SBIも惚れた?「投資ハードルを下げるアプリ」の実力

「FIGS」を1週間使ってみた

SBIも惚れた?「投資ハードルを下げるアプリ」の実力

「力と知識を投資家に届けたい。しかも、簡単でわかりやすく、アクセスしやすい形で」――。7月5日に都内で開かれたスマート投資アプリ「FIGS(フィグス)ローンチ発表会」で、FIGS Inc. Japanのユージン・オングCEO(最高経営責任者)は、こう力説しました。

同社には、ネット証券国内最大手のSBIグループも出資しています。スマート投資アプリとは、どんなものなのか。会見での説明と、ローンチから1週間、実際に使ってみた感触から、その実力を探ってみます。


2300人のアナリスト情報を網羅

世界に先駆けて、説明会と同日に日本でリリースされたFIGS。「ファイナンシャル・イノベーション・ゲートウェイズ」の略称で、「自分自身で投資の意思決定ができるようにサポートすることを目的に、投資を手軽に開始したい人・より投資力を高めたい人に向けたサービス」を謳っています。

より具体的には、機関投資家など“投資のプロ”が使っている手法や情報を、すべての投資家に提供することで、誰でもスマートに投資を始めることができる、という立て付けです。料金は月額1,950円。モバイルだけでなく、デスクトップPCでも利用可能になっています。

FIGSの主要機能は3つ。1つは「FIGSアナリストスコア」です。これはアナリストの正確さを示す独自の指標で、世界の7市場をカバーする約2,300人のアナリストを網羅しているといいます。

過去15年間のアナリストデータを収集し、実際の株価の推移とアナリストの予測を比較。各アナリストの精度を計算しています。世界のアナリストを対象としたスコアリングは日本初だそうです。

センチメント判断やセクター別分析も

特徴の2つ目は、市況変動に対して、いつ他人が恐れを感じたり、貪欲なのかを教えてくれる「FIGSセンチメントスコア」です。この数値が高いと市場が貪欲(=割高)、数値が低いと市場が恐れを感じている(=割安)状態にあることを示しています。

スコアは、現在の市場と同じ動きをしていた過去の変動パターンを検出し、そのデータを基に今後の市場の動きを予測して、算出しています。日本、米国、香港、台湾、シンガポールの5つの国・地域をカバーしており、日経225では81%の的中率をたたき出したといいます。

3つ目は、どこに投資すべきかを教えてくれる「FIGSリターントラッカー」。日本、米国、香港、タイ、台湾、インドネシア、シンガポールという7つの国・地域を対象に、14のセクター、19の投資テーマについて、今後12ヵ月間でどんなパフォーマンスをするのか、知らせる仕組みです。

これは、アナリストの予想株価の平均値と現在の株価のデータを収集し、これら2つの差を計算し、各銘柄の潜在的なリターンを算出。各銘柄の時価総額の比率を考慮したうえで、セクターやテーマごとの潜在的なリターンを計算するというものです。

外国株情報が成長ドライバー?

現在、国内の大手ネット証券5社の合計口座数は約1000万。FIGSは初年度にこのうちの1%に当たる10万人、2年目には2%の20万人を取り込むことを目標に掲げています。

FIGSでは、これまで個人投資家には「3つの壁」があったとみています。1つが「複雑で理解しにくい投資情報の壁」、2つ目が「プロの情報が、プロだけに伝わる壁」、そして3つ目が「外国株の情報が立ちはだかる、言葉の壁」です。

前述したアプリの3代機能によってこれらの壁を取り払うのが、FIGSの狙い。中でも、成長余地があるとみているのが、3つ目の「言葉の壁」のようです。


FIGSが狙うのは、シンプルで理解しやすいグローバル市場情報

会見で、FIGSジャパンのオングCEOは「日本の友人は、日本語で書かれたグローバルな投資情報が入手できないと言います。FIGSはそういう課題に対応したい」と、抱負を口にしました。

SBI証券の髙村正人社長も「現在、当社の日本株のボリュームは7.3兆円。対して、9ヵ国の外国株は0.4兆円と、18分の1のボリュームです。格差の最大の要因が『情報の壁』。数多ある情報からスマートな情報が見当たらなかったわけです」と言及しています。

つまり、外国の経済情報や投資情報を提供することによって日本人投資家の外国株投資への関心を高め、FIGSのユーザー数を拡大。これをテコに、SBI証券における外国株の取引高も増やしてしまおうというのが、FIGSとSBIが描いている青写真のようなのです。

利用者拡大にはUI改善がカギ

とはいえ、目標に到達するには、まだいくつかの課題があるように見受けられます。たとえば、月額1,950円という料金設定。運用額が大きいとは考えにくい投資初心者が手を出すには、少し高い金額ではないでしょうか。

この点について、SBI証券の髙村社長は「いきなり1,950円の課金ではなく、最初はフリーで入ってもらうのがいいのではないか、とユージンとも話しています。さらに足の長い話では、SBI証券のサービスラインナップに組み込むことも検討しています」と言及。料金設定については、まだ流動的な部分が多そうです。

また、ローンチから1週間使ってみた中では、提供している情報は魅力的な一方、UI(ユーザー・インターフェース)に使いづらさがあるように感じました。

たとえば、「学ぶ」というタブからセクター別のページに入ると、「関連株」というボタンから各銘柄のページに飛べる仕組みですが、このときにグローバルで該当する全銘柄が表示され、日本株だけを抽出することができません。これでは、まだ外国株に興味のない投資家には非常にわかりづらい仕様です。

すでに国内でも「One Tap BUY」や「FOLIO」のように、初心者向けUIに特化した金融サービスが広がっています。また、プロ向けの投資スキルを初心者に提供するという切り口では、「ウェルスナビ」や「THEO」のようなロボアドバイザーサービスが預かり資産を増やしています。

1,800兆円の個人金融資産の取り込みに向けて、すでに激しい競争が繰り広げられている中にあって、FIGSの現状は投資初心者には手が出しづらく、中途半端な印象がぬぐえません。今後飛躍していくには、さらに初心者にわかりやすいUIへのブラッシュアップと、それに伴うUX(ユーザー体験)の改善が不可欠ではないでしょうか。

(文:編集部 猪澤顕明)

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