2018.06.22

パルコがCAMPFIREに“ラブコール”を送った理由

資本業務提携の舞台裏

パルコがCAMPFIREに“ラブコール”を送った理由

パルコのラブコールから生まれた相思相愛は、日本のエンターテインメント業界をさらに進化させるのでしょうか――。

ファッションビル運営大手のパルコは6月19日、クラウドファンディング事業を手掛けるCAMPFIRE(キャンプファイヤー)との資本業務提携を発表しました。これまでパルコが単独で運営してきたクラウドファンディング事業を両社で共同運営するというのが、提携の主眼です。

同日に開いた共同会見で、パルコの牧山浩三社長(上写真の右から2人目)は今回の提携話は同社から持ち掛けたものだと明かしています。株式の取得にも踏み込んだ業務提携。自社で展開していたサービスを共同運営に踏み切る背景には、どんな狙いがあるのでしょうか。


クリエイターを手厚くサポート

今回の提携による最初の果実は、パルコの購入型クラウドファンディングサービス「BOOSTER」を7月26日から共同で運営するという点です。

このサービスは、パルコが2014年にスタートさせたもの。新しいアイデアを実現させたい個人や組織(プロジェクト実行者)が、サービスを経由して多数の支援者を募ることができます。

支援者は資金提供の見返りに、そのアイデアを形にしたモノやサービスを受け取れます。サービス利用はクリエイティブ・コンテンツ領域が多く、直近1年間の流通額は1億円を超えました。

今回の提携によって、BOOSETRを利用するプロジェクト実行者には、パルコやCAMPFIREが持つエンタメ領域の取引先を紹介してもらえるほか、パルコ実店舗での販売促進機会提供、プロジェクト実行時の運営オペレーション代行といった恩恵を享受できます。

さらに、情報発信もパルコとCAMPFIRE双方で行うことで、幅広い層への拡散を狙います。「業界随一の手厚いサポート」と、パルコが自負するのもうなずける内容です。

今回の提携に踏み切るにあたって、両者は昨年12月に2つの案件で試験的な連携を実施しました。この過程で共同運営の効果検証や社員間の交流を深め、両社のビジョン・企業風土の相性を確認してきたといいます。

パルコの泉水隆常務(冒頭写真の右から1人目)は「(両社は)企業のテーマや従業員の雰囲気がとても似ている」と相性の良さを強調しました。

単独でのスケールアップに限界

パルコがクラウドファンディング事業に取り組み始めたのは2011年までさかのぼります。自社の社会的役割であり独自性でもある「インキュベーション」を体現する事業として、新しい才能を発掘することでソフトコンテンツ事業を拡大させるという戦略を掲げたのです。

2017年に発表した中期経営計画では、2016年度に営業利益の87%を占めた店舗事業の比率を2021年度には65%まで圧縮。その一方で、商業不動産プロデュースとソフトコンテンツ事業を増やす、というビジョンを出しています。

牧山社長は2011年当時を振り返り、「参加したユーザーや携わる社内メンバーから、次々に案が出てきた。非常に芽があるプロジェクトだと感じた」と語ります。

しかし、事業に手ごたえを感じながらも、クラウドファンディングサービスが乱立する中、SNSなどを使った情報発信に苦戦を強いられ、パルコだけではスケールアップができなかったといいます。

そこで目を付けたのが、CAMPFIREでした。BOOSTERの現在の利用者はパルコの店舗客層に近いため、国内最大のクラウドファンディング事業者であるCAMPFIREと組めば、新しい利用者層やwebマーケティングのノウハウを取り込めると踏んだのです。

新しい融資サービスも検討

では逆に、ラブコールを受けたCAMPFIRE側の狙いはどこにあるのでしょうか。

今回の事業提携では、BOOSTERの共同運営だけでなく、将来的な新規金融サービスの開始に向けた共同検証を行うことも発表されました。クラウドファンディングでの実績とパルコのリアル店舗でとれるデータを活用し、新しい融資サービスなどを両社で検討したいとしています。

CAMPFIREは「資金集めの民主化」を企業ミッションに上げ、クラウドファンディングにとどまらず、すでに「CAMPFIREレンディング」という融資サービスも開始しています。今回の提携によって、同社は全国に広がるパルコの実店舗で得られる購買履歴などのビックデータ活用へ足がかりを得たことになります。

「僕は会社をやる以前は絵を描いていて、当時からパルコのクリエーターを支援する姿勢に憧れていた。今こうして一緒にできるのをうれしく思います」。パルコの牧山社長から“思い”を受け取ったCAMPFIREの家入一真社長(冒頭写真の左から2人目)は、このように答えました。

まさに経営資源が補完関係にある両社。この相乗効果が日本のクラウドファンディングをさらに活性化させるのでしょうか。

(文:編集部 瀧六花子)

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