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冬スイカに冬マンゴー、「季節逆転フルーツ」が売れる理由

気になる“味”と“値段”はどうなのか

冬スイカに冬マンゴー、「季節逆転フルーツ」が売れる理由

スイカやマンゴーといえば「夏のフルーツ」というのが常識。でも近年、寒い冬の時期にも、こうした夏のフルーツの売れ行きが伸び始めているのです。

ネット通販大手の楽天が11月28日に発表した「ヒット商品番付」でも、2018年の期待商品である「季節逆転アイテム」の一例として、「冬のマンゴー」を挙げています。

今回は「旬の季節でないオフシーズンになぜ栽培できるのか」「夏より割高になるのになぜ売れているのか」という疑問を、冬穫れスイカを販売している立場から解説します。


夏のフルーツを冬に収穫する理由

スイカは春から夏の終わり、梨には秋という具合に、元々フルーツにはそれぞれの旬があります。自然に任せておくと当然、本来の旬以外に果実をつけることはありません。しかし、「大好きなフルーツを旬以外にも食べたい」という人の欲求が品種改良や栽培技術向上につながり、今では多くのフルーツが旬以外の季節に収穫されるようになりました。

その代表例がイチゴです。イチゴが店頭に多く並ぶのは12月から2月にかけてであるため、冬が旬だと思われがちです。しかし、それは単にクリスマスケーキ需要に合わせて収穫されているだけで、本来の露地栽培イチゴ(屋外の畑で栽培したイチゴ)の旬は3~4月です。このように多くの人が考えている旬と、本来の旬がズレていることすらあります。

栽培・販売する側にとっても、シーズンオフに果物を提供するメリットがあります。それは「シーズンオフは流通量が少なく、売れやすい」ということです。下のグラフは、冬季(12月~翌年2月)の東京・大田市場のスイカの取扱数量の推移を示したものです。2012年度には165トンだったものが、2015年度には246トンと1.5倍になっていることがわかります。

味や値段は夏とどう違うのか

では、旬の時期ではない冬のフルーツの味や値段はどうなっているのでしょうか。

まず、味については生産者の腕前による部分がとても大きいです。同じフルーツでも出来栄えは生産者によって大きく異なりますが、シーズンオフとなると、その差がさらに顕著となります。

同様に、手間暇や経費も旬の季節以上にかかってきます。スイカは夏が露地栽培、秋冬がハウス栽培となります。スイカは寒暖の差が大きいほど、甘みが出て、味もおいしくなります。

寒い季節には、この寒暖差を人工的に作り出す必要があります。ガンガンと暖房を炊くことで、ハウス内は冬でも半袖で汗をかくくらい、夏さながらの環境を人工的に作り出しています。この環境構築は経験、知識、技術で大きな差が出るために、特にシーズンオフのフルーツの出来栄えは生産者によって大きな違いがあります。

値段に関しては、旬の季節に比べるとシーズンオフはどうしても値段が高くなります。夏には必要のないハウス栽培と細かい温度調節が必要になるので、暖房を使うほか、諸々の経費や手間暇がどうしてもかかってしまいます。その経費や人件費は商品原価に転嫁され、市場流通量が少ないという事情も加わり、値段は旬の季節に比べて2割ほど高くなります。

購入客の意外な活用法

ここで湧いてくる疑問は「取り扱い店舗も少なく、値段も割高な冬の時期に、なぜ夏のフルーツを購入したい人がいるのか」ということです。これを解消するキーワードが「非日常」と「サプライズ」です。

私が経営しているフルーツショップを例に取ると、シーズンオフのフルーツを購入される方は「とっておきの相手への贈答用」として利用されることがほとんどで、自分用に購入される方は多くありません。

1年の中でも適度な気温で過ごしやすい11月は結婚式の多い月の1つですが、毎年この時期にスイカの注文をいただきます。「結婚式のウェルカムボードに使いたいから」「ウェディングケーキ入刀とファーストバイトをスイカでやるから」というサプライズイベントのニーズが多いです。

また、ギフトでスイカを贈るという法人のお客さまも多いです。お歳暮にスイカというのは一般的にはあまりイメージのない贈り物に思われますが、「取引先から『冬のスイカなんて珍しい』と言われ、このお歳暮が後々まで話題になった」という喜びの声をよくいただきます。

お歳暮はその年の感謝の気持ちを伝えるとともに、取引先との良好な関係を構築するためのコミュニケーションツールでもあります。お決まりのお歳暮では印象に残らないと考え、あえて季節外れのフルーツを贈ることで相手の心を掴むプレゼントとしているようです。

冬穫れフルーツは今後も増えていくか

このようにニーズが高まってきているシーズンオフのフルーツ。真夏の南国フルーツというイメージの強いマンゴーを、冬の北海道で収穫している生産者もいます。

冬マンゴーを生み出した、北海道・帯広市にあるノラワークスジャパンの中川裕之代表取締役は、これまで夏の沖縄や宮崎でしか収穫できなかった国産マンゴーを、ハウスの中で夏と冬を逆転させて栽培しています。中川さんが育てているマンゴー「白銀の太陽」は1玉1万~5万円と値段にかなりの幅があります。

値段の違いは大きさと見た目の美しさなどその出来栄えで異なります。最も高い5万円のマンゴーは食味はもちろん、外観などあらゆる要素で見て快心の仕上がりといえるでしょう。中川さんは珍しい冬のマンゴーについて「地元の法人顧客はお歳暮として冬マンゴーを贈ったところ、『十勝のマンゴー』ということでサプライズを与えているようです」と話します。

冬獲れスイーツのすそ野は、スイカやマンゴー以外にも広がろうとしています。

私の知り合いの生産者は、秋で収穫が終わってしまうシャインマスカットを「今後はお歳暮ギフトに使ってもらえるよう、冬まで生産できるように頑張りたい」と話します。生産者としても先駆けて提供できれば商機をつかめるので、その取り組みは真剣そのものです。

世の中に数多ある商品・サービスは人の欲求に応える形で今存在しています。それはフルーツも例外ではなく、需要あるところにはいずれ必ず供給者が出てきます。コタツの上にスイカが置かれ、クリスマスにマンゴーをプレゼントできる今の社会は、少し前にそうあってほしいと願った人々の気持ちがかなった結果なのです。まだ見ぬたくさんの冬穫れフルーツが増えていくことを心待ちせずにはいられません。

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