はじめに

現在、新車販売台数の約9割が対象となっているエコカー減税を2017年度から縮小する方向で業界と政府がかけひきを行っている。新車販売台数を維持するために減税対象をなるべくそのままにしたい経産省に対して、税収を増やしたい総務省は減税対象車種を全体の5割まで引き下げようと考えているようだ。このかけひきがどのように落ち着くか、シナリオと影響を検討してみよう。


エコカー減税の現状

新車を取得する際にかかる自動車取得税を燃費に応じて非課税ないしは80~20%減税するエコカー減税制度は、もともとリーマンショックを受けて2009年に始まった。プリウスなど燃費が良い、つまり環境にやさしい車種は自動車取得税がかからないということで、ハイブリッドカーの人気が高まったのはこのエコカー減税がきっかけだ。

リーマンショックが収まった後もこのエコカー減税は、燃費基準を上げつつ維持することになり、現在でもハイブリッドカーは無税となっている。近年では新車販売のトップをプリウスかアクア(どちらもハイブリッドカー)が占めるという状況が続いているのはこのエコカー減税の影響が大きいだろう。

一方で燃費の悪いガソリン車でも、一定の燃費基準を達成すれば何らかの減税対象となる。一番ハードルが低い2015年基準であるリッター当たりの17kmの燃費基準を5%以上上回るというレベルでも20%の減税、10%以上上回れば40%の減税ということで、大半のガソリン車はこの基準を上回っている。

現行基準で減税対象から外れるのはたとえばスバルのインプレッサSPORTSのようなスポーツカータイプの乗用車で、それ以外は何らかの減税を受けられるというのが現行のエコカー減税制度になっているわけだ。

2017年のエコカー減税を巡る攻防

さて、政府は2017年からこのエコカー減税を見直す方向で検討に入った。アベノミクスの失速によりなんとかして景気を維持したい経産省としては、減税幅をなるべく小さくしたいという立場だ。経産省案では減税対象から外されるのは2015年基準を5%上回るレベルのエコカーだけで、これは全新車台数の2%に過ぎない。つまり経産省案では現行とそれほど変わらない車種がエコカー減税の対象になる。

さらに経産省案では現在80%減税となっている2020年基準を10%以上上回る車種までを非課税対象にしたいとしている。これは全体の12%に相当する台数で、エコ基準を上回る車種への買い替えを促すことで、新車販売の増加だけでなく温室効果ガスの削減目標の達成に向けても追い風になる政策をとりたいと考えていることになる。

一方で総務省案はかなりシビアな増税案になっている。経産省案で非課税になる車種までが(非課税ではなく)減税の対象となり、それ以外の車種は減税なしという考えなのだ。

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