はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は横山光昭氏がお答えします。

なかなか貯蓄ができなかったのですが、ずっと頑張ってやっと100万円ほど貯めることができました。このくらい貯蓄ができると、もう投資を始めてもよいでしょうか。貯蓄をしても利息はほとんどつかないし、仮想通貨や投資などで儲けた話を聞くと、自分も早く始めなくてはと焦ります。効率よく、しっかりとお金を増やしていきたいです。

〈相談者プロフィール〉
・男性、34歳、妻(33歳・専業主婦)、子供1人(5歳・幼稚園)
・職業:会社員
・手取り月収:32万3,000円(残業により変動あり)
・ボーナス手取り:30万円(年2回支給)
・貯蓄額:104万円
・投資経験:なし


横山: 投資は焦ってはダメ。まずはどういうものか、本を読んだりして知識をある程度つけましょう。そして、初めからリターンを狙い、リスクの高い投資をすることはおすすめできません。

長期的に積み立てながら分散投資ができる「積立投信」などから始めましょう。信託報酬などのコストを意識することも大切です。

投資は基本、貯蓄ができてから

少し手元にお金ができると、投資を始めたくなる気持ちはわかります。ですが、投資は元本保証がありません。今の貯蓄を失うと、ご家族の生活はどうなってしまうのか考えてみましょう。私は、生活に必要な貯蓄をこう考えています。

生活に「使うお金」として、手取りの1.5か月分。

これは普通に生活をして、その中で突然必要になる支出。たとえば実家のご両親が入院して頻繁に帰省しなくてはいけなくなったとか、そういうお金を無理なく出せるように多めに設定しています。

「貯めるお金」として、手取り6か月分。

これは生活防衛資金の意味合いが強く、最低限の金額です。もし、職を失っても、ある程度方向性が見えるまでは生活できるであろう金額です。このお金は、使うお金が1.5か月分以上になったら貯めて作っていきます。教育費やマイホーム資金などもこの中に含まれますが、6か月分のほかに予算を立てて貯めていくイメージです。

そして、ここまでのお金が貯められたら生活に困ることはなくなるでしょうから、しばらく使わない余剰資金として、「増やすお金」に回していきます。この中からは、投資をしてもOKです。

ただ、ここまで貯めるのが大変、という人もいるのですよね。

貯蓄をしながら投資する、“並走”もOK

もし、貯蓄のスピードが遅くて、なかなか投資ができないという人は、毎月貯蓄をしながら投資もするという“並走”をしてみるのもよいと思います。

生活防衛資金を作りながら、お金を増やすことも考えるのです。そうすると、貯蓄ができてから投資を始めるよりも投資期間が長くなり、時間が味方をし、複利の効果も得て、お金を増やすことができる可能性が高くなります。

まずは自分が投資に向いているのかどうかを判断するために、普通の課税口座で「積立投信」を始めてみましょう。蓄えに回せる金額すべてを投資にしてはいけません。貯蓄する分と投資する分をきちんと分けるためのルールを決めておきましょう。

「投資をもっとしたい」と思うようなら、60歳まで引き出せず、自由度は低いですが老後資金作りに強いiDeCoを検討してもいいでしょうし、教育資金やマイホーム資金にも使えたらいいなと思うというのであれば、引き出しが自由なNISAやつみたてNISAを検討してもよいでしょう。

預金の利息だけでは、なかなかお金が増やせないので、リスクが少なく増える可能性がある投資方法で始めてみるとよいですね。

まずは家族の生活を守れる資金を

相談者さんの場合、手取り32万3,000円、貯蓄は104万円ですから「使うお金」は準備ができていますね。「貯めるお金」は、本当は最低限193万8,000円必要なのですが、そこには140万円弱不足しています。ですから、もう少し貯蓄一本に絞ってお金を頑張って貯めてみるか、もしくは貯蓄をしながら投資信託を積み立ててみるということがよいのではないでしょうか。

失っても惜しくないお金ができていない現状では、仮想通貨や儲けたいと思ってやるような投資はおすすめできません。まずは万が一トラブルが起きても家族の生活を守ることができる資金を作ることを目標にしてください。

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