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2017.11.13

自称「育休先進企業」が見落としがちな“1つの指標”

時代に合った「働きやすさ」とは?

自称「育休先進企業」が見落としがちな“1つの指標”

11月10日、内閣府男女共同参画局において、平成29年度「女性が輝く先進企業」の表彰選考委員会が開催されました。私は今年で4年連続、選考委員を拝命しています。

今年も表彰候補企業のさまざまなデータを見て、女性の活用を進めるための「働き方改革」が一段と進んでいることに感銘を受けました。その中に1つ、気になるデータがありました。

共働き世帯が増えている中、本当に働きやすい企業とはどんな会社なのでしょうか。委員会で紹介された事例も交えつつ、日本が目指すべき理想の働き方を考えてみたいと思います。


選考委員会で注目している指標

今、日本企業にとって女性の長期雇用促進は、単なる努力目標ではなく、差し迫った人手不足の解消のための喫緊の課題となっています。そのための「働き方改革」にどう取り組んでいったらよいか、試行錯誤を続けています。

「女性が輝く先進企業」の表彰制度には、女性活躍で先進的な取り組みをしている企業を表彰し、紹介することで、先進的な取り組みが他の企業にも広がるのを促進する目的があります。同時に、仕事と家庭を両立するには、どのような企業で働いたらよいか、これから就職活動を始める学生にとっても、参考になってほしいと思っています。

選考委員会では、女性の役員・管理職への登用実績、男女の平均勤続年数の比較、男女別の採用倍率・採用10年後の継続雇用比率、産休・育休の取得比率、育休後の復職支援、多様な働き方の推進、子育て支援などに始まり、無数の切り口から、共働き世代が真に働きやすい環境はどういうものか、手探りしている状態です。

その中で、近年注目している1つの指標があります。男性の育児休暇取得比率です。

「男性の育休取得0%」の問題点

3~4年前までは0%か、あっても2~3%の企業がほとんどでした。ところが近年、一部の先進的企業で男性育休比率が急に大きく上昇しています。大手金融機関で6~8割まで上昇している例が出ています。

現時点で日本の会社にまだ多いのが「女性の育休取得比率100%、男性の育休取得比率0%」で、「わが社は育休で先進的な取り組みができている」と社長が胸を張っている例です。女性の育休取得に成果をあげているのは事実ですが、これだけでは共働きで家事・育児を分担する世代の働き方に答えているとはいえません。

共働き夫婦が、ともに「女性育休100%・男性育休0%」の会社に勤めていたらどうなるかを考えればわかります。育児の負担が女性サイドに重くのしかかります。結果として、女性がフルタイムで働くのを断念することになるかもしれません。あるいは、この夫婦は出産・育児をあきらめるかもしれません。

産休・育休に入る女性社員のいる部署では、残った社員がバックアップするために苦労することもあります。適切なバックアップ体制ができていない会社では、産休・育休に入る女性に対して嫌がらせ(マタニティ・ハラスメント)が起こる例もあります。

「女性社員を使うのは大変」という誤解

産休・育休のバックアップを所属部署だけの負担としない取り組みが必要なことは言うまでもありませんが、それに加えてもう1つ、重要な問題があります。

「女性育休100%・男性育休0%」の会社では、女性社員だけが仕事を離れる時間が長くなります。すると、「男性社員のほうが使いやすい、女性社員は使うのが大変」という意識が中堅マネージャーに広がりかねません。

共働き夫婦が働きながら育児をやるのに本当にふさわしい職場環境となるためには、男女とも育休取得100%となる取り組みが必要です。

金融機関の人事部に勤めていた友人がこんな話をしていました。「10年働いた女性に辞めずに働いてもらうことが重要なんだよ。新卒を採るのが大変な時代だからね。新卒を戦力にするのに長い時間とコストかかるし、せっかく育てた若手に簡単に辞められたりするからね」。

実際、大手金融機関では、結婚・子育てのために退職した女性に対し、子育てが一巡した段階で積極的に職場復帰を呼びかけています。さらに、今いる女性職員が結婚・出産で退職せずに働き続けられるように、産休・育休・育休後の職場復帰の手当てを充実させています。

地方銀行では、共同で人材活用ネットワークを作り、夫の転勤で転居するために退職せざるをえない女性職員に対して、転勤先の地方銀行で雇用する取り組みも行っています。

コスト増でなく、必須の対策

育休・産休・産休後の復帰サポートをしっかりやることは、企業にとってコストアップではなく、これからの企業経営に必須の対策だと思います。女性の長期雇用が増えれば、それによって少子化による労働者の減少を補っていくカギになるからです。

日本の人口ピラミッドを見ると、人口の多かった「団塊ジュニア世代」はもはや40代になりました。40代より下、30代・20代と若い世代になるほど、人口が減ります。10代は、20代よりもさらに人口が少なくなっています。企業の新規採用は、ますます困難になっていきます。

女性の長期雇用促進が、この問題を解決するための切り札となっています。昔であれば、女性は結婚と同時に退職し、専業主婦となることが多かったですが、今は異なります。20代・30代は、共働きで、家事・育児・介護を分担していくのが、当たり前となりつつあります。共働きが普通になれば、数の上では、人口減少による働き手不足を解消できることになります。

ただし、そのためには、共働きを前提とした働き方改革に企業が取り組む必要があります。家事・育児・介護を分担しながら、仕事にも打ち込めるような、適切なワーク・ライフ・バランスが保たれる制度設計が必要です。ただ、今はまだ、人事担当役員が古い時代の仕事観に固執していて、なかなか改革が進まない例も多数あります。

少年野球は日本企業の未来予想図?

少し話題が変わりますが、私は3年前まで、千葉県で少年野球のコ-チをやっていました。小学生の数が年々減っていくので、かつての名門チームでも廃部や他チームとの合併に追い込まれる時代となっています。

そういう中、各チームが努力していることがあります。女性選手の活用です。最近は少年野球に女性選手が増えています。関東大会の優勝チームのエースピッチャーが女性だったこともあります。

小学生が対象の少年野球では、もはや廃部するか、合併するか、女性選手を活用するか、待ったなしの状態です。育休に対する考え方をさらに進めていかなければ、今の小学生が20代になる時に、多くの日本企業は新卒採用で同じ思いをすることになるでしょう。

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