を生かして、限られた時間で派遣社員として働き、残りの時間を育児や自分のやりたい仕事に充てる働き方が、じわりと拡大してきています。

人材サービス業大手のリクルートホールディングスでは、こうした働き方を「ZIP WORK」と名付け、普及を進めています。同社がジップワークの提唱を始めたのは2016年9月。それから1年で、導入企業は100社まで拡大しました。

導入した企業からの評判は上々で、リピートする企業や親会社にジップワークを勧める企業も出てきているといいます。リクルートスタッフィングの平田朗子エンゲージメント推進部長は「ジップワーカーには就業時間が短くても能動的に動いてくれる人が多いため、人手不足が深刻化する中で顧客企業の満足度は高い」と話します。

導入企業の業種はさまざまですが、募集職種は3つの分野に絞られるといいます。1つ目は人事・法務などのコーポレート部門、2つ目が高度な集計業務などデータ系の職種、3つ目が新規事業も含めた広義の企画・販促です。

各職種での経験や資格を保有している人が対象で、中心は社会人経験10年以上の人材。週3日勤務が一般的で、1日6時間勤務が標準となっています。時給は2000円前後のケースが多く、一般の事務派遣と比べると2割ほど高いようです。

管理職にも意外な効果

普及を進める中でリクルートとして意外だったのは、育児以外の理由でジップワークを始める人が多かった点です。現状では育児が全体の3~4割で、同じくらいの比率を占めるのが伊藤さんのような自分のやりたい仕事とのダブルワーク。次に介護、家事との両立、勉強との両立という理由が続きます。

導入企業には、当初は想定していなかった効果も表れ始めているそうです。ジップワークで働く人は就業時間が限られているため、他のスタッフに比べると管理職が接触できる時間が短くなってしまいます。「この短い時間でいかに円滑にコミュニケーションを図れるかが重要となるため、管理職のマネジメント能力が磨かれている」と平田部長は言います。

想定以上の成果が上がっている一方で、リクルートとして苦労しているのが募集企業集めです。現状では、ジップワークとして新規に募集している企業は全体の2~3割で、残りはフルタイムでの募集だったものをジップワークに切り替えたものだといいます。

「まだ多くの企業では『派遣社員=フルタイムで簡易な事務作業』『専門性の高い仕事はフルタイムの直接雇用しかない』というイメージが強いのが現状。ジップワークのスキームを通じて、こうした企業の人事に対する考え方を変えていきたい」(平田部長)

ジップワーカーとして働く伊藤さんは「ジップワークというブランドがあるので、周囲からは自分のスキルを生かせる仕事だけを頼まれます。どういう仕事を振るのか、優先順位をつけてくれているので、とても働きやすい」と話します。

求職者の仕事に対するニーズが多様化する一方で、今も昔ながらの固定概念にとらわれているところが多い企業の人事部門。ジップワーカーの開けた一穴は、今後どのような広がりを見せていくでしょうか。

(文:編集部 猪澤顕明)

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