2018.05.9

8年連続増益へ、「大和ハウス」の多角経営がスゴいワケ

何が他の多角化企業と違う?

8年連続増益へ、「大和ハウス」の多角経営がスゴいワケ

読者の皆さんは「ダイワハウス」にどんなイメージをお持ちでしょうか。

女優の上野樹里さんを起用したテレビCMはかなりのインパクトですから、賃貸仲介の会社というイメージでしょうか。タレントのリリー・フランキーさんと女優の深津絵里さんのCMは一戸建て住宅なので、ハウスメーカーのイメージでしょうか。

ダイワハウスの正式社名は大和ハウス工業です。社名に「ハウス」と入っている通り、ハウスメーカー、それも大手の一角ではあるのですが、実際には実にいろいろなことをやっている会社なのです。

そんな同社が5月10日、2018年3月期決算を発表します。過去9ヵ月累計の進捗は年間計画を上回る伸びを示しており、従来予想を超過した着地も見込めそうです。

日本企業の事業多角化というと失敗例が多いという印象ですが、なぜ大和ハウスはうまくいっているのでしょうか。その秘密に迫ってみます。


マンション分譲でも大手

大和ハウスの事業展開は多岐にわたります。個人対象の一戸建ては、プレハブだけでなく注文住宅も手がけていますし、土地を有効活用したい地主向けにアパートや商業施設、倉庫も作っています。

マンションデベロッパーとしても大手です。不動産経済研究所が居住用マンションの発売戸数を事業主別にランキング形式で発表しているのですが、大和ハウスは毎年5~6位に入っています。

大和ハウスよりも上位は、三井不動産、三菱地所、住友不動産、野村不動産など大手の総合不動産会社が常連です。首都圏では大和ハウスの分譲マンションはあまり見かけないので意外に思われるかもしれませんが、同社は地方に強く、3大都市圏以外の地方での供給が多いのです。

祖業はプレハブ倉庫建設業

なぜ大和ハウスは地方に強いのでしょうか。そこには、この会社の「祖業」が深く関わっています。

大和ハウスの創業者・石橋信夫氏は、奈良の材木商の五男です。家業を継ぐ立場になかった彼が、創業にあたって考案したのがパイプハウスでした。建材を規格化・工業化し、あらかじめ工場で製造しておいて、建設現場に持ち込むのです。

短時間で簡単に建てられるので、国鉄の駅や官公庁の小規模な倉庫向けに大ヒット。農協の選果場、小さな缶詰工場向けにも販路が広がった結果、全国の農地の所有者から土地の有効活用の一環で、アパート建築を依頼されるようになりました。

アパートは建てれば入居者を募集しなければならないので、賃貸仲介も請け負うようになります。それが上野樹里さんのCMでおなじみの「D-room」のルーツです。全国津々浦々にまで広がる支店網は、全国の地主さんとの太いパイプの構築にかなりの効果を発揮しています。

ちなみに、ハウスメーカーとしての原点もパイプハウスです。戦後のベビーブーム期に誕生した子供たちが就学年齢に達すると、学校の校舎不足が深刻化しました。このため、パイプハウスの技術を応用して、校庭に簡単に建てられるプレハブ校舎を開発したのです。

個人向けには、庭先に建築確認申請なしで建てられる子供部屋「ミゼットハウス」を発売。当時はちゃんと子供部屋がある一般家庭は少なかったので、これもまた大ヒット。これにキッチンやバス、トイレを付けてプレハブ住宅が誕生したわけです。

物流でAIを駆使

大和ハウスは5月10日に2018年3月期決算を発表します。会社予想の着地は売上高が3兆7,500億円(前期比6.7%増)、本業の儲けを示す営業利益3,250億円(同4.8%増)ですが、直近9ヵ月(2017年4~12月)の進捗は売上高が前年同期比7.2%増、営業利益は同20.4%増という状況なので、利益は会社予想を大幅に上回って着地する可能性が濃厚です。

ちなみに、既存の会社計画のままでも、営業利益は8年連続の増益となる見通し。しかも、直近9ヵ月と変わらない増益ペースが年間でも維持できれば、8年連続の2ケタ増益を達成することになります。

それでは、大和ハウスはどの事業で利益を稼ぎ出しているのでしょうか。賃貸住宅事業と商業施設事業、それに物流倉庫などの事業施設事業が同社の3本柱。いずれも地主さんの資産有効活用をサポートする事業です。この3事業で営業利益全体の8割を稼ぎ出しています。

4月には、ファッション関連企業の物流を一括して請け負うサービスも始めました。これまでは地主さんから物流倉庫の建設だけを請け負ったり、大和ハウスが自前で物流倉庫を建設・保有して賃貸したりしてきました。

こうした事業では棚を借りた顧客は自分で配送の手配をしていたわけですが、今回はその部分も含めて大和ハウスが請け負うサービスを始めたわけです。ピッキングや搬送などの作業の大部分はロボットを使い、荷主から送られてくる配送予定数をAI(人工知能)で分析、季節ごとに必要な商品の需要予測までするそうです。

大和ハウスは今年の年明けから流し始めたCMで、俳優の役所広治さんに「ダイワハウスがAIで物流の未来を変える」と歌ってもらい、“所信表明”をしています。大手デベロッパー顔負けの多角化ぶりですが、いずれもルーツは祖業であるところに、この会社の強みがあるのかもしれません。

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