はじめに

ちょうど1週間前にあたる4月18日水曜日、日経平均株価は4営業日連続で上昇し、2月28日以来、約1ヵ月半ぶりに2万2,000円台を回復しました。このまま再び上昇していくのかと期待されたものの、その後は小幅安で引ける展開が数日続いてきました。

私の周りの個人投資家や海外の投資家も、今後の日経平均の展開には強い関心を持っているようです。今回は、今後の値動きに影響を与える可能性のある、いくつかの材料を見ていきましょう。


日米ともに決算発表が本格化

米英仏によるシリアへのミサイル攻撃後に一段と状況が緊迫化することがなかったことや、注目されていた日米首脳会談が無事に終わったことを受け、すでに投資家の関心は企業決算に移っています。

今週は、本日を入れて残りの3日間(4月25~27日)で450社弱の日本企業が決算を発表します。米国においても、同国を代表する株価指数「S&P500」を構成する銘柄のうち、180社以上の決算発表が今週は予定されています。

日本企業の決算においては、年初から続いていた円高や、貿易摩擦の影響がどこまで企業業績に悪影響を与えているかに注目が集まります。日本企業の性質上、年初からの円高に伴うガイダンスリスクに注意が必要となります。

米国企業においても、貿易摩擦が1つの懸念点として挙げられます。ただし、米国の場合は法人減税などのプラス効果も期待されることから、市場では日米ともに増益基調が維持されるとの見方が大勢を占める形になっています。

筆者が生活拠点を置く台湾においても、先週の木曜日19日に一足早く同国を代表する巨大企業、台湾積体電路製造(TSMC)が、2018年第1四半期(1~3月期)の決算を発表しました。この企業は半導体受託製造最大手として日本をはじめ世界中でも知られているかと思います。

発表された決算を見ると、前年同期比では増収となったものの、前四半期比では10%以上の減収となり、足元では業績が減速していることが確認されました。同社の最高財務責任者が「モバイル製品の需要が減少している」と発言したこともあり、日米のハイテク株にとってはマイナス材料ととらえる投資家も多いことでしょう。

今後に向けたリスク事項を洗い出す

日本の株式市場において、最も影響力を持つのが海外の投資家ですが、ここのところ彼らの日本株買いが目立つようになりました。

今年に入ってからは日本株を売る勢力として目立っており、1月から11週連続で日本株を売り越していましたが、3月下旬からは3週連続で日本株を買い越しています(下図)。当然のことながら、この動きは日本株の底堅さの一因となっているでしょう。

ここ最近の投資家にとっての日本株市場におけるリスク事項を洗い出してみましょう。(1)シリア問題や北朝鮮などの地政学リスク、(2)財務事務次官の辞任や内閣支持率の低下などの政局リスク、(3)日米首脳会談、辺りがすぐに挙がるかと思います。

(1)については、最悪のシナリオである米ロの軍事衝突が回避され、現時点ではシリアへのミサイル攻撃の影響は限定的であるという見方が大勢を占めています。

また、北朝鮮問題については、核実験とICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験中止の表明がなされたことや、米CIA(中央情報局)長官が訪朝したことにより、北朝鮮をめぐる緊張は一旦緩和されています。

(2)は、特に海外投資家が気にする話題です。野党が麻生太郎・副総理兼財務相の辞任を要求しているものの、現時点では特に自民党政権下における政策運営に大きな影響はなく、過度に政局リスクを意識する必要はないとの声を多く聞きます。

(3)については前述の通り、大きな問題もなく通過しました。

この後の日経平均の方向感は?

目先についてですが、当然一番の注目は決算になります。ただ、せっかくですので、その他のイベントについても簡単に触れておきたいと思います。

26~27 日には日銀の金融政策決定会合が開催されます。2 期目に入った黒田東彦総裁の下で開催される初めての会合となりますが、政策自体は現状維持で特にサプライズもないと予想します。また、26 日には欧州中央銀行(ECB)の理事会も開催されますが、こちらも政策金利は据え置きという市場予想になっています。

また、27 日に韓国と北朝鮮との軍事境界線にある板門店で「南北首脳会談」が行われます。こちらも特に大きなサプライズはないと考えます。6月上旬までに行われる米朝首脳会談に向けて、両国でどのような着地にするかを話し合うのがメインとなるでしょう。

このように、これまで懸念されていたポイントがそれぞれ、いったんは落ち着き、目先も大きなイベントが見込まれない中、海外投資家が日本株を買い越しており、年初からの円高傾向も足元では一服しています。決算発表の結果、好業績企業を中心に買いが入り、全体としては改めて2万3,000円台を狙う動きになっていくかと思います。

ただし、国内の政局リスクには引き続き不透明な部分が多く、月末からはゴールデンウィークに入ります。方向感としては上を見つつも、大きく動くというよりは、モミ合いながら上昇していく展開になるとみています。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)

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