はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は読者の家計の悩みについて、プロのFPとして活躍する野瀬大樹(のせ・ひろき)氏がお答えします。

前の職場がブラック過ぎて、3年間ほど年金・社保をほとんど払っていない状況です。私はどうすればいいでしょうか? 払わないとどうなるのか、払う必要があるのであれば、その理由と払う方法を教えて下さい。
(20代後半 独身 男性)


野瀬: 「ブラック過ぎて年金を払っていない」とありますが、それは「会社が厚生年金に加入し、かつ年金を天引きされていたのに、会社がそのお金を納めずに自分のものにしていた」という状況でしょうか?

もしそうなのであれば、一度「日本年金機構」に確認してみることをおすすめします。年金が天引きされていた証拠となる給与明細や源泉徴収票を一緒に示せるとよいでしょう。

また、仮に会社が意図的に年金に加入していなかったことが認められれば、会社に指導が入り、過去分もさかのぼって修正することになると予想されます。そうなると質問者の方が天引きされた年金もムダにはなりませんので、とにかく早急に機構に相談することが第一です。

最近は、こういった悪質な企業に対して機構も非常に厳しい態度で接していますので、ぜひ一度連絡してみてください(年金の財源が少ないことも厳しい理由のひとつですが……)。もちろん匿名での連絡も可能です。名前を出すことに抵抗があるようでしたら匿名での連絡でも大丈夫です。

納めていない年金はどうするべきか?

では、「そもそも会社が厚生年金に加入していない」場合はどうなのでしょうか? もちろん年金には個人負担分以外に、企業負担分がありますので、先ほどのアドバイスの通り、とりあえず年金機構に相談することをおすすめします。

ただ、国民年金と異なり、厚生年金には原則として「滞納」という概念はあっても「未納」という概念がありません。それは自営・勤め人に関わらず全員に加入義務がある国民年金と異なって、厚生年金は全員に適用されるものではないからです。

ですので、もし会社がそもそも加入していない場合は、その期間は年金が納付されていないことなります。

そうなると自動的に国民年金も未納付ということになり、年金受給の条件となる「25年間納付(※)」の期間に加算されないことになります。そもそも国民年金は通算25年以上納付しなければ年金がまったくもらえない「無年金状態」になりますので、とにかく今の状態をまず確認することが大切です(※29年8月1日の改正法施行で、受給資格を得られる期間が「10年」に短縮されます)。

そもそも年金は納めるべきなのか?

さて、「そもそも年金は納めるべきなのか?」という問題ですが、もちろん国の制度ですので「納めるべきである」というのが建前になります。ただ私の個人的な本音……つまり「損か得か」の観点でも「納めるべき」と言えます。

なぜかと言いますと、今現在の年金制度の資金繰りには多額の税金が投入されているからです。もともと年金制度における税金の占める比率は3分の1だったのですが、年金の資金繰りがあまりにひっぱくしてきたので、それを2分の1に引き上げた経緯があります。

税金の財源は主に消費税ですので、私たちが等しく納めているものです。私たちから等しく集められた税金が使われている以上、その分け前に与らなければ損になる……というのはわかりやすい論理ですね。

そもそも従来の年金制度には欠陥がたくさんあったのですが、そのルールを今後も決めるのは国です。国が、「年金制度を維持したい」と思っている以上、絶対に加入した人の方が得になる(言い換えると、加入しない人が割を食う)制度に変更し続けるはずです。

いろいろと納得いかない部分はあると思うのですが、ルールを決めるのが国であり、日本を捨てる気持ちがない以上、損得面からも加入せざるを得ないのが実情だとは思います。

後納制度の利用がおすすめ

さて、そうと決まればあとはどうやって払うのか。 最近、国民年金では「後納制度」を拡充しています。

昔、小学校でなにか悪いことをした生徒がいるときに、先生が「今だったら先生は怒らないから、犯人は名乗りでなさい」と言っていた記憶はありませんか?(笑)。

言い方は悪いですが、国民年金の後納制度はこの小学校の先生と似ています。平成30年9月までであれば、過去5年分の国民年金の未払い分についての後納、つまり「今から払ったら過去分を納めたことにしてあげる」という制度です。

特に質問者の方のように、納付期間が国民年金の受給資格を満たしていない可能性が高い方のための救済措置ですので、本制度を利用してみてはいかがでしょうか?

税金と同様、年金も「払おうとしている人」にはみなさん大変優しいですので、ぜひ一度連絡してみるとよいでしょう。

この記事の感想を教えてください。