はじめに

堅調な展開の続いていた日本株相場がショック安に見舞われました。10月11日の東京株式市場は前日の米国株の大幅な値下がりを受けて売り物が先行。日経平均株価は前日比915円安の2万2,590円と急落しました。

取引時間中には下げ幅が1,000円を超す場面もありました。欧州・アジア各国の株価も軒並み値を下げ、米国発の世界同時株安の様相を呈しました。


世界同時株安が起きたメカニズム

震源となった米国では、NYダウが10日に前日比831ドルの値下がりを記録。長期金利の上昇などを嫌気したためです。同国の10年債金利は9月中旬に3%へ乗せた後もジリジリと上がり、足元は3.2%台と2011年5月以来の水準に到達していました。

金利高は良好な雇用環境などを背景に物価上昇圧力が高まっているのを映したもの。金利の上昇に伴って株式の相対的な魅力が低下する、との見方が広がりました。ノースアイランド投資顧問の白石茂治代表は「(2008年の)リーマンショック以来の低金利状態に慣れ切っていたマーケットが慌てふためいている感もある」などと話します。

今回の連鎖安をめぐっては、2月の“VIXショック”時と似ているとみる市場関係者もいます。「VIX(ボラティリティ・インデックス)」は米国のシカゴオプション取引所算出の指数で、投資家のリスク許容度を反映する物差しとして知られています。

別名「恐怖指数」。株安時には同指数が上昇し、逆に株価が値上がりすると同指数が下落する傾向があります。一般に20ポイントを超えると「警戒圏」入りを意味し、30ポイント超は投資家が総悲観へ傾いていることを意味します。

2月にはVIXが一時、37ポイントまでハネ上がりました。これをきっかけに、「同指数が一定の水準まで上昇すると株式を売却する」などといったプログラムに基づく、いわゆるアルゴリズム取引の売りが殺到。ニューヨーク株式は1,000ドルを超す値下がりとなりました。

今回の株安局面でもVIXが一気に20ポイント台まで上昇し、「警戒圏」に突入。株式の処分売りなどを誘発したとみられます。11日には28ポイント台まで上がっており、米国の市場関係者には一段の株価下落に対する不安が広がっています。

日本株も当面は調整の公算

日本株も当面、調整を余儀なくされそうです。日経平均は今年に入って何度も跳ね返されてきた「2万3,000円」の壁を9月中旬に突破。先高観測が台頭していただけに、出鼻をくじかれた格好です。

9月以降の日本株上昇には、先駆した米国株に比べ出遅れていると判断した投資家の買い物などに押し上げられた側面がありました。米国株が値下がりすれば当然、日本株の出遅れ感は後退するでしょう。

米国株安による外国為替市場でのドル安の動きも気になるところ。これまでの円安ドル高のトレンドが反転すれば、「日本企業の業績上振れによる株高」というシナリオも修正を余儀なくされるかもしれません。

前出のノースアイランド投資顧問の白石氏は「歴史的に見れば米国の長期金利が驚くほど高い水準に達しているわけではなく、ここは冷静に対応すべき」と指摘します。一方で、「株価が再び出直る展開になったとき、日本株だけがついていけない可能性がある」と警鐘も鳴らします。

日本株の出直りが遅れそうな理由

その根拠に挙げるのが、「現政権などの危機意識が乏しいことに対する外国人投資家のイラ立ち」です。海外勢の日本株の売買シェアは6~7割を占め、メインプレーヤーともいうべき存在。白石氏によれば2015年6月以降、彼らは日本株売りの姿勢へ転じました。

同月から2018年9月までの間、東京・名古屋2市場での外国人投資家の売り越し額は10兆円を上回っています。にもかかわらず、「政治家と話していても、日本株だけが取り残されているという危機感がほとんどない」(白石氏)。海外勢には「少子化対策の遅れや財政改革に本腰を入れて取り組もうとしないことへの失望感が強い」(同)といいます。

「現政権の関心は経済よりも憲法改正」。多くの市場関係者はかねてこう指摘してきました。その声はいつになったら届くのでしょうか。

この記事の感想を教えてください。