はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は読者の家計の悩みについて、プロのFPとして活躍する野瀬 大樹(のせ・ひろき)氏がお答えします。

クレジットカードについて質問です。私は銀行のキャッシュカードと併用のカードで十分かなと思っているのですが、主人が某ブランドのゴールドカードにしたいと言って聞きません。ただ、私には数万円の年会費を払う意味が正直わかりません。ゴールドカードは年会費に見合ったメリットがあるのでしょうか? それともただの見栄? クレジットカードの上手な選び方ってあるのでしょうか?
(30代前半 既婚 女性)


野瀬: これはよくある問題ですね。

クレジットカードの評価は難しいです。それは意図的なのか、年会費や還元率、そのほかのメリットがわかりにくくなっているからです。

たとえば「年会費無料!」とうたっていてもそれは初年度だけだったりするケースがあります。カード業界は競争が激しいので、とにかくあの手この手で「お得ですよ」と彼らにとって有利な数字ばかりを見せてきます。

ゴールドカードひとつとっても昔は取得するハードルが高かったのですが、今は競争が激しいせいか発行してもらうのはとても簡単です。そして投資商品と同じで、「向こうから積極的に売り込んでくるもの」に対しては、ある程度警戒してみるべきです。

また「還元率10%以上!」とうたっている場合でも、その10%分のポイントや商品券をゲットするためには、別にクレジットカードを作らなくてもそのお店のポイントカードを作るだけで十分なケースがほとんどです。

そうすると実質の還元率は結局どのカードも0.5~1.5%程度に落ち着きます。また、カードのメリットとして海外旅行時の保険がついてくるというものがありますが、おそらくほとんどの方の場合、海外旅行は年に1回行くか行かないかだと思うので、その都度単発の保険に入ってもコスト的にはほとんど変わらないことになります。

私がゴールドカードにしない理由

ちなみに私がメインで使っているのは家電量販店のゴールドでもない年会費無料の普通のクレジットカードです。私自身、家電が大好きでポイントで家電をよく買うからですが、では「どうしてゴールドカードにしないのか?」と言いますと、メリットが乏しいからです。

その家電量販店で買ったものの保証期間が延びるということがメリットなのですが、日本の家電は優秀なので正直3年や5年で壊れることはほぼありません。年会費1万円を払って受けるほどのメリットではないと考えています。

単純に還元率だけ考えても、仮に1%のものだとして、年会費を3万円とすると、1年で300万円の買い物をしないと元が取れないことになります。そう考えるとやはりゴールドカードというものは年会費分のメリットに乏しいと言えます。

とはいうものの、お金の話ばかりしても人生は楽しくないので、ゴールドカードのメリットについて考えてみましょう。

ゴールドカードの最大のメリット

ご質問にあったゴールドカードの特典はブランドによっても異なりますが、私が調べたカードにおける最大のメリットは「海外旅行時」でした。ホテルの優待があったり、空港のポーターサービスやラウンジサービスが利用できたり、海外での保険に家族まで含まれたり……という点です。

これらの価値をお金で測ることは難しいですが、ご家族との海外旅行のひと時において、お金に代えがたい「安心、やすらぎ、高級感」を与えてくれると考えることができます。

となると答えは単純で、「年に少なくとも2回以上、家族で海外旅行に行くぐらいの所得の人」だとゴールドカードはお得ということになります。目安としては年収2,000万円ぐらいでしょうか。

そう考えると、結局ゴールドカードのもともとの趣旨「たくさんお金を使ってくれる人にメリットを」に戻ることになります。

今のカード業界は、従来のゴールドカードがターゲットとしていた所得層(おそらく年収2,000万円以上)にはゴールドカードが普及しているので、それ以外の顧客層に向けても特典のあるカードの保有促進を、という流れになってきています。

一口にゴールドカードといっても、年会費が数千円のものから3万円以上のものまで、実にさまざまになってきています。上述のステータスの側面も含めて、個人がニーズに応じて選ぶような時代になってきているのかもしれません。

このような判断をする際に、世の中は本当に便利になっているので「なにかを横断的に比較したい」と思ったら、すでにそういったものを無料で作ってくれる人がいるものです。

ネット上で見つかるクレジットカードの比較サイトに、ご自分のお気に入りの条件を入れて検索してみてはいかがでしょうか?

少なくとも街で「カード作りませんか?」と声をかけられるがままに作ってしまうよりは、お得になると思います。

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