はじめに

今がまさに旬のイチゴ。最近はたくさんの品種が出回っており、イチゴを買うというより、「あまおう」「ひのしずく」といったブランド名で買われるようになりました。

その分、国内でのシェア争いも激しさを増しています。その様子は、さながら「イチゴ戦争」といったところです。

そこに今シーズン、新たに参戦したイチゴがあります。苦節8年を費やして開発された新ブランドは、イチゴ戦争の勢力図を変えるのでしょうか。


大分県待望の新品種「ベリーツ」

果実の表面は、いかにもインスタ映えしそうな鮮やかな赤。口に運ぶと、一般的なイチゴより酸味が控えめで、その分、甘みが際立ちます。

大分県が2010年から8年の歳月をかけて開発したイチゴの新品種が「ベリーツ」です。名前の由来は「スイーツみたいなストロベリー」だから。昨年末に販売が開始され、一部のSNSでも話題になりました。

今のところ、商品が出回っているのは西日本が中心。まずは、トラック輸送でも鮮度の落ちない関西圏、特に競合の少ない京都を軸に足場固めを進める方針です。その後は、もともと東日本で不動の地位を築いてから全国に展開していった「とちおとめ」と逆のルートで、市場の拡大を図ると考えられます。

昨年12月14日に、新宿高野本店で限定の試食会を開催。今年1月14日には、銀座にある大分県産食材のレストラン「坐来(ざらい) 大分」で、新宿高野とのコラボイベントを実施するなど、首都圏での認知度向上へ布石も打っています。

栃木県と九州勢がつばぜり合い

大分県ではこれまで、「さがほのか」が県内のイチゴ出荷量の8割を占めてきました。さらに優れた、大分オリジナルの品種が欲しい。そんな声を受けて開発されたのがベリーツでした。

実は今、国内のイチゴ市場では40以上のブランドが乱立。上位5県で収穫量シェアの4割を占めており、栃木県と九州勢が激しいつばぜり合いを演じています。大分県がオリジナル品種を開発した背景にも、このシェア争いで上位に食い込もうという狙いが見え隠れします。

そもそも、なぜ競争が激化しているのでしょうか。そこには3つの理由があると考えられます。

1つは、イチゴが生産者の腕前によって出来栄えが左右されやすく、その分、品質さえ良ければ他のフルーツよりも稼げるという事情です。

大きさやおいしさだけでなく、バランスの取れた美しい形だったり、品種にブランド力があれば、高値で売れるのです。中には1粒1,000円以上の値段がつくものもあります。

したがって、イチゴ生産者の年間所得は1,000平方メートル当たり約190万円と、メロン(同57万円)やスイカ(同37.4万円)を大きく引き離しています(農林水産省「農業経営統計調査」)。牧歌的なイメージのある農業の世界も、稼げるとなると生産者に気合いが入るのは当然といえるでしょう。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介