はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する野瀬大樹氏がお答えします。

不動産投資を考えています。現在は情報収集をしている段階なのですが、自分にどのようなやり方が向いているのかと迷っています。問題は資金面です。現在の金融資産は約1,200万円、うち2割弱が投資信託や株などのリスク資産です。ローンはありません。どの程度まで自己資金を投入できるのか。判断基準はどのように持てばよいでしょうか。また、以下のような理由から私が融資を受けるのは難しいのでは、と考えています。

・年収が約400万円
・既婚ですが夫はワケあってアルバイトの身、いわゆる主夫
・「女性は不安定」と思われて不利になるのではないか

不動産投資に踏み出すためのアドバイスをお願いします。
(30代前半 既婚・子供1人 女性)


「勝つ」不動産投資とは?

野瀬: 私自身もそうですが、私の友人には不動産投資をしている人がたくさんいます。そのなかには私とは違って不動産投資でけっこう儲けている方もいるのですが、その人たちの特徴として「本業でメチャクチャ稼いでいる」という実も蓋もない事実があります。

「本業でメチャクチャ稼いでいる」と何がよいのかというと、1つ目が不動産屋さんが「次も買ってくれるのでは」と良い物件を紹介してくれること、2つ目が銀行からみると取りっぱぐれがないため、提示される金利が安いということです。

ですので、よい物件を紹介され、安くローンが組め、家賃を稼いで、さらに物件を紹介され……とドンドンいいサイクルに入ることが可能で、すごい人では1億円以上の物件を一度も見ることなく購入しています。

それでも金利が安いので、この不動産投資が失敗する可能性は低いのです。「お金持ちはどんどんお金持ちになる」というサイクルがここからわかりますね。

ローンは借りられる?

結論からいうと、質問者の方がおっしゃる通り、現在の状況から不動産投資のローンを組むことは少し難しいのでは、と思います。自分が住むための住宅ローンであれば、最近は女性向けを打ち出した住宅ローンを取り扱っている金融機関も多いですが、投資用のローンとなると話は別です。

女性差別ととられかねないので、表立って言われることはないですが、やはり女性の場合、出産や育児で仕事を辞める可能性というものが融資の条件を悪くするでしょう。また、配偶者の方が現在は正社員ではないという点もマイナスポイントだと思います。

そうなると、仮に無理をして投資用ローンを組んでも、金利は非常に不利な条件になると思うので、最初の物件としては少しリスクが高いかなと思います。

リスクが少ない始め方は?

さて、投資用ローンが組みにくい今の状況での不動産投資の進め方についてですが、例えば以下の方法はどうでしょうか。

購入規模

金融資産が1,200万円とその世代としてはかなりあるので、頭金を多めに入れる。場合によっては、全額キャッシュも考えてみてもよいでしょう。具体的には1,200万円のうち、200万円程度は株・投資信託なので、残りの1,000万円の半分の500万円を使って不動産投資を始めてはいかがでしょうか。

もちろん融資がつけばよいのですが、おそらく厳しいと思うので、最悪は全額キャッシュで賄います。預金として500万程度は残しておきたい理由は、お子さんがいるご家庭だからです。なにかあっても1年間の生活はどうにかなるようにしておきましょう。

物件の性質

また物件はオーナーチェンジ物件、つまりもう店子がついている物件を買うというかたちが、なんとかリスクの少ない方法かなと思います。オーナーチェンジ物件にすると最初の月から家賃が入ってくるので、精神衛生上よいからです。

はじめての不動産投資の場合、客付けの方法もよくわからないので何ヶ月もお客さんがつかなければ狼狽してしまう方も多いのですが、オーナーチェンジ物件であれば安心です。もちろんオーナーチェンジ物件の場合は、購入前に物件の中身を見ることができないという欠点がありますので、その点を補うために物件の調査は入念に行ってください。

また事前に不動産屋さんに現在の家賃の滞納の有無を確認することや、対象となる部屋のベランダなどが明らかに汚れていないかなどの現地調査も必要でしょう。

物件の具体的イメージ

質問者の方がどこに住んでいるのかわかりませんが、例えば関東であれば東京23区になんとか通勤できる範囲の駅徒歩15分以内、築25年以上で、2部屋以上の物件でしょうか。そのあたりであれば探せば、500万~700万程度の物件があります。2部屋にしたのは、最悪将来お客さんがつかなかった時に自分で住めばよいからです。

時々、「キャッシュで不動産を買うならREITを小口で買った方がいいんじゃないか?」というご意見もいただくのですが、REITの物件には自分自身が住むことができません。現物不動産の「最悪、住める」という保険機能も意識して物件を探すとよいでしょう。

長期的に投資を成功させるためには?

前述の方法は私が実際に1つ目の物件を購入するときに取った方法です。事情があってローンが組めませんでしたので、結局500万円程度のオーナーチェンジ物件をキャッシュで購入したのですが、結果はかなりよかったと思います。

ただ、この1つ目の物件を買うまでに120件の物件を見学しました(笑)。それでようやく「これだ!」という物件を見つけたので、質問者の方も焦らず地道にコツコツ、いい物件を探してください。

購入できる物件がすぐにはなくても、それを嘆くのではなく、将来ローンがよい条件で組めるように、自分の属性(勤続年数・年収・配偶者の年収など)を高めることが、長期的な不動産投資戦略だと思います。

とにかく「2~3年ぐらいのスパンでよい物件が見つかればよし」ぐらいの心構えでよいと思います。結局は、「今日もお仕事がんばりましょう」ということになるのかもしれませんね。

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