はじめに

6月はサッカーのワールドカップが開幕するということでテレビでも少しずつ盛り上がりを見せています。しかし、個人投資家にとって6月といえば、株主総会のシーズンでしょう。

今年も非常に多くの上場企業が今月下旬に株主総会を開催します。今回は、株主総会について勉強しつつ、個人投資家が何に注目すべきか、まとめていきます。


そもそも株主総会って何?

日本には上場企業だけでなく、未公開の企業もカウントすると、200万以上の株式会社があります。株式会社は株主のものであり、株主は主に2つの権利を持っています。「自益権」と「共益権」です。あまり難しい話はせず、簡単にこの2つの権利を説明してみます。

自益権とは、会社から配当をもらえる権利です。一方、共益権とは、株式会社の重要な意思決定に参加できる権利です。つまり、株主総会における議決権を持つことによって、株式会社の重要な意思決定に参加できるのです。

株主総会には2種類あり、「定時株主総会」と「臨時株主総会」があります。今回取り上げているのは前者です。

会社法では、議決権を行使できる株主が確定できる基準日から、3ヵ月以内に定時株主総会を開くよう求めています。日本では3月期決算の企業が多いため、基準日を決算期末と同じ3月末に設定し、その3ヵ月後の6月末に定時株主総会を開催するケースが多くなっています。

株主を大事にし始めた企業たち

しかし、慣例として、6月の最終営業日の前営業日(当該日が月曜日である場合は前週の金曜日)に株主総会を開催する傾向にありました。これだと、複数企業に投資している個人投資家は、出席する企業を1つ選ばなければいけません。そのため、株主を大事にしてくれという意見が多く、企業もその声に応えようとする動きが目立ってきました。

下図を見てみると、2000年時点では80%以上の企業が6月の同日に株主総会を開催していましたが、直近では30%まで集中日が分散されるようになりました。

また、昨年はフードビジネス業界を地盤とする業務用化成品メーカーであるニイタカが、猛暑の時期の株主総会を避けるために定款変更をしました。同社は5月末決算のため、通常は8月に株主総会となっていましたが、猛暑やお盆休みを考慮したようです。

高級喫茶店「椿屋珈琲店」などを手掛ける東和フードサービスも昨年、株主が有価証券報告書をじっくり読み込める期間を長く取り、株主総会で経営陣と株主の対話を促進すべく、定款を一部変更し、議決権行使日をずらしました。

自社製品や金券がお土産になる企業も

以上が株主総会の概要とこれまでの変遷です。それでは、実際に個人投資家が参加した時に、どこがポイントになるのでしょうか。

やはり、当日もらえるお土産やイベントなど企業のサービス内容がポイントの1つでしょう。食品や外食の企業は自社製品やお食事券をプレゼントするケースも多いため、非常に人気があります。また、株主総会後に懇親会を開催し、食事ができたり、その企業の役員と話ができる企業もあります。

株主優待や株主総会でのお土産も込みで投資の利回りを考える個人投資家もいます。株価やチャート、企業業績だけでなく、こうした部分にも注目して投資先を見つけてみてもいいかもしれません。

ただし、このようなことはあまり書かないほうが上場企業にとってはいいのかもしれません。議決権であれば、保有している株数が多ければ多いほど意見する力を持つことができますので、言い方を変えれば、最小単元の株数しか保有していないのであれば、ある意味では議決権は持っていないに等しいとも考えられます。

しかし一方で、最小単元株数保有者であろうと、筆頭株主であろうと、株主は株主ということになります。つまり、株主の数だけが増えすぎてしまうと、企業側は株主総会の際に大量のお土産を準備しないといけないのです。

最近では、ブログなどでお土産の内容などがシェアされるため、株主総会でお土産だけもらって帰る人や、お土産のためだけの列ができたりと、従来の目的とは違う状態になってしまっています。そのため、お土産を廃止する企業も出てきています。

出席者だけが得られる投資材料

それ以外のポイントとしては、やはり会社の代表の話が直接聞けることでしょう。有名どころでいえば、ソフトバンクグループの孫正義社長の話を聞きたいということで同社の株式に投資している個人投資家の方もいるでしょう。

ただ一方では、企業名は知っているけど社長の名前は知らないという企業も数多くあるかと思います。実は、このような企業こそ面白かったりもします。近年ではブログで株主総会の内容を文字起こしする個人投資家もいるので、実際に参加する前に、いろいろとインターネットで調べてみてもいいかもしれません。

非常に細かいところまで調査したうえで質問をする個人の株主もいるため、想定していないような質問が出てきた際の企業側の対応も、1つの投資尺度になりそうです。

あらかじめ準備していた想定問答との差を見れば、経営陣がいかに日頃から自社の経営に関心を持って接しているかも判断できるでしょう。こればかりは現地に直接出向いた個人投資家だけが手に入れられる重要な投資情報かと思います。

昨年のバンダイナムコホールディングスの株主総会では、会場に同社の持つIP(知的財産)紹介パネルがありました。アンパンマン、プリキュア、仮面ライダー、妖怪ウォッチ、ドラゴンボールなど、子供のいる親からするとすごいラインナップだと驚いたはずです。

このように、株主総会に参加することで、その企業の良さを改めて認識できることも株主総会に参加するメリットかもしれません。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)

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