日本株市場への強気シナリオを維持する“3つの根拠”

2018年後半の投資戦略

日本株市場への強気シナリオを維持する“3つの根拠”

本日からMarket Plusの執筆に参加させていただく、アセットマネジメントOneの柏原延行です。どうぞ、よろしくお願いします。

私は昨年末時点で、(1)2018年には「適温経済・相場」は終焉を迎え、これを悪材料として比較的早い時期にわが国株式市場は安値を取る。そして、その後に、(2)適温経済・相場は終焉を迎えるものの2017年よりも投資環境は改善し、わが国の株式市場は一般的な想定以上に上昇する、と予想していました。

7月10日に米国が新たに2,000億ドル(約22兆円)に相当する品目への制裁関税の追加措置案を公表したことなどを受けて、貿易・知財をめぐる米中の対立、いわゆる貿易戦争が一段と激しくなるとの論調が、各種メディアでは目立つように思われます。

しかし私は、年後半に向けて、わが国の株式市場が上昇するという見方は変更していません。今回は、この予想の理由をご説明したいと考えます。


米金利上昇が映す適温経済・相場の終焉

2017年が適温経済・相場であったことに疑義を抱く方は、少ないのではないでしょうか。

私は、適温経済・相場は(1)安定した経済成長と堅調な企業収益、(2)安定した物価と賃金、(3)安定した金利の3つの要素から成り立ち(熱くも冷たくもなく、ちょうど良く、安定している)、「市場の低い変動性」と「企業の利益成長に見合った株価上昇」をもたらしたと考えています。

しかし、金利安定が2018年初頭には早くも崩れ始めたことは、皆さんがご承知の通りです(下図)。実は米10年国債金利は、1980年初頭から35年以上、ほぼ一貫して低下傾向です。この低下傾向は「規制緩和・競争促進政策」(いわゆる新自由主義)という経済政策を大きな理由とするものと思われます。

米10年国債金利が16%近いことからもわかる通り、1980年代初頭頃はインフレの時代でした。そこに登場したマーガレット・サッチャー英首相などは、「規制緩和・競争促進」という政策を採用しました。

わが国でも、中曽根康弘首相により、たとえば日本電信電話公社がNTTになったように、国の事業が民営化され、競争が促進されました。「規制緩和・競争促進」という経済政策が物価低下圧力として大きく働いたため、金利が低下したと私は考えています。

しかし、政治の流れは大きく変わりました。新自由主義とは異なる保護主義的な経済政策に傾くドナルド・トランプ米大統領に加え、英国やドイツ、イタリアなどでも、保護主義的な色彩のある政治勢力が影響力を強めています。

このため、金利上昇は極めて緩慢ながらも着実に進行すると考えており、これは適温経済・相場の要素である「安定した金利」を打ち砕き、適温経済・相場は終焉を迎えると考えていました。事実、3月に付けたわが国の株式市場の安値は、この材料を反映した動きであると考えています。

適温経済・相場終焉後の投資環境は?

それでは、適温経済・相場が終焉した後の2018年後半には、どのような投資環境が訪れるのでしょうか。

私は、適温経済・相場は終焉するものの、投資環境はむしろ改善すると考えています。しかしながら、安定をキーフレーズとする適温経済・相場が終焉したのですから、投資家の市場に対する信任は時期によって大きく変化し、市場の変動性も大きくなると思われます。

どのような要因が投資環境の改善をもたらすのか。私は以下の3つを考えています。

(1)トランプ政権の減税や財政出動などの経済対策により、今現在ですでに好調な景気や企業収益の伸びが加速すること

(2)景気の過熱にもかかわらず、物価・賃金の伸びが鈍い状況が継続し、この結果、インフレ懸念、および政策金利、長期金利の上昇は限定的なものに留まると考えていること

(3)わが国の企業がお金を使い始める兆しが表れ始めること

株価の上値は想定以上に大きなものになる可能性

現時点での株式市場は、貿易戦争の悪影響を大きく受けていると思われます。11月の米中間選挙の時点で、米中の制裁の応酬が泥沼化し、米国から中国への輸出(大豆など)が困難な状況であれば、共和党の基盤である農業州で選挙に苦戦することにもなりかねません。

したがって、選挙前の10月頃までに貿易戦争が終息方向に向かうシグナルが表れ始め、前述の改善した環境を受け、わが国の株式市場は年後半に向け上昇することを私はメイン・シナリオとしています。なお、「貿易戦争」や「環境改善の要因」などについては、次回以降でご説明したいと考えます。

(文:アセットマネジメントOne チーフ・グローバル・ストラテジスト 柏原延行)

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