輸出関連株が“円高でもあまり売られなかった”理由

株価のベースはやはり「業績」?

輸出関連株が“円高でもあまり売られなかった”理由

株価は為替レートの影響を受けることがよくあります。その中でも輸出関連銘柄は、円安になると買われ、円高になると売られやすいと言われています。そして為替レートが動くたびに、為替感応度の高銘柄が話題になります。

5月も前半に円安が進みましたが、後半は円高となり、日経平均株価も下がりました。通常であれば、輸出関連銘柄が一番売られるパターンのはずですが、業種別インデックスを見ると日経平均と同じぐらいの下落率に留まっています。どういうことでしょうか。


5月は前半上昇も最後に円高で下落

まずは、ここ2、3ヵ月の株価推移をおさらいしておきましょう。3月に米政権による鉄鋼・アルミの輸入制限措置や、中国に対する制裁関税が発表されたことで市場不安が高まり、為替が1ドル=104円台の円高となり、日経平均も下落しました。

その後もシリア情勢悪化や米政権のイラン核合意離脱などで原油供給懸念が高まり、原油価格が上昇しました。一方で、米中貿易摩擦や米朝首脳会談をめぐる懸念は、一進一退しつつも徐々に安心感が回復。4月は1ドル=109円台、日経平均22,000円台まで回復しました。

5月に入ると安心感がさらに回復し、企業の決算発表も増益決算が多く堅調だったことで、円安と株高が進みました。ところが、米朝首脳会談の中止発表、米政権の自動車と同部品への追加関税の検討開始、さらにイタリアの政局不安と欧州景気減速懸念からユーロ安となり、株価は再び下落となりました。また、産油国の減産観測から原油価格も下落しました。

円高でも輸出関連株は平均並み

下表は東証業種別株価指数の変化率比較です。日経平均終値の5月ピーク(5月21日)を基点に、「4月末→5月21日」と「5月21日→先週末(6月1日)」を比較してみました。一般的には33業種区分の指数が使われることが多いですが、単純化するためにTOPIX-17シリーズを用いました。

これを見ると、前半に下位だった業種の多くが後半に上位となり、前半に上位だった業種の多くは後半に下位となっています。

例外は化学と銀行ですが、化学は原油価格下落が採算改善に直結しやすい業種です。銀行は保険ともに、下落した日米の長期金利やイタリア不安で下落した欧米の銀行株に連動しやすいことを考えれば、自然な動きに見えます。

自動車も比較的下位のままですが、米政権が鉄・アルミと自動車・同部品に輸入関税を検討していることから、鉄・非鉄と自動車は敬遠されやすいと考えれば説明がつきそうです。

私が注目したのは電機・精密です。前半10位、後半7位ですが、騰落率はほぼ日経平均と同じです。円高局面なのに、大きくは売られていません。

「1ドル=106円でも増益」が評価された?

これには理由があります。日本経済新聞が集計した3月期決算企業の2019年3月期会社予想最終損益は製造業0.5%減、非製造業4.4%減ですが、電気機械は22.5%増、精密機器は2.0%増です。

この業種には、世界的に好況が続く半導体関連産業、工場自動化の需要が急増している産業用ロボット、スマートフォンやIoT(モノのインターネット)に加え、自動車用電子部品の採用増加など数多くの用途で需要が拡大している電子部品のような、好調な企業が多く含まれているのです。

一方、他の主要業種では、自動車20.7%減、通信27.5%減、化学1.1%減、機械8.1%増、小売15.7%増。集計にはありませんが、銀行も全体では減益予想です。

今回は「円高=輸出産業売り」という単純な図式ではないようです。為替レートよりも、今期増益予想を示した業種が評価されていて、売られても押し目買いが入るなどがあり、相対的に日経平均より売り込まれることが少ないと考えられます。

そして、同じ日経新聞集計による主要企業の会社予想前提レートは1ドル=106.7円。つまり、現在の水準よりも円高です。会社予想ベースでは、108~109円の円高でも減益にはならないことになります。そうであれば、なおさら売る必要はないと考える投資家は多いのではないでしょうか。

(文:松井証券 ストラテジスト 田村晋一)

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