はじめに

日本生命保険が、個人年金保険や学資保険など貯蓄性商品の保険料の引き上げを発表しました。4月からの新規契約者は、月々の保険料が現在と比べて2~4%程度上がる見込みです。個人年金以外にも、iDeCo(個人型確定拠出年金)、投資信託など、公的年金に加えて老後資金を形成するための方法はたくさんありますが、今回の値上げによって選ぶべき手法は変わるのでしょうか?


保険料値上げの影響は?

日本生命は、2月2日、市中金利動向や標準利率等の状況を踏まえて、4月からの個人保険・個人年金保険の保険料率改定を発表しました。対象となるのは、学資保険・こども保険・年金保険など。日経新聞の報道によると、「第一生命など各社も予定利率の引き下げによる保険料の改定を検討している」と一斉値上げが起こる可能性もあります。

一方で、厚生労働省は4月から公的年金の支給額を0.1%引き下げることを発表しました。今後、支給年齢の引き上げが行われることも想定されています。そんな公的年金に対する不安から、老後資金形成の方法として民間の個人年金が注目されていますが、今回の値上げはどんな影響を及ぼすのでしょうか。

その影響と賢い選びかたを、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場「FP Cafe」を運営する株式会社Money&Youの代表取締役・頼藤太希さんに教えてもらいました。

――今回の値上げは、私たちにどんな影響がありますか?

頼藤: 4月から実施される日本生命の保険料の値上げ幅は性別、加入年齢によって異なりますが、30歳男性が60歳から年60万円の年金を10年間受け取る場合、保険料は月1万5,000円程度から約500円上がる計算とあります。そうすると1年間で6,000円、30年間で18万円多く支払うことになります。

受取期間と支給金額は同じでも、現在加入していない人は、3月末までに加入するか・4月以降に加入するかどうかでこの金額の差が出てしまいます。

ただし、資産形成において大事な視点は、運用する商品の中身を自分がしっかりと把握していること、そして自分が納得した商品であることです。

――個人年金への加入メリットは?

頼藤: 利回り面では4月以降、悪化はしますが、個人年金保険は「個人年金保険料控除」という所得控除が利用できますので、まだまだ活用する価値はあります。

所得控除とは、所得税を計算する元となる所得額から減額できることです。年間8万円以上の保険料を払い込んでいれば、4万円の「個人年金保険料控除」が受けられます。

また、住民税は、年間5万6,001円以上の保険料を払い込んでいれば、2万8,000円の「個人年金保険料控除」が受けられます。

所得税率が20%であれば8,000円、住民税は一律10%なので2,800円、合わせて年間10,800円が節税できます。30年間加入した場合、32万4,000円です。

できるだけ早く入った方がいいの?

――もし今後も保険料が値上がるのであれば、できるだけ早く入った方がいいのでは……と不安になります。

頼藤: 2月6日時点で、日本国債10年利回りは0.09%、30年は0.89%です。保険会社の多くは、利回りを狙うために、20年、30年の長期投資を行っている会社が多いですが、30年利回りを見るとまだ下がる余地はあるとは言えます。ということは値上げの可能性は一応あります。

でも逆に、金利は上がっていくことも考えられます。その場合、保険料は下がることに。保険商品の利回りで見れば上がった時に入った方がよいということになりますが、利息が利息を生む複利効果のメリットや、先ほど述べた通り、節税面のメリットを踏まえると早めに入った方がよいのは事実でしょう。

――老後の資産形成については個人年金だけでなく、1月から加入者が大幅に拡がったiDeCoなどもあります。たくさんの選択肢のなかでどう選べばいいのでしょうか?

頼藤: どちらが先かであれば、iDeCoが最優先でしょう。なぜならば掛け金全額が所得控除になり、個人年金保険よりもその金額が大きいからです。例えば、iDeCoは会社員で企業年金がない場合、年間27万6,000円が限度ですが、その節税効果は個人年金より確実に大きいです。

所得が高い方ほど節税効果が大きいので、iDeCoと個人年金保険をフルに活用したいところです。

――よくわかりました。ありがとうございます。

公的年金の支給額の引下げや支給年齢の引上げが決定するなかで、老後資産についての不安は尽きません。所得控除制度などを上手に活用し、個人年金保険やiDeCoなどの選択肢から自分に合った商品を見つけ、早々に手を打つことが老後の明暗を分けることになりそうです。

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