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2018.05.16

ECで異例の売れ行き、「スーツ作業着」爆売れの秘密

機能性スーツと何が違う?

ECで異例の売れ行き、「スーツ作業着」爆売れの秘密

「EC(ネット通販)と相性が悪いといわれているスーツでありながら、1ヵ月でこれだけ売れたのは、この商品が初めてです」。ファッション通販サイト「ロコンド」の担当者は、こう言って舌を巻きます。

今、同サイトのメンズアパレルで大ヒットを記録しているのが、オアシススタイルウェアが手掛ける「ワークウェアスーツ」という商品です。「スーツに見える作業着」として春先にさまざまなメディアで取り上げられたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

ロコンドで4月3日から本格販売を始めたところ、1ヵ月累計で約500点を販売。「スーツでもなく、作業着でもない、新たなファッションカテゴリーが作られている感触です」と、前出のロコンド担当者は語ります。

いったい、この商品の何が多くの人を引きつけているのでしょうか。人気の裏側には、スーツ作業着の開発秘話が潜んでいました。


どんなところが作業着っぽい?

遠目には、ごく普通のスーツのように見えるワークウェアスーツ。しかし、近づいて見ると、細部に“作業着らしさ”が散りばめられています。

たとえば、ポケットの数と位置。一般的なスーツの上着であれば、胸と腰、内ポケットを合わせて5つ程度。しかし、ワークウェアスーツには11個ものポケットが付いています。その多くがジップ付きなので、激しく動いてもモノが落ちません。

また、速乾・防水・撥水の形状記憶タイプの生地を使っているため、自宅でも洗濯ができるうえ、夜に洗っておけば、朝には着て行けるという特性があります。

価格はジャケットとパンツのセットで3万円(税抜き・送料別)。スポーツアパレルメーカーが販売している機能性スーツは7万~8万円が相場なので、機能性を備えながら、一般的なスーツと同程度の価格設定になっているわけです。

スーツ作業着が生まれたワケ

それにしても、なぜ“スーツのような作業着”が開発されることになったのでしょうか。オアシススタイルウェアの親会社であるオアシスライフスタイルグループで検討が始まったのは、2015年秋のことでした。

水道工事業が本業の同社では、当時、技術スタッフのユニフォームのリニューアル計画が立ち上がっていました。ちょうど世間で人手不足が騒がれ始めた時期で、オアシスでも技術スタッフを思うように採用できない事態になっていました。

一方で、同社は水道工事にまつわる各種サービスにも力を入れていました。技術スタッフが思わず着たくなるデザイン、かつ、サービスにも注力している会社であることが伝わるユニフォームを作りたい――。そんな思いが出発点でした。

当初は、ストリート系のツナギっぽいデザインにしてみたり、半ズボンを考えてみたりと、男性目線で検討を進めていましたが、なかなかカッコいいデザインになりません。悶々とした議論が1年ほど続いた頃、当時オアシスの人事を担当していた中村有沙さん(現オアシススタイルウェア代表)が「スーツみたいな形はどうですか」と提案したのです。

人事として、若手の技術スタッフと話していると、通勤・帰宅時に作業着だと恥ずかしいので、着替えていると答える人が多かったといいます。そのままデートに出かけられる作業着を作れないか。その延長線上にあったのが、スーツのような作業着でした。

現場スタッフは猛反発

そこから半年をかけて探しだしたのが、毎日洗っても形状を維持できる生地。生地が見つかると、今度はサンプルをいくつも作って、商品を作り込んでいきました。

最も気を配ったのが、これまでの作業着よりも機能性をアップさせること。腕まくりのしやすさや、暑い日でもサラッと着られるメッシュ裏地、ジップ付きの胸ポケット、動きやすい形状の生地のカットなど、さまざまな点に工夫を凝らしました。

こうして1年半近くを費やして完成したスーツ作業着でしたが、いざ現場に導入しようとしたところ、スタッフから猛反対にあいました。スーツのような作業着を着て仕事をするとなると、髪型や立ち居振る舞いもスーツに合わせないといけない。従来からの大きな変化に対し、現場は抵抗を示したのです。

しかし、接客やサービスに対する意識を高めてほしいというトップの判断で、2017年秋に制服として導入しました。すると、2~3ヵ月もすると現場スタッフも慣れたようで、「スッキリしていて良い」「機能性も高まって、動きやすい」「家族からも好評」と評価は一変。

取引先からも「あれ、いいね」と評判となりました。もしかしたら外部でも需要があるのではないか、と考えた発案者の中村さんは、昨年末にオアシススタイルウェアを設立。外販の検討に入りました。

当初はB to Bで企業に制服として購入してもらうことを想定していました。しかし、フタを開けてみると、個人からの問い合わせが殺到。社長同士が知り合いだったロコンドで3月末から4月初旬にかけて試験販売をすると、瞬く間にメンズランキングで1位と2位を独占。予定を早めて、4月3日から本格販売をスタートさせたのでした。

どんな人が買っている?

実際に購入している顧客属性は2種類に大別できるといいます。1つは、普段は作業着を着ているけれど、接客の機会も多い人。もう1つが、今まではスーツを着てきたけれど、実際には作業する場面も多い人です。

「アパレルメーカーの機能性スーツではなく、作業員の目線で作っていったので、機能性や作業性をかなり追求しました」(中村代表)。もしかすると、そんな従来品とのアプローチの違いが、多くの人の心を引きつけたのかもしれません。

発売1年目の目標は、年商1億円。上下セット3万円なので、セット数にして3300強。初月で500点が売れたことを考えると、それほど高いハードルではなさそうです。

評判は海外にも広がっており、アジア圏からは商談も寄せられているといいます。将来的には、海外展開も視野に入れているようです。

既存メーカーとは異なるアプローチから生まれたことがヒットにつながった、スーツ作業着。5月7日には、女性用のラインナップも販売を始めました。この勢いはどこまで続くのでしょうか。

(文:編集部 猪澤顕明)

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