はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。

個人型の確定拠出年金をかけています。「マネーフォワード」などの家計簿アプリには確定拠出年金も資産の一部として残高を集計してくれる機能がありますが、基本的に確定拠出年金は60歳になるまで引き出せないという前提があります(例外等はあるようですが、60歳以前に受け取るつもりはありません)。

そのため、拠出した年金額や確定拠出年金の残高をどのように扱ったらよいのかを悩んでいます。「拠出した金額=年金の納付」として支出につけ、確定拠出年金の口座は登録しないようにしておくべきか。あくまで振替というかたちで手数料のみを支出をみなすべきなのか……。まだ拠出し始めてから年数が浅いのですが、拠出年金の残高を使えるお金と解釈すると間違いですし、悩ましいところです。個人型確定拠出年金の扱いについてアドバイスをお願いします。
(30代前半 独身 男性)


深野: 公的年金制度には不安がつきまとう上、それだけで老後資金を賄うことも難しいことから、自助努力による老後資金の準備は今後ますます重要になってくるでしょう。

現在すでに個人型確定拠出年金を利用されているのは立派の一言です。なぜなら老後資金を準備するための商品は、税制上の特典があるものから活用することがよいからです。

個人型確定拠出年金の特徴と注意点

個人型確定拠出年金は、掛け金が全額所得控除となることから、その分課税所得が減り、結果として納める税金が少なくなります。

そのほか、所得控除がある老後資金のための商品としては、国民年金基金、付加年金、小規模企業共済などがありますが、国民年金基金と付加年金は公的年金制度における第1号被保険者しか利用できません(併用は不可)。

小規模企業共済は、一定の規模以下の企業の役員、あるいは個人事業主しか加入できません。

個人型確定拠出年金は、29年1月から対象者が広がり、企業年金加入者・公務員共済等加入者・私学共済加入者・国民年金の第3号被保険者(専業主婦等)などのも加入できるようになりました。勤労者の方が老後資金の準備をする際の選択肢としては、有力な制度と言えるでしょう。

ただ、個人型確定拠出年金で注意したいのは、原則60歳にならなければ引き出すことができない点です。

所得控除が利用できることから節税になると考え、無理した掛け金で拠出を行うと老後を迎える前のライフイベントに充当する資金が不足する可能性があります。ライフイベントの支出などを踏まえ、また細く長く続けられるように掛け金を考えて利用されてください。

掛け金や残高をどう計上するか?

さて、個人型確定拠出年金の掛け金、残高をどのように計上するのかですが、掛け金に関しては積立で問題ないと思われます。

また、財産簿(バランスシート表)を作成する際には、資産の部に確定拠出年金の残高(時価)を計上してもよいでしょう。

ご質問で悩まれているように、個人型確定拠出年金の残高は日常的、あるいは老後を迎える前のライフイベントに使用することはできません。「個人型確定拠出年金=老後資金」というくくりで別枠で管理されるとよいかもしれません。

ただし、財産簿などの資産合計には加えてもかまいません。

私は個人型確定拠出年金を行っていませんが、予定利率が高かったときの個人年金保険などの老後資金を準備するための商品を資産合計には含めていますが、内訳では別勘定にするようにしています。

ご質問にあるように、すぐに使っていいお金ではないからです。

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