はじめに

旅行雑誌『トラベル&レジャー』が行った読者投票「ワールド・ベスト・シティ2017」で4位にランクインした京都。6年連続でベスト10入りし、世界中の旅行者から熱い視線が注がれています。

そんな京都で、個人投資家を通じて資金を集め、古くなった町家を風情ある一棟貸しのゲストハウスに再生させるプロジェクトがはじまります。3週間で7,200万円もの資金を集めた、珍しいカタチの投資ファンドをご紹介します。


わずか3週間で7,200万円集めた初プロジェクト

京都の景観には欠かせず、重要文化財に指定されることもある京町家。

歴史と趣のある建物の外観はそのままに、内装をモダンなデザインにリノベーションし、宿泊施設として運営するため、その費用をクラウドファンディングを通じて個人投資家から募る「京町家再生プロジェクト」が注目されています。

このプロジェクトは、不動産投資のクラウドファンディングを運営するクラウドリアルティが個人投資家を募り、物件の提供や宿泊施設の運営を町屋プロデュースなどを手がけるトマルバが行います。

初プロジェクトとなる「京町家1号ファンド」は、京都市東山区の観光名所・清水寺の近くにある町家です。クラウドリアルティの広報 柳原さんは、今回のプロジェクトの反響の大きさについて話します。

「5月に募集をかけたところ110名の方に投資いただき、わずか3週間で目標総額の7,200万円が集まりました」

町家はリフォームを終えた後、来春にゲストハウスとして開業し、出資完了から3年後に売却される予定です。

個人投資家には、売却時の利益と売却までの運営費の利益が、リターンとして支払われます。

インバウンド需要で稼働率97%

投資物件として、トマルバがすでに運営しているのが、一棟貸しの京町家ゲストハウス「宿ルKYOTO~和紙の宿~」です。

一棟貸しの京町家ゲストハウス「宿ルKYOTO~和紙の宿~」の坪庭

大正3年に建てられた築100年以上の京町家をリノベーション。7月に開業しました。庭師による坪庭や和紙を使った家具などを設え、京都の町に暮らしているかのような体験ができます。

オープンから1ヶ月で60名程の宿泊客が利用し、稼働率は97%に上ります。宿泊客のおよそ8割が中国をはじめとしたアジアからの観光客で、10代から60代までの幅広い年代の方が利用しているそうです。

町家一棟貸しの物件価格やリターンについて、トマルバ取締役の山田さんは次のように話します。

「こちらは、ひとりのオーナー様が所有されている物件になりますが、高稼働率により、当初の計画を大幅に上回る売り上げで順調に運用できています」

宿泊施設に姿を変える町家が急増

京都市の観光総合調査によると、2016年の宿泊客数は1,415万人で過去最高を記録。観光客の増加にともない、2015年に約700件だった簡易宿所の数は、2017年の7月には1,800件近くまで増加しているそうです。

なかでも、女性下着メーカーのワコールが町家を改装した宿泊事業への参入を発表するなど、「宿泊施設に改装する京町家が今年に入ってさらに急増している」と山田さんは話します。

「京町家の売買について、当社には月に50~100件もの問い合わせをいただいています。ただ、『築年数が古く、担保価値がないと判断される』『ゲストハウスのため、収益の安定性がないと判断される』『京都の地価が上がっており、評価額と売買額の乖離が大きい』といった理由で、銀行からの融資がつかないケースが多いのが実情です」

こうした状況のなか、クラウドリアルティからの呼びかけによって今回、「京町家再生プロジェクト」が実現したといいます。

「日本の人口減少、空き家問題は今後一層深刻になります。伝統家屋である町家での宿泊体験を提供することにより、問題解決だけでなく、世界中の方に日本の歴史、文化、素晴らしさを伝えていけるプロジェクトになると確信しています」

両社は今後も、このプロジェクトの物件を増やしていくとしています。所有者の高齢化が進み、老朽化や空き家が増加し、深刻な問題になっている町家。宿泊施設として再生させることで、日本の伝統を継承することにひと役買う、新しいカタチの投資ファンドが浸透していくことに期待が高まります。

(文:編集部 土屋舞)

この記事の感想を教えてください。