はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。

家族構成が確定したのと現在住んでいる定期借家の期限があと2年を切ったので、住宅の取得を考えています。主人も私も転勤はありませんが、子供が自立し退職したら、主人の実家に帰ろうと思っています。


新築マンションにはあまり魅力を感じず、1,500万円ほどの中古マンション(駅より徒歩10分、築後35年、耐震補強済)を購入後、建築家にお願いしてリノベーションしようと思っています。費用は1,000万円を想定しています。その後、もし物件を売却する場合、リノベーションした分は売却価格にどのように反映するのでしょうか? 多少は高く売れますか?
(30代前半 既婚・子供2人 女性)


内藤: ご質問ありがとうございます。不動産の価格決定は、投資用物件と居住用物件によって異なります。

投資用物件は投資効率

投資用物件の場合は、利回り計算によって投資効率とリスクから決定されます。

空室リスクが低く、価値が下がりにくい立地の物件の利回りは低く、空室リスクが高く、価格下落リスクのある物件の利回りは高くなります。

例えば、都心の一等地で周辺利回り4%が相場になっていれば、年間家賃が100万円の場合、逆算して物件価格は2,500万円ということになります。

購入する投資家は、好みではなく投資リターンでしか物件を見ていませんから、利回り計算によってある程度は物件価格を推定することができるのです。

居住用物件は“好み”

ところが居住用の場合は、投資物件とは随分評価方法が異なります。

今回のケースのように中古の築古物件をリノベーションした場合、リノベーションのコストがそのまま物件価値に反映されるとは限りません。

居住用の場合、利回りのような計量的な計算は難しく、好みの問題が価格決定の大きな比率を占めるからです。

例えば、2,000万円で購入し500万円でリノベーションした物件であっても、リノベーションのやり方がよければ、その物件を気に入り3,000万円で購入する人が出てくる可能性もあります。

逆に、1,000万円のリノベーションコストをかけても、価値は500万円程度しかアップしないケースもあります。

居住用に住宅を購入する人は、投資利回りのような価値判断ではなく、「自分がそれを手に入れるためにいくら払うか」という点で判断するからです。

世の中のニーズはどこにあるか?

どうしても手に入れたい物件であれば、割高であってもコストを払って手に入れようとしますが、自分のテイストに合わない物件であれば、たとえ割安だったとしても購入を見送る可能性が高くなります。

つまり、居住用の物件をリノベーションしてバリューアップしたいのであれば、自分のマニアックな趣味にお金をかけるのではなく、万人受けするような汎用性のある方法を心がけなければなりません。

世の中のニーズがどのような物件にあるのかを調べる必要があるでしょう。

今回想定されていリノベーションがどのようなものかは、ご質問からはわかりません。

しかし、売却することも考えているのであれば、オーソドックスなリノベーションを選択し、売却する際に幅広い購入者から選んでもらえるような方法を意識すべきでしょう。

どうしても自分の好みにリノベーションしたいということであれば、それはコストと割り切って、物件の売却時の価格の上乗せは期待しないほうがよいかもしれません。

不動産は買い手の間口が広ければ、それだけ購入者同士の競争になり、高い価格で売りやすくなります。これは、投資用であっても、居住用であっても共通するルールです。

この記事の感想を教えてください。