はじめに

2018年も、あと数日で下期に突入します。マーケットを見ていると、毎年、何かしらのイベントが起きて、相場が大きく動いていきます。過去のイベントをしっかりと学習することが、将来の投資成果をより良いものにすると思います。

今回は1つの節目として、今年上期を振り返りつつ、下期のポイントをまとめてみます。


最高のスタートを切った日経平均

2018年の日経平均株価は前年の上昇トレンドを引き継ぐ形で、年始から上昇を続けました。1月23日には同月18日に付けた取引時間中の昨年来高値2万4,084円を上回り、終値ベースでも26年ぶりに2万4,000円台を回復して取引を終えました。

この日は前日に米上院が暫定予算案をめぐる行き詰まりを打開し、政府機関再開への道が開かれたことを好感し、米国株式市場において主要株価指数が軒並み上昇しました。この流れを受け、日本株式市場でも買いが先行し、不動産株や金融株などを筆頭に幅広い銘柄に買いが入りました。

また、前日に米国のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が一時最高値を更新したことが好感され、半導体関連株も物色されていました。さらに、昼過ぎに日本銀行が金融政策決定会合を終え、超低金利政策を継続することと、市場で観測されていた緩和縮小観測について牽制したこともあり、一段高となりました。

米国の金利上昇で株式市場が急変

このまま2万5,000円台へ向けて上昇するかと思われましたが、2月に入ると株式市場の景色は一変します。

2月2日に発表された米国の雇用統計では、非農業部門の雇用者数は前月比20万人増と市場予想以上に増えました。また、物価動向を占う材料とされている平均時給は前年同月比2.9%上昇となり、上昇率は2009年6月以来の大きさとなりました。

これを受けて、米国の利上げペースが速まる可能性が意識され、長期金利の指標となる10年物国債利回りが一時2.85%と、ほぼ4年ぶりの水準まで上昇。これにより、相対的に株式の割高感を意識する投資家が増えました。

米国株式市場では雇用統計発表以降、連日の大幅続落となります。2月5日にはNYダウ平均株価は一時1,600ドル近く下げ、日中の下げとしては過去最大を記録。最高値からの下落が加速する形となり、2011年8月以来の大幅な下落率となりました。投資家の不安心理の目安とされるボラティリティ・インデックス(VIX指数)は2015年8月以来の水準まで上昇しました。

2ヵ月で3800円弱下落した日経平均

日本の株式市場もこの流れを受け、2月6日、日経平均は前日比1,071円安で取引を終え、昨年10月以来の安値水準まで急落しました。東証1部の98%の銘柄が値下がりし、東証33業種でみると全業種が下落。売買代金は5兆6,000億円を上回り、2013年5月以来4年9ヵ月ぶりの水準まで膨らみました。まさに、売りが売りを呼ぶ状態でした。

その後は日米ともにボックス圏内での値動きを1ヵ月ほど続けましたが、3月22日にトランプ大統領が中国製品に新たな関税を課す制裁措置を正式発表したことを受け、米中貿易摩擦が激化するとの懸念が強まり、NYダウが700ドルを超える下げとなりました。

外国為替市場においても1ドル=104円台に入る円高となったことから、翌日23日に日経平均は一時1,000円超の下げ幅を記録。約5ヵ月ぶりに2万1,000円台を大きく割り込んで取引を終えました。この2ヵ月で日経平均が3,800円弱も下落することとなりました。

2018年下期のポイント

3月下旬の急落後は、米中貿易摩擦や米朝関係など、さまざまな懸念事項がいったんは後退する形になり、日米ともに株価指数は緩やかな上昇傾向を続けています。ここまで上期を振り返ってみましたが、下期は何がポイントとなるでしょうか。

日本の株式市場は、米国をはじめとする海外の影響を大きく受けます。下期に注目すべき点としては、(1)米中貿易摩擦、(2)原油価格の上昇基調の継続、(3)米国の金融政策(利上げペース)、(4)欧州の金融政策、(5)地政学リスク、(6)米国の財政刺激策が米ドルや長期金利に与える影響、などが挙げられます。

ただし、日本単体で考えると、マクロ的な観点からいえば、2018年1~3月期の成長率が9四半期ぶりのマイナス成長となったものの、4~6月期以降は米国を筆頭とした好調な海外経済を背景に、輸出や設備投資が堅調を維持することでプラス成長に回復すると考えられます。

ミクロ的な観点でいっても、日本企業は2018年度も前年度を上回る経常増益が見込まれます。そのため、日本単体では下期も株式市場は堅調な展開が予想されます。

また、日本のデフレ脱却がかなり厳しいものとなっている一方で、米国では計画通り利上げを順次行っていくという状況です。日本の株価に大きな影響を与えるドル円相場についても、両国の金融政策が反対になっていることを考えると、日米金利差の関係上、極端な円高にはなりにくいと思われます。これも下期の日本株の堅調な展開の追い風となるでしょう。

年末の日経平均は2万5000円予想

一方、米国では11月に中間選挙が行われます。現在は上下両院とも共和党が過半を占めていますが、米国の調査会社の結果などを見ていると、上院は共和党有利であるものの、下院については共和党、民主党どちらが勝利してもおかしくない状態です。

現時点ではドナルド・トランプ大統領の不支持率が支持率を超えているとの声もあります。仮に民主党が下院で過半を取るようなことがあると、事実上トランプ政権はレームダック化し、来年以降の景気対策の実現性が怪しくなります。

しかし、現時点で上記のような状態であるため、逆説的にいえば、投票日に向けて徐々に現在の高圧的な保護主義的な姿勢は軟化していくと思います。足元では米国株式市場も軟調な展開が続きますが、こちらも米中貿易摩擦問題の落ち着きとともに、再び上昇トレンドに回帰すると考えます。

よって、以上の点から、日経平均株価は2万5,000円に向かって緩やかに上昇していくシナリオを持っています。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)

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