はじめに

「炭酸水の新時代の幕開けを伝えていきます」――。2月7日に開かれた、日本コカ・コーラの戦略発表会。その席で、同社の和佐高志副社長はこう宣言しました。

これまでも主力商品の「コカ・コーラ」を筆頭に、「ファンタ」「カナダドライ」など国内の炭酸飲料市場を引っ張ってきた日本コカ・コーラ。その彼らが言う“新時代”とは何を指しているのでしょうか。


30~40代の大人に向けた強炭酸水

1時間半にわたって開かれた発表会の中盤。満を持して発表されたのが、3月26日に全国で発売する「ザ・タンサン・ストロング」です。

この商品の特長は、名前にも現れている通り、その炭酸の強さです。炭酸の度合いを示すガスボリュームは、日本コカ・コーラ史上で最高。強い刺激と酸味を抑えたキレのある味を両立した、ゼロカロリー、無糖、ノンカフェインの炭酸飲料という触れ込みです。

通常の「ストロング」のほかに、レモンエキス入りの「ザ・タンサン・レモン」も同時に発売します。いずれも490ミリリットルサイズで、価格は121円(税抜き)です。

今回の新製品発売に当たって、同社は1年をかけて炭酸水のマーケット調査を実施。その中で、炭酸水を手に取る人は普段ミネラルウォーターを飲んでいる人が多いということがわかりました。

そうした層にも、従来の甘い炭酸飲料を飲む人にも、炭酸水の潜在的なニーズがあるとして、幅広いユーザーを見込みます。

5年間で1.4倍以上伸長した炭酸水市場

近年の炭酸飲料水市場の中で「最も高い成長率を示しているのが炭酸水」だと、和佐副社長は話します。

実際、市場調査会社のインテージによると、2013年に163億円だった炭酸水の国内市場は、5年間で238億円と1.4倍以上に成長。市場が好調な理由について「飲用シーンの拡大にある」と、同社は分析します。

ハイボールやチューハイなどお酒の割り材として使われることが多かった炭酸水の用途が、水分補給や食事のお供として日常的な飲用にも拡大していることが考えられるといいます。その背景には、炭酸の刺激による爽快感、リフレッシュ効果を無糖で味わいたいという消費者ニーズがあるようです。

そのため、日本コカ・コーラは、ストレート飲用に適したおいしい炭酸水を作るというテーマで、ザ・タンサンの開発を進めました。右肩上がりの市場に「新しいポジショニングの製品として投入していきたい」(富重豪グループマネジャー)と意気込みます。

ライバルはウィルキンソン?

現在、炭酸水市場を牽引するのは、アサヒ飲料の「ウィルキンソン」です。国内シェアはおよそ54%(「ウレコン」の調査結果を基に編集部で算出)。ザ・タンサンの前に強力なライバルとして立ちはだかります。

「歴史のあるブランドができることと、新しいブランドでできることは違うと思っています。当社はこれまでにないおいしさで差別化を図りたい」(富重グループマネジャー)

甘さがなくリフレッシュできる飲料のニーズが高まっている中で、「炭酸水はガスボリュームの高いものが求められている」と富重グループリーダーは話します。しかし、炭酸を強くしすぎると、今度は酸っぱくなってしまいます。そこで、ザ・タンサンは独自処方によって、酸っぱさのないキレのある味を実現させたといいます。

説明会で使用された、日本コカ・コーラの商品ポートフォリオ

2017年は特定保健用食品や機能性表示商品をはじめとして、今までのラインナップになかった付加価値商品を投入した日本コカ・コーラ。同社の炭酸飲料水は市場を上回る伸び率を記録し、販売金額は2016年を超えました。

ホルヘ・ガルドゥニョ社長は「毎年1,000種類の新製品が発売されますが、生き残るのは最高のものだけ」と話します。はたして「ザ・タンサン・ストロング」は、“最高の炭酸水”として同社の屋台骨の1つとなれるでしょうか。

(文:編集部 土屋舞)

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