はじめに

株式などで資産運用する人はもちろん、そうでない人も経済ファンダメンタルズの状態を把握し、先々を読む必要に迫られる場面は結構あると思います。

大切なのは、ファンダメンタルズに基づくフェアバリューを把握することでしょう。実際の相場などの状況はさまざまな要因でフェアバリューから乖離しますが、座標軸をしっかり持つことができれば、流れに翻弄される可能性は小さくなります。

GDP(国内総生産)統計のような重要指標は経済ファンダメンタルズのチェックに欠かせません。正確なGDP予測は先行きの座標軸になり、誰でも次のGDPは予測できます。


自分でGDPを予測するメリット

世の中には、さまざまなGDP予測が存在します。GDP予測は有名な会社に任せておけば良いという方も多いでしょう。

しかし、最新情報を踏まえて機動的に予測を更新する会社、一度発表したものはしばらく使うという会社など、その実情は各社各様。GDPのような基礎統計を加工して作成する2次統計では、鮮度が何より重要です。

予測の正確性を素人が判断することも難しく、人頼みでなく自分でできる実質GDP予測法を知っているのとそうでないのとでは、将来の座標軸の把握に雲泥の差ができます。

「ボーっと生きてんじゃねーよ!」はNHKのバラエティ番組「チコちゃんに叱られる」の有名フレーズですが、GDP予測に関しても「ボーっと使ってんじゃねーよ!」といえそうです。

そもそもGDPって何?

GDPは国内で産み出された付加価値の合計です。支出面から見た内訳として個人消費、設備投資や輸出などの項目があります。全項目中、一番シェアが大きいのは個人消費です。米国のGDPに占める個人消費のシェアは約7割弱で、日本では約6割弱です。

名目のGDPや個人消費から物価変動分を除くと、実質のGDPや個人消費になります。GDP統計は日米とも四半期データです。

米国の今年1~3月期実質GDP(季節調整済年率)は17兆3,719億ドルで、うち個人消費は12兆0,610億ドル。前期比年率はそれぞれ+2.0%、+0.9%でした。1~3月期GDP最終推定値は6月28日に、翌営業日に5月分「個人所得・個人消費」の月次統計が公表されました。

1~3月分月次実質個人消費の各月データ(12兆0,536億ドル、12兆0,289億ドル、12兆1,009億ドル)の平均値は、前日発表の1~3月期実質個人消費と重なります。しかも、4月分:12兆1,319億ドル、5月分:12兆1,305億ドルまで公表済みです。

米国実質GDP・個人消費を予測しよう

6月分小売売上高は前月比+0.5%、ここから自動車を除くと同+0.4%、6月分消費者物価指数は同+0.1%、このうち食料品やエネルギーを除いたコアは同+0.2%です。仮に6月分の実質個人消費の前月比を+0.2%として計算すると、7月27日公表の4~6月期実質個人消費は12兆1,391億ドル、前期比年率+2.6%となります。

それに実質個人消費のシェアである0.7を掛けると、実質個人消費か実質GDPを押し上げる前期比年率寄与度+1.8%が計算できます。

過去の数字が修正される可能性がありますが、4~6月期実質GDPでは個人消費の前期比年率寄与度が1~3月期から1ポイント超高まるので、他の寄与度が不変なら、4~6月期実質GDPは前期比年率+3%台が予測されます。

日本の4~6月期消費は持ち直しを予測

日本には、米国のように3ヵ月分を足して3で割るとピタリGDPの個人消費に重なる月次の統計はないものの、近い数字になるものはあります。内閣府が「月例経済報告」個人消費の基調判断材料として作成し、ホームページで公表する「消費総合指数」です。

厳密には、個人消費から対家計民間非営利団体最終消費支出を引いた家計最終消費支出に近い指数です。新聞には“ほぼ”掲載されません。

7月10日に判明した5月分を、6月分前月比ゼロと弱めに仮置きし延長すると、4~6月期は前期比で+0.2%、年率換算で+0.6%、対実質GDP前期比年率寄与度で+0.4%になります。

1~3月期で前期比年率▲0.6%と9四半期ぶりマイナス成長になり、7月16日公表のIMF(国際通貨基金)世界経済見通しで日本の2018年実質GDPは下方修正されました。そうした点からも、8月10日公表の4~6月期実質GDPが注目されています。

最大の需要項目である実質個人消費は1~3月期の前期比年率▲0.3%の減少から4~6月期には+0.6%程度以上の増加に転じ、GDPを押し上げる項目になりそうなことが、簡単な計算で誰にもわかります。4~6月期の実質個人消費・GDPの持ち直しを、あなたが半歩先に予測できる意味は大きいといえるでしょう。

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