仮想通貨“処分7社”、何が「停止」と「改善」を分けたのか

金融庁の判断基準はどこに?

仮想通貨“処分7社”、何が「停止」と「改善」を分けたのか

金融庁は3月8日、先月から進めてきた立ち入り検査の結果を受けて、国内の一部の仮想通貨取引業者に行政処分を下しました。

今回、処分の対象となったのは7社。登録済み業者とみなし業者、合わせて32ある国内の取引所の中から「問題あり」として指摘されたわけです。

その中でも、「業務改善命令」よりも重い「業務停止命令」を受けたのが、FSHOとビットステーションの2社。いったい何が、この2社とその他の5社を分けたのでしょうか。同日に行われた金融庁の説明からひも解いてみます。


処分7社は内部管理態勢に不備

国内に32ある仮想通貨の取引業者のうち2割強が対象となった、今回の大量処分。その背景について、金融庁は、法令が求める態勢について、十分な実効性があるものでなかったり、不十分だった、と説明します。

では、何をもって、そのように判断したのでしょうか。1月にコインチェックで発覚した仮想通貨「NEM」の不正流出を受けて実施された仮想通貨取引所への立ち入り検査では、システム管理や分別管理、その他の各種顧客保護、マネーロンダリング対策など、多岐にわたるリスク管理の態勢がチェックされました。

今回、行政処分を受けた7社については、内部管理態勢がノウハウ、人的リソース、システム、いずれの点でも追い付いていなかったというのが、金融庁の説明です。

その中でも、より処分として重い「業務停止命令」が発出されたのが、ビットステーションとFSHOの2社。いずれも3月8日から4月7日までの1ヵ月間、仮想通貨の交換業務の停止を命じられました。

「業務改善命令」のみが発出された5社(コインチェック、テックビューロ、GMOコイン、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジ)と、何が違ったのでしょうか。

なぜ重い処分が下されたのか

金融庁は、一般論として、業務停止命令は当該行為の重大性を踏まえて処分する。本件については、お客さんの被害が起こる蓋然性が高かった、と指摘します。上記2社には、具体的にどんな不備があったのでしょうか。

関東財務局の資料によると、FSHOは複数回にわたって高額な仮想通貨の売買があったにもかかわらず、取引時確認など必要とされている確認作業を怠っていた事例が多数確認されたといいます。また、取引時確認を職員に徹底させるための研修などの態勢も整っておらず、著しい態勢不整備が認められた、ということです。

もう1社のビットステーションに至っては、さらに深刻な不祥事が明らかになっています。

東海財務局の資料によると、同社の100%株主であった経営企画部長が、利用者から預かった仮想通貨を私的に流用していた事実が、立ち入り検査によって明らかになりました。金融庁は、この経営企画部長を告発するよう、会社側に伝えたといいますが、3月8日時点で同社は告発を行っていないそうです。

取引時確認が徹底されていないと、コインチェックのような不正流出があった場合、早期に発見することは困難になります。仮に事案が発生した場合、被害が拡大する可能性も高くなります。また、顧客資産を私的に流用する行為など、利用者保護の観点からは極めて重大な問題です。

登録済み業者も処分対象に

一方で、今回行政処分を受けた7社の中には、登録済み業者も2社(テックビューロ、GMOコイン)ありました。金融庁が審査した業者からも処分対象が出たのは、どんな事情があるのでしょうか。

金融庁の説明はこうです。審査段階では、登録を拒否する要件に該当する項目が、上記2社にはありませんでした。しかし、各社に一定のリスクがあることは把握していたといいます。そのリスクをモニタリングで注視していましたが、登録後に業務が急速に拡大する中で、リスクが顕在化したというわけです。

一連の検査を通じて認められた問題点については、検査結果の取りまとめを行う方針です。その中で異常性が認められたものについては、審査登録における具体的な検査項目の目線を構築し、審査の強化を図っていくといいます。

一方で、金融庁はかねてから「利用者保護とイノベーションのバランスが必要」と繰り返してきました。一連の事態を受けても、こうした姿勢を大きく転換することはせず、問題点があれば適切に対応していく方針とのことです。

登録申請の取り下げを申し出る動きも

立ち入り検査は現在も継続中で、みなし業者については全取引所に立ち入り検査する方針を固めています。加えて、「仮想通貨交換業等に関する研究会」を発足させ、仮想通貨をめぐるさまざまな問題について、制度的な対応を検討する方針です。

その狙いについて、金融庁は次のように説明します。資金決済法を改正した当時は、仮想通貨を決済手段としてとらえていましたが、現在では想定していた以外の使われ方や投機的な動きが見られます。そうした中で、どのような対応が必要か、全体的な制度のあり方を見直す必要があるかを議論していくといいます。

こうした当局側の動きの一方で、みなし業者からは登録申請の取り下げの申し出る動きも出始めています。すでに取り下げの申し出を行ったのは、ビットステーション、ビットエクスプレス、来夢の3社です。

金融庁の説明によると、登録審査やシステムリスク管理に関する報告書の内容を踏まえて、内部管理が不十分だと指摘していたところ、各社の判断で申請取り下げを申し出てきたといいます。

昨年終盤の価格高騰をきっかけに急拡大が続いてきた仮想通貨ビジネス。ですが、コインチェック問題の発覚以降、急激に逆回転を始めているようにも見受けられます。今月19~20日にアルゼンチンで開かれるG20(20ヵ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)でも議題に上るとされており、大きな潮目を迎える可能性もありそうです。

(文:編集部 猪澤顕明)

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