2018.02.28

マクドナルドがスマホ事前注文を始める浅からぬ事情

モデルは本場・米国のスタバ?

マクドナルドがスマホ事前注文を始める浅からぬ事情

日本マクドナルドがスマートフォンで事前注文できる仕組みを全店に導入するそうです。一見、そのまま読み飛ばしてしまいそうなニュースですが、実はこの仕組み、ファストフードの売り上げを劇的に増加させるとして、米国で大きな話題となったものなのです。

最初に始めたのはスターバックス。スマホ事前注文がなぜ売り上げを伸ばすのか、その秘密をひも解いてみます。


スマホ事前注文で増収になるワケ

2月22日、日本マクドナルドがスマホで商品を事前に注文し、決済できるシステムを導入する方針だと、複数の国内メディアが報じました。今年から実験的に開始し、将来的に全2,900店への拡大を目指す、という内容です。

このご時世、新しいスマホアプリを大企業が始めるからといって、それほど驚くニュースではないかもしれません。しかしこの仕組み、過去最高益を記録した日本マクドナルドの業績を、さらに劇的に伸ばす可能性を持っているとして、業界関係者がとても注目しているものなのです。

米国でこの仕組みを導入し、大成功した企業がスターバックスです。導入以降、来店客の2割が事前にスマホで注文・決済するようになったとのこと。さらに重要なのは、スターバックスの来店客数や売上高の増加ペースがそれ以前よりも大きく加速した点です。

なぜスマホ事前注文を導入したことでスターバックスの売り上げが伸びたのでしょうか。それは米国のスタバのお店の行列が異常に長いからです。

米国のスタバは長い行列が当たり前

日本でスタバに行くと、レジの前に数人が並んでいて、注文をすると商品の受け取り口にまた数人が並んでいるという状態が普通だと思います。そして、それは特に苦になるような列の長さではありません。

ところが、米国のスタバは違います。ニューヨークのスタバでいつも見かけるのは、店の一番奥にあるレジから始まり、入口付近まで続いている人の列。組数でいえば20組以上でしょうか。それくらいたくさんの人がレジに並んでいるのです。

米国ではスタバに限らず、ファストフードやセルフサービスの小売店では列が長いのが当たり前です。理由は、支払いを早く終わらせるために従業員を増やすよりも、客を待たせたほうが少ない人件費で店舗を運営できるという考え方が、現地の小売業界、飲食業界に広まっているからです。

あきらめていた顧客の分が上乗せされた

普通の小売店、飲食店ならそれでもいいのですが、スタバの場合は困ってしまうぐらい列が長くなっていました。しかも顧客にとって悩ましいのは「それでもスタバのコーヒーが飲みたい」ということです。だから長蛇の列ができてしまう。その救世主になったのがスマホ事前注文でした。

お店に行く前にあらかじめスマホで買いたい商品を注文し、決済もスマホで済ませてしまう。そうすると、顧客はお店に入って直接、商品の受け取り口に行くだけで良くなります。受け取り口に行けば、すでに商品が用意されていて、支払いも済んでいるので、そのまま商品を受け取ってお店を出ることができます。

それまで「列が長いから」という理由であきらめていた人たちがスマホ事前注文を使うようになったことで、スタバでは「機会ロス」となっていた分が従来の売り上げに上乗せされることになりました。

つまり、これまでのスタバの売上高は長い行列にあきらめずに並ぶ人たちで作られていて、そこに新たにスマホ事前注文によって、あきらめていた注文をあきらめなくなった新しい人たちの売り上げが積み上げられたわけです。

日本のマックは米国のスタバに似てきた

この成功を受けて、米国では他のファストフード店も追随を始めました。とにかく長い列ができていて、それを見た顧客があきらめてしまうような業態では、どこでもこの方法が適用できるからです。

ひるがえって、日本です。実はこのスタバの事例、経営コンサルタントが日本の小売店や飲食店に話をしても、それに飛びつくチェーンはほとんどありませんでした。理由は、日本ではどのチェーンも米国ほど列が長くないからです。

日本では、コンビニでも列ができ始めると、店員さんが一斉にレジに戻ります。ファストフードでも、注文から支払い、商品の受け取りまで、それほど待たされる感じはしません。

例外が回転寿司店です。あきんどスシロー、はま寿司、くら寿司といった回転寿司大手の店舗では毎週末、1時間半待ちは当たり前というような長い待ち行列ができていました。それにうんざりして帰ってしまう顧客も多かったので、回転寿司業態は比較的早い時期からスマホ予約を始めたわけです。

最近のマクドナルドも、客足が戻ってきた結果、いつの間にか店頭に長い列ができるようになりました。レジに並んで商品をオーダーすると、番号がついたレシートを渡され、たくさんの人たちと一緒にレジ横で待っていると、しばらくして自分の番号が呼ばれる。マクドナルドでは、いつの間にか「待つのが当たり前」になっていました。

これが米国のスタバと同じ状態なのです。マクドナルドで新しい仕組みが始まれば、スマホであらかじめ注文をした人は、直接商品受け取り口に行くことで商品を受け取ることができるようになります。

そうなると、お昼のピーク時など、混んでいるからという理由でマクドナルドを敬遠していたお客さんが戻って来る。それが新しいマクドナルドの戦略ではないでしょうか。

(写真:ロイター/アフロ)

Card Stocks

連載

Ranking

Pick Up

Keyword

Authors