森長官の置き土産?金融庁が打ち出す「大変革」の本気度

改革すべき中心課題は2つ

森長官の置き土産?金融庁が打ち出す「大変革」の本気度

7月4日、東京・霞が関にある金融庁内の記者会見室は、いつになくざわついていました。この日の午後に開かれる予定の記者向けブリーフィングのタイトルが、かなりセンセーショナルなものだったからです。

「金融庁の改革について―国民のため、国益のために絶えず自己変革する組織へ―」

いったい金融庁は何を改革するというのか。異例の任期3年を務め、近く退任すると報じられた森信親長官と、何か関係があるのか――。報道陣はさまざまな想像をめぐらせていました。

しかし、実際に金融庁から公表された内容は、さまざまな意味で報道陣の想像を裏切るものでした。同庁が打ち出した改革の中身とは、どんなものだったのか。そして、このタイミングで公表した理由は何なのか。資料とブリーフィングの内容から、ひも解いてみます。


民間の知見で外部環境の変化に対応

今回、金融庁が公表資料の中で「改革すべき中心課題」として挙げたのは、「ガバナンス」と「組織文化」の2つでした。

前者については、金融を取り巻く環境変化に遅れることなく適切に対応していくため、「民間の最先端の知見を取り入れること」と「常に外部からの批判を受け止め改善を図ること」を方針として示しました。

実際、仮想通貨を例にとっても、適切な検査・監督には先端テクノロジーへの理解が不可欠です。金融業界が加速度的に変化していく中、このような新しい技術については、庁内にない専門知見をいっそう活用することによって、時代に即した金融行政を迅速に行っていくとしました。

「“大企業病”のようなものがあった」

一方、後者については、衝撃的な文言が並びました。「いわゆる“大企業病”のようなものがあった」としたうえで、金融庁で働く全職員が「国のために貢献したい」「成長して自分の価値を高めたい」と常に意識できるようにするために、人事評価だけでない組織文化の改革を行うというのです。

具体的には、まず「国民のため、国益のために働く」といった金融庁職員としての具体的な行動指針をまとめ、これを人事評価の対象とすることで浸透を図ること。さらに、課室長や局長といった管理職に必要とされる能力を明文化し、公正な人事を実現するために360度評価や有識者会議に参加する外部専門家からの評価も参考にする、としています。

公表された幹部級職員の能力要件表には、“適正でない”とみなされる行動例まで記載される徹底ぶりです(下表)。国家公務員法や人事院規則の枠を逸脱しないことが前提としながら、「幹部の年次序列逆転もありうる」とも言及しました。

なぜ今、改革を表明したのか

金融庁はこの夏、創設から20年の節目を迎えます。前身である金融監督庁は、1998年6月に当時の大蔵省(現:財務省)から金融機関に対する検査・監督機能を分離させる形で発足しました。その後、2000年に大蔵省の金融制度の企画立案機能を吸収し、現在の金融庁になりました。

以来、不良債権処理や金融商品取引法の施行対応、世界規模での金融危機への対応など、金融政策の所管官庁として、日本の金融システムの安定と利用者保護を命題に、時に批判を受けながら政策を担ってきました。

しかし、金融環境が激変する中、従来の厳格な監査を主軸とした政策では日本経済の発展が行き詰まるとして、2015年に就任した森長官の下、過去の政策を否定することにもなりかねない、積極的な改革を実施してきました。

今回の改革案も、昨年11月に金融庁が公表した「平成29事務年度金融行政方針」において打ち出していた組織改革について、具体的な取り組みにブレークダウンしたもの。同庁では改革担当部門として「組織戦略室」を設け、昨年夏より民間企業、有識者へ幅広くヒアリングを実施。庁内でも、若手から幹部級まで意見聴取したといいます。

「理想は北極星のように高く」

「改革の結果として、質の高い金融行政の提供につながると考えている。一朝一夕でできるものではないが、理想は北極星のように高く、不断に改革を進めていきたい」(金融庁)

森長官の下、さまざまな金融行政改革を断行してきた金融庁。そのけん引役の退任がささやかれる中、今度は自らの足元を改革しようとしています。

発足から20年。森氏の置き土産を“宿題”として、時代に即した行政機関へ生まれ変われるか。その真価が試される局面を迎えています。

(文:編集部 瀧六花子)

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