2018.08.23

SBI北尾氏が発破、「証券大連合」実働フェーズの行方

参加企業は35社から51社に増加

SBI北尾氏が発破、「証券大連合」実働フェーズの行方

「『会して議せず、議して決せず、決して行わず』となるのが一番いけない。必ず成果を生み出していかないといけない。会員の英知を結集して、迅速に成し遂げ、実用化に向けて動き出すのが大事」

今年4月にSBIホールディングス(HD)の北尾吉孝社長が中心となって発足した「証券コンソーシアム」。証券関連業界が一丸となって、業界横断的な研究と共通基盤の構築を目指して、先端技術を活用した新たな金融インフラを検討する目的で設立されました。

その第2回全体会が8月22日に開かれ、3つのワーキンググループ(WG)の方向性とスケジュールが示されました。開会のあいさつに立ったSBIHDの北尾社長は、冒頭のようにコメント。参加企業に発破をかけました。

参加企業数が当初の35社から51社に拡大し、いよいよ実働フェーズに入った“証券大連合”。今後はどのような動きを模索しているのでしょうか。


KYCでは楽天証券が先鞭

130人近い関係者が集まった、証券コンソーシアムの第2回全体会。その中には、いちよし証券やFOLIOといった新旧の証券会社のほかに、NTTデータや日本オラクル、ソフトバンクなど、通信・IT関連企業の姿も見られました。

新規参入企業3社の担当者からあいさつがあった後、これまでに発足している3つのWGの幹事社が進捗状況と今後の方向性、スケジュールなどを報告しました。このうち、最も先行しているとみられるのがKYC(顧客確認)共通化WGです。

説明に立った楽天証券の平山忍常務によると、現在、証券会社が行っているKYCの作業は、口座開設時点の1回だけ。これを顧客の投資のライフステージに応じて、その都度、確認できるようにしていく、といいます。

そのために必須となるのが、KYC業務の効率化と、1つ1つのトランザクション(取引)のコストを下げること。「まずはここに取り組んでいきたい」と、平山常務は意気込みます。


まずは楽天証券が、続いてカブドットコム証券が新システムに刷新する予定

まずは楽天証券が先鞭をつける形で、9月に本人認証(ログイン)システムを刷新。カブドットコム証券も来年1~3月期に新システムに切り替える予定です。こうした先行企業で蓄積されたノウハウをWGで共有し、標準化を進めていくとみられます。

AI売買審査で最大90%の事務効率化

続いて早めに成果が上がりそうなのが、共通事務WGです。こちらは、非競争領域の各種事務を対象として、先端技術の活用によって業務の効率化・高度化を進めていくことを目的としています。

幹事社であるSBI証券の小川裕之取締役は「当WGのテーマは『ファイナンス×テクノロジー』。業務の効率化・高度化を実現して、フィデュ―シャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)に資する形で投資家に還元していきます」と宣言しました。

このWGでは、まず参加証券会社が抱えている課題を洗い出し、優先順位をつけたうえで、参加IT企業から技術的なアドバイスをもらいます。その後の議論で解決の糸口がつかめれば、サブWGを立ち上げ、それぞれの課題を解消していく方針です。


証券会社とIT企業の情報交換を経て、サブWGを立ち上げる意向

すでにサブWGが始動しているのは、AI(人工知能)による売買審査に関するもの。この分野では、SBI証券が昨年8月から実証実験を始めており、これまでに52~90%の事務効率化が図れたといいます。これを標準化し、横展開することで、「業界として意味のある形で結果を導き出したい」(小川取締役)としています。

来年5~6月の実用化を目指しており、「早いタイミングで、参加証券会社にメリットをとっていただく」と、小川取締役は意欲を示します。

個社の成果を横展開できるか

一方、これから議論が本格化していきそうなのがDLT(分散台帳技術)先端実験WGです。証券業務におけるDLTの新しいユースケースを発見し、活用を目指しています。

こちらのWGでは、9月から月イチペースで5回の勉強会を開催。新しいユースケースを模索しながら、期待の持てるものが見つかれば、プロジェクトという形で勉強会とは別進行で走らせていくといいます。

全体会の最後にあいさつに立った楽天証券の楠雄治社長は「やれるところをドンドンやっていき、1社でも成果を出していくことが、コンソーシアム全体が進んでいる証しになる。共通化できるところを協力してやることで、業界全体の信頼が上がって、結果的にお客様に喜んでいただけると考えています」と締めくくりました。

SBIHDの北尾社長の号令一下、前のめりで進もうとしている証券コンソーシアム。まずは先行するKYCやAIによる売買審査において、個社で得た知見を横展開していくスキームをスムーズに描けるかがポイントとなりそうです。

(文:編集部 猪澤顕明)

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