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2018.03.11

あまい「綾鷹」を売り出したコカ・コーラの“甘くない”戦略

緑茶のライトユーザーを開拓

あまい「綾鷹」を売り出したコカ・コーラの“甘くない”戦略

「優しく包み込んでくれるような、春の訪れを感じさせてくれる味わいです」。3月7日に開かれた日本コカ・コーラ「綾鷹 茶葉のあまみ」新発売記念イベントで、ゲストとして招かれた女優の吉岡里帆さんは、そう言って満面の笑みを浮かべました。

同社が2月26日に発売した「茶葉のあまみ」は、2008年から展開している緑茶ブランド「綾鷹」の新商品。砂糖を使った人工的な“甘み”ではなく、素材の持つ自然な“あまみ”を引き出したのが特徴です。

あまり緑茶を飲まないライトユーザーや苦味を理由に敬遠している人をターゲットにしたといいます。しかし、実は同社は同じ顧客層を狙った「綾鷹 にごりほのか」という商品を昨年3月に発売したばかり。

なぜ、たった1年で同じターゲットの商品の刷新に踏み切ったのでしょうか。そこには、日本コカ・コーラが“あまい緑茶”に込めた“甘くない戦略”があるようです。


あまみでサブセグメントを開拓

「苦み、渋み、旨みは誰もがイメージしやすいですが、今回は“あまみ”、素材そのものの自然な味わいに着目しました」。イベントの冒頭、日本コカ・コーラの吉田ミシャール・マネージャーは、そう強調しました。

「茶葉のあまみ」は、深蒸し茶や玉露、甜茶など、あまみのある茶葉を使用しています。これらをかき回さず、時間をかけてじっくり抽出することで、苦みや渋みを抑え、あまみを際立たせたといいます。

「綾鷹ブランドの成長のため、新規ユーザーを獲得することが必要だと考えました」(吉田マネージャー)。しかし、単なる新商品では、コア商品である通常の綾鷹との違いが不鮮明になってしまいます。

通常の綾鷹は、苦み、渋み、旨みを調和させた味わいが特徴で、30~40代の男性をコアターゲットに設定しています。一方、茶葉のあまみでは、飲みやすさを前面に押し出すことで、コア商品との差別化を狙いました。

「サブセグメントが作れると、ユーザーの層も広がります。『急須で淹れたような緑茶の味わい』が綾鷹のコンセプトですが、その中でも“あまみを楽しむ”というセグメントを作っていこうと考えています」(成岡誠グループマネージャー)

開発の背景に緑茶市場の変化?

日本コカ・コーラが緑茶の新セグメント作りに力を注ぐ背景には、緑茶飲料市場の変化があるようです。

市場調査会社のインテージの調べでは、国内の緑茶飲料市場は2016年まで右肩上がりの成長が続いていました。しかし、2017年は前年比2.7%減の2,033億円と、マイナスに転じました(下図)。

インテージの分析によると、カテキンの含有量が多いにもかかわらず、カフェインが少ないという点が見直された「ほうじ茶」や、アイテム追加などの新商品投入が功を奏した「ブレンド茶」の勢いに押された結果だとみられます。

また、データ分析などを展開するTrue Dataのまとめによると、日本茶・麦茶ドリンクの1店舗当たりの売上金額において、日本コカ・コーラのシェアは近年、3番手が定着。春と夏のハイシーズンにおいて、伊藤園やサントリーに比べると売り上げの“山”が低い傾向も見て取れます(下図)。

こうした現状を打破するには、これまで取り込めきれていなかった新しい層のユーザーの開拓が欠かせません。そこで着目したのが、緑茶に親しみのないユーザーにも受け入れられやすい“あまみ”という新セグメントだった、ということのようです。

「にごりほのか」の反省を生かせるか

日本コカ・コーラが実施した調査では、あまみに対して高い評価を下したユーザーは全体の35%と、新商品のベンチマークである25%を大きく上回ったといいます。

あまみは“飲みやすさ”という言葉にも言い換えできます。飲みやすさについては、同社でも以前から潜在ニーズがあることを把握していました。それを商品化したのが、冒頭でも触れた「にごりほのか」でした。

この商品では「繊細な旨み」と表現して、飲みやすさを前面に打ち出したマーケティングを展開しました。その結果、飲んでくれた人には好評でしたが、そうでない人からは「薄いのではないか」という印象を持たれたといいます。

「ニーズは絶対あると思っていましたが、ある程度のところまでしか、つかまえられませんでした」(成岡グループマネージャー)。そんな反省からたどり着いたのが、“飲みやすさ”ではなく、“あまみ”というコンセプトでした。

茶葉のあまみでは、茶葉本来のあまみ以外に、飲んだ人が最初に感じる「先味」にも工夫を凝らしました。良質な玉露を使うことで、口に入れた時の香りが強めに出るようにしたそうです。

「綾鷹ブランド全体で、急須で淹れたお茶のさまざまな側面を取り上げていって、新しいお茶の楽しみ方を顕在化させ、ブランドとして成長していこうと考えています」(成岡グループマネージャー)

にごりほのかで取り込みきれなかった潜在顧客層をどれだけ囲い込み、綾鷹ブランドの売り上げをどこまで底上げできるか。まずは4~5月のゴールデンウィークでの売れ行きが、今後を占う試金石となりそうです。

(文:編集部 猪澤顕明)

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