はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。

新築戸建て住宅の購入を検討しています。妻の実家近くの分譲住宅(長期優良住宅)で、3階建4LDKで4,000万円の物件です。現在は妻の実家近くの賃貸アパート(2LDK・月9万円)に住んでいるのですが、将来子供が2人になると手狭になることや以前から戸建住宅での生活を切望していたため、ぜひほしいと思っています。


しかし、私は長男であるため、現在70歳の両親になにかがあった際は、実家に転居する可能性があります。仮に転居することになっても売却できるかもしれない、借入金利が低く住宅ローン減税の減税額が拡大している今購入するのがよいのでは、などと考えるのですが、いつ転居するかわからない状態で住宅ローンを抱えるのはリスクが高いとも思ってしまいます。


このような状況で住宅購入をするのはリスクが高いでしょうか? どのように考えるべきか教えてください。よろしくお願いいたします。
(30代前半 既婚・子供1人 男性)


野瀬: なかなか難しい問題ですね。

なによりも立地が重要

この問題がどうして難しいかと言いますと、ご相談からは現在購入を検討されている戸建ての立地が見えてこないからです。

ご相談には、現在70歳のご両親になにかあった時……とありますが、お亡くなりにならなかったとしても、介護が必要になるなど想像以上に早く転居のタイミングが来ると思います。

その時、購入予定の家を期待通りに売ったり、貸したりできるかどうかは、「立地」にかかっています。

家は買い手や借り手がつかない場合のキャッシュ・フローがプラスマイナスではありません。

固定資産税に加え、マンションなら管理費、戸建てなら庭の管理などで毎年お金が出ていくため完全なマイナスになるというリスクがあります。

このようなリスクを回避するためにも買う物件の立地には気を付けてください。どの都市かにもよりますが、今後の人口減少社会を考えると「駅から徒歩10分以内、最悪でも15分以内」がよいでしょう。

売れるのは“ベタ”な家

また、戸建ての場合はマンションに比べ、比較的間取りが自由です。自分の趣味、家族状況に応じて部屋数や広さ、外壁の色まで自由に決めることができます。

これはメリットのように思えるのですが、裏を返せば家が「マニアック」になってしまうきらいがあります。つまり、質問者の方の趣味がほかの人にも受け入れられるかどうかがわからないのです。

私の知人に奥様の趣味で外壁をピンクにした人がいるのですが、転勤になった今、買い手も借り手もつかなくて難儀しているようです(笑)。

戸建てを買っても将来転居の可能性が高いのであれば、間取りや外壁は「万人受け」するかたちにしておく必要があるでしょう。

白を基調にし、フローリングは明るい茶色、間取りは子供二人を想定というような感じです。こういったベタな戸建てのほうが将来の流動性が高く、出口戦略を立てやすいでしょう。

「中古でもほしい」物件が狙い目

質問内容から推測するに質問者の方は新築物件の購入を検討されているのだと思います。

しかし、戸建てもマンションも同じですが、家は買うと値下がりする可能性があります。

麻布や青山などの立地であれば当然、値上がりも期待できますが、4,000万という値段を考えると、おそらくどこかの地方都市だと推察します。そうなると、スピードに早い遅いはありますが、徐々に値下がりしていくと思います。

この不動産の値下がりは、概ね10~15年で落ち着くと言われています。もしほかの物件も検討されているのであれば、ある意味で「値下がりつくした」築10~15年あたりの中古物件を検討してみてはいかがでしょうか?

質問者の方が「中古でもほしい!」と思える物件は、将来、買い手になってくれる方も「中古でもほしい」と思ってくれる可能性が高いです。

値下がりした中古物件を買い、浮いたお金で綺麗にリフォームというのが賢い住宅購入だと思います。

家を買うタイミングとしてはどうなのか?

最後にまとめますが、将来、転居の可能性が高いのであれば、私の場合は戸建ては買いません。

マンションよりも流動性が低く、立地によっては売れない貸せないリスクがどうしても付きまとうからです。ただし、私が質問者の方の立場で「買う」ことが決まっているなら、将来転居する可能性を踏まえ、以下の3点を満たした物件を買います。

i) 駅から15分以内:将来の借り手買い手が探しやすい
ii) 戸建てではなく4LDKマンション:戸建てより流動性が高く売りやすい
iii) 新築ではなく築10~15年ぐらいの中古物件:値下がりしつくしている

ただ、奥様がどうしても戸建てを熱望しておられるとのことですので、ここは(ii)の条件を緩和して「オーソドックスなデザイン、間取りの戸建て」としてはいかがでしょうか。

「戸建てをこのタイミングで買うこと」は、今のタイミングは価格以外は悪くないと思います。

アベノミクスや東京五輪の影響で不動産の価格は都市部に関して言えば少し割高なような気がしています。ただし住宅ローン減税や、住宅ローン金利の異常な低さ、親から子への住宅資金贈与の税制上の優遇措置などを鑑みると、タイミングとしては悪くはないと思います。制度を使い倒すいいチャンスと言えます。

昨今の税制改正の方向性から推察するに、政府は高齢者世代のお金を現役世代に移動させ、とにかく住宅を買って景気を刺激してほしい、という流れを感じます。この税制上の方向性や金利のボーナスステージは、あともう少し続きそうですので、焦らずも、この機を逃さず、しっかり吟味してください。

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