2018.09.14

知る人ぞ知る「“爆速”経済統計」の徹底活用術

経済統計にも速報化の波

知る人ぞ知る「“爆速”経済統計」の徹底活用術

経済状況を把握する統計は公表までの時間が短いほど「今」を知ることができ、役立ちます。パソコンに続きスマートフォンが普及し、インターネットを使った調査も、従来に比べ一層簡単にできるようになってきました。こうした時代の流れを受けて、最近は新しい「速報化」の動きが出てきました。

内閣府は、2016年9月から「消費者マインドアンケート調査」(試行)という新しい調査を実施してきています。「消費動向調査」など従来の調査では調査対象に選ばれないと回答する権利はありませんが、消費者マインドアンケート調査は誰もが自発的に自由に参加できることが最大の特徴です。

結果は内閣府の消費動向調査のホームページ(HP)上に掲載されますが、残念なことにまだ試行的な調査ということもあってか、新聞に掲載されたことがないので、有用なのに知っている人は極めて少ない調査です。


消費者マインドアンケート調査とは?

誰もが自由に参加できる消費者マインドアンケート調査は、質問数が「暮らし向き」と「物価見通し」の2問だけと少なく、スマホやパソコンから1分間もかからずに短時間で簡単に回答できます。

国民の多くがスマホやパソコンを所有する時代になったからこそできる調査です。しかも、回答の中で自分の判断理由や意見をコメントすることができます。これまでにない画期的な調査といえます。

2017年に入ってからは毎月20日が締切日となり、最近は22日頃には当月分の集計結果が発表されています。その月にその月分のデータがわかる、速報性がある調査です。

既存調査より早く予想物価上昇を確認

第1回目の2016年9月では、物価上昇(1年後)の見通しで、「上昇する」と「やや上昇する」の合計は58.9%にすぎませんでした。その後上昇し、2017年4月分で75.2%と、初めて70%を超えました。この時期にかけて、人々の予想物価上昇率が徐々に高まっていたことがわかります。

2017年5月に入って結果が公表された、消費者庁の4月の「物価モニター調査」でも、生活関連物資の価格が1年後に「上昇する」と答えた割合が72.5%と同様に70%を超え、1年半ぶりの高水準となりました。2,000人を対象にした物価モニター調査と、消費者マインドアンケート調査が同様の結果になったことは興味深かったと思います。

直近の2018年8月では、「やや上昇」と「上昇」の比率が75.7%(前月は77.1%)となり、2ヵ月連続で減少しました。上昇比率は9ヵ月ぶりの低い水準となり、人々の予想物価上昇率のもたつきを他の調査に先駆けて伝えました。

もたつく8月の暮らし向きDI

わが国の雇用環境などは改善傾向にありますが、景況感は冴えない状況が続いています。7月に西日本を襲った豪雨などの悪天候や、将来不安の継続が景況感の重しになったと推測されます。

8月は台風の発生数が24年ぶりの9個と多く、悪天候を打ち破る明るい話題が少ない状況です。8月22日に発表した8月の消費者マインドアンケート調査によると、半年後の暮らし向きについて、「やや悪くなる」と「悪くなる」を足した比率は41.8%となり、7月の38.9%から増加しました。

今回の結果について、景気ウォッチャー調査と同様の手法でDI(判断指数)を作成すると42.2となり、調査開始時の2016年9月に付けた42.8を下回り、過去最低を更新しました。3ヵ月連続低下となった8月の消費動向調査の消費者態度指数のもたつきなどに先駆けて、景況感のもたつきをいち早く教えてくれました。

回答者数の増加が課題

景気・物価に対してしっかりした意見がある人たちの回答なので、回答結果は他の調査などと比べても遜色ない、しっかりした内容です。しかし、内閣府の「景気動向調査」「機械受注統計調査」などの各景気統計のHPに、消費者マインドアンケートへの協力をお願いするバナー広告が掲載されているにもかかわらず、回答者が極めて少ない状況です。

景気に関心がある人でも、HPの統計データまでアクセスしている人が少ないか、アクセスしてもお礼の品など見返りがないと嫌なのか、少しの操作でも面倒くさいので自ら進んで調査には協力しないという人が多いのか……。いずれにしても、非常に残念な状況です。

現状の消費者マインドアンケート調査は、統計学的見地からはサンプル数の少なさなどから統計・調査として問題があるかもしれませんが、公共財としての統計・調査の意義を再認識してもらうためには必要な調査だと思います。目に留まった際は、ぜひ回答していただきたいです。

法人季報中小企業回答率は6割台

財務省が企業経営の実態を把握するため、四半期ごとに実施している基幹統計の「法人企業統計調査」において、資本金1,000万円以上1億円未満の中小企業の回答率は2018年4~6月期では62.5%。ずっと6割台にとどまっているのが現状です。

四半期別GDP(国内総生産)速報第2次速報値での設備投資や在庫投資の重要な基礎統計が低い回答率では正しい景気認識ができない可能性があり、採られるべき政策対応が遅れるかもしれません。調査対象になった人が、前向きに協力することが必要です。

全国民参加型の内閣府の消費者マインドアンケート調査(試行)が世の中に広く伝わり、多くの人々が「経済統計・調査」の重要性を認識し、調査に協力する風潮が生じる契機になることで、より正確な景気・物価の認識ができるようになることを期待したいところです。

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