はじめに

最近はAI(人工知能)を使った株価予測や投資モデルが登場していますが、これらを使うには、AI予測の特徴を知っておく必要があります。とはいえ、こんな話題だと「自分にはちょっと難しいかも」と思ってしまう方もいるかもしれません。

しかし、これから私たちの周りでAI化が進んでいきます。投資の世界も同様です。今回はAIの投資モデルを整理して、どのような流れで予測値が出てくるのか、考えたいと思います。


得意分野が異なるAIの現状

専門家でない限り、AIの構造よくわからないのは普通です。ただ、囲碁の世界でAIが人間に勝ったとか、AIが人間の能力を超えて、日々進化しているニュースを聞くと、すばらしく精度が高い株価予測もできるだろうと思う人も少なくないでしょう。

確かに、AIは人間と違って、休みなく24時間働けますし、忘れることもありません。ですから、記憶された大量データから、たとえば似た相場のパターンを選ぶなどの判断はAIが最も得意とする分野の1つです。とにかく知識が豊富です。しかし、人間のような意識を備えて、映画『ターミネーター』のように万能なAIは未だ登場していません。

最近はゴミの分別を行うAIが登場しています。ゴミの中からペットボトルを取り出すというようなものです。事前に、数十万枚のペットボトルの画像を学習しておくと、ペットボトルを選別することができるようになるのです。休みなく働くし、スピードも速く、ゴミから資源回収の効率を高められます。

しかし、このペットボトル分別AIには車の自動運転はできません。囲碁が強いわけでもありません。AIにはそれぞれ得意分野があるということを念頭に置く必要があります。

AIの投資手法は4タイプ

投資の世界のAIも同じです。万能なタイプで株価予測を行うAIは登場していません。それぞれの得意分野から株価を予想しています。ですから、まずはどんな分野でAIが予測しているかを知っておくことが重要です。

タイプ別の得意分野を整理したのが下図です。ここでは、縦軸と横軸を使って、それぞれのAI手法がどこにあるのかの位置づけしています。

まず、縦軸について見てみましょう。縦軸は「AIが学習する情報ソースによる分類」を示しています。下側は政府が発表する経済統計、上側は株価など市場で決まるデータの軸です。

下側の代表的なものとして、内閣府が発表するGDP(国内総生産)があります。GDPの伸びが大きれば景気が良く、将来の株価も堅調なことが期待されます。AIは、その伸びの大きさがどの程度、株価に影響するのかを数字でとらえます。

これは図1の❶に分類されます。他にも、企業の利益の伸びなどの財務情報がどの程度、株価を押し上げるかをとらえるAIもあります。

また、近年はAIと並んでビックデータが注目されています。企業活動のいろいろな分野でIT化が進んだことで、たくさんのデータが取れるようになりました。しかもコンピュータ性能の向上で、こうしたデータの分析が可能になったのです。

たとえば、皆さんがお店で買い物をするとき、何が買われたかをチェックして集計されたPOSデータがあります。これをAIが分析することで、どの商品が売れ始めたかを直ちにつかむことができるため、企業の売り上げの伸びをいち早くとらえて、将来の業績や株価の予測につなげることができるのです。

他の3タイプはどうなっているのか

次に、図1の❷の部分をお話ししましょう。ここは、いろいろな種類のデータを使わず、過去の株価データに絞ったAIモデルがあります。株価だけしか使わないと言われると、一見、単純なものと思ってしまうかもしれません。しかし、そうでもありません。

たとえば、過去の株価の暴落前の株価の動きを何万個も学習させて、足元の株価が似ているかどうかを判断し、暴落を検知するAIもあります。さらに、株価の終値を使うのではなく、もっと間隔を短くして、5分おきや1分おき、あるいは秒単位のデータを使ったり、買いや売りの注文数のデータを使ったAIモデルもあります。

ここまで図1の右側のお話をしましたが、今度は左側のお話です。右と左の違いは、数字の情報を分析しているか、それとも文字などか、です。

近年は技術の進展によって、数字だけでなく、文字や音声、そして画像まで解析できるようになりました。これは図1の❸で整理できます。ニュースを読み込んで足元の景況観を判断したり、ツイッターなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)を活用して企業評価や株価予測をするAIも登場しています。

仕組みの基本はシンプルです。たくさんのニュースの中で、企業や経済にとってポジティブな意味の単語の数がネガティブ単語数を上回っていると、景況感が良いなどと判断するのです。

文字だけでなく、音声情報も扱うこともできます。スマートフォンのアプリでも変換できますが、音声はいったん文章に変換されて使われたりします。さらに進めば、音声を直接、声の強さや弱さなどで解析して、明るい声か、少し後ろめたい声かなどから、経営者の姿勢を判断する試みも見られます。

AIが文字を読むというと、どうやるのだろうと思う方も少なくないでしょう。実は、単語に番号付けしているのです。それぞれの単語に対応する番号があるので、AI上は番号で管理します。

最後が図1の左下の❹です。AIは文字や音声だけでなく、画像判断もできます。

衛星から小売店の写真を撮って、どのくらい駐車しているかをカウントします。駐車台数が増えることはお客さんの増加を意味しているので、売り上げも増えていると予測できます。また、経営者が決算発表するときの動画で撮影して、表情から経営者のスタンスを測り、将来の業績や株価の予測につなげるものもあります。

ここまで長々と説明してきましたが、AI予測に接したら、図1のどこに位置していて、どんなデータ処理をしているかがわかることがとても大切です。

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