はじめに

日本人は休み下手。そして世界の中でも働き過ぎといわれています。勤勉で真面目な国民性は、大切で誇るべきこと。でも、疲れすぎていませんか?

日本の真裏に位置するブラジルから、余暇を上手に取り入れた暮らし方をお届けします。


有休消化は100%

ブラジルでは会社員に年間30日間の有給休暇が与えられ、その消化率は100%! みんなそれぞれに休暇を楽しんでいます。

日本で会社員をしていた私は、正直うらやましく思いますが、それならば日本でも有給休暇が増えればいいのか? というわけでもありません。というのは、私は休み方が下手だったから! 退職するときも、数日分を消化できずじまいでした。

だから制度も大事ですが、制度を使いこなすことも必要です。“休み上手”にはヒケツがあることを、友人達から教わりました。

休暇の過ごし方は人それぞれ

友人のシモニは休暇を利用してスキルアップに励んでいます。流暢に英語を話す彼女ですが、話せるようになったのはほんの3年前のことだとか。休暇を使ってロンドンに3週間、語学留学したそうです。それまでも独学で勉強していたものの、実際に英語を話す機会がなく、留学前は一言も話せなかったといいます。

ロンドンで英会話に自信をつけて帰った彼女は、かねてより希望していた海外と関わる部署への異動を叶えました。ちなみに、家庭では2児の母。留学中の子供達の世話はお母様や旦那様に頼んだそう。

日頃から仕事と家庭にベストを尽くす彼女ですが、自分のための時間を作ることも大事にしています。週に一度は家事代行サービスを頼み、中国語の勉強やピラティスのクラスに通う時間を捻出しています。たまに疲れたときは、家族の夕食に宅配ピザを頼み、自分は友人と出かけて気分転換することもあるそうです。

「家族を持つことも、仕事をすることも、私が選んだこと。だけど、私は私という1人の人間であることも大切にしているのよ」

家族はそんな彼女を尊重して、応援してくれるそうです。

友人のシモニ(Simone)

一方で、どこにも行かずのんびり過ごす休暇もアリです。近所に住むアレックスは、クリスマス・シーズンに1週間ほどの休暇をとっていましたが、一緒に暮らすパートナーと休暇のタイミングが合わず家で過ごしていました。

「ちょうど大きな仕事が終わった後だから、家でビールでも飲んでゆっくり過ごすよ」と、うれしそう。

愛犬を抱えながら、そう教えてくれたとき、彼からはなんだかとてもあたたかい感じがしました。

ブラジル、ゴイアス州に位置するシャパダ ドス ベアデイロス(Chapada Dos Veadeiros)国立公園

休み下手が過ごした空白の余暇時間

そんな彼らを他人事のように眺めていたのですが、私自身も、先日とあることがきっかけで初めて「休むこと」の意味を知りました。

年末にケガをしてしまい、1週間ほど身体を動かせず安静にしていたのですが、これが結果としてとてもよかったのです。

「人に頼むと悪いし、自分がやればお金もかからないから」

働き者で倹約家が美徳。そんな考えが無意識のうちにしみついていた、“休み下手”の私。少しでも動けていたら、洗濯や買い出しをして、休むことを知らないままだったと思います。

休暇で訪れた長崎の夜景

普段の行動を一切止めて、空白のスケジュールを過ごすうち、煩雑だった頭の中が空っぽになっていきました。徐々に、普段は目が届かなかったことに思いを巡らせるようになりました。周りの方に支えられていることに改めて感謝したり、今後の人生プランを立てたり。思いがけず充実した時間になりました。

この間、一切の家事を担ってくれた主人に私の変化を伝えると、サラッとこう言われました。

「あなたもやっと、“休暇”の意味がわかったみたいだね」

なんだか悔しい気もしますが(笑)、その通りだなと思います。

ブラジルの友人たちは休むことを知っています。ちゃんと休む。休むために人からサポートを得る。サポートに対価を払う。それらは決して怠惰でもワガママでもなく、当たり前に大切なこと。そんな考え方が、“休み上手”のヒケツのようです。

休暇で訪れた屋久島の風景

休暇で訪れた屋久島の風景

参考資料:エクスペディア・ジャパン社による「世界26カ国 有給休暇・国際調査比較2016」

(著者/ペルフェイトあき子)

広島県生まれ。フリーランスで「食と人をつなぐ」サポート業に携わる。早稲田大学卒業後、商社および海外進出支援団体に所属するかたわら、国内外の農場をめぐり、働き方・生き方に対する視野を拡げる。退職後、2016年9月よりブラジル在住。ブログ:SLEEPY CITY BUGS

(この記事はケノコトからの転載です)

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